落書きを求めて


 松本正道さんです。誰だって?知らん。

 わかるのは、故人ということ、そして画家さんということ。

 この唯一の情報はJR中央線高蔵寺駅南口に存在する、 「市民コミュニティーコーナー」こと喫煙室で得ました。

 一応、春日井市が高蔵寺駅からスペースを借りた上で 管理をしているみたいです。スペース中央に円型の ベンチと灰皿、その周りに市の広報ポスターやら、 春日井銘菓コンクール金賞受賞の菓子(初めて知ったぞそんな賞の存在) やら、サボテンやら自転車用防犯鍵などが無作為に陳列されています。 どうやらこのコミュニティーセンターにおいて、節度 というものは一欠片ですら見受けられません。もちっと 考えろよな、春日井市。

 もともと私もこの場所は、会社行くのがたっかるくて 「めんどくせぇなタバコでも吸うか電車一本遅らせよ」 と怠惰な感情の時のみに利用するだけでしたので、周りの 展示物など見えても目に入ってないも同然だったのですが。

 今日も例の如く「眠てぇ」などと思いつつベンチを降ろした 時、ふと「松本正道遺作展」の文字が目に飛び込んできました。

 う〜ん、あなどりがたし春日井市。いつのまにこんな事 やってたんだ。こんな場末に、しかも俺の気付かない間に 展示物入れ替えるとはおぬしただ者じゃねぇな、って者 じゃねぇよ者じゃ。

 で、結構大き目サイズの風景画とかが展示されていたのですが、 さらに見渡してみると風景画以上に目を引くものを発見して しまったんです。

 展示スペースの片脇に小さいテーブルが用意されており、 そこに乗っかってました、記名帳。「御覧いただきありがとう ございました。もしよろしければ御記名をお願いします。」 とのメッセージと共にぽんと置かれていました。 記名帳は盗難防止のためにテーブルにくくりつけられています。

 「お、これはこれは、ネタになりそうなものを」と 吸い付けられるように近づいてしまいました。花よりダンゴ、 風景画より記名帳。松本さん、すまん。

 「春日井市中央台*−*−* 鈴木俊子」。達筆だなぁ。 これ、絶対普段から筆書き慣れてるな。「春日井市藤山台*−* −* 藤田 光代・俊則」夫婦で見に来たんだな。やっぱ こうゆうのでも熱心に見に来る人いるんだな。 「春日井市高森台 水野ジャナサン」おぉ、ハーフか? 外人だよ外人。芸術に国境なしだな、これは。

 既にお気づきとは思いますが、住所氏名に関してはすべて藤原が 勝手にでっち上げた偽名なので、高蔵寺ニュータウンを 訪問された際に「ジャナサンさん知りません?」と尋ね歩くのは ご遠慮ください。いねぇよそんなヤツ。

 「電話ちょうだ〜い。050−***−××××」。 いるいる。こうゆうバカ。これよこれ。これを探してたのよ。 こんな基本的に無人が基本のようなコーナーにこうゆう の置いちゃう時点で自殺行為なんだよなぁ。ま、イタズラ されるの覚悟で記名帳置いていると思うんだけど。

 ぺらぺらめくってみると案の定、マジメな記帳に混じって こうゆう類の落書きが点在しています。

 「バーカ」「均くん愛してるっ」「燃やせこんなの」 「笠原犯す」などなど。

 念のためこれらの名前も藤原が勝手に捏造。春日井市の 笠原さん、ご安心を。こらっそこの均っ、調子のんなよ。

 う〜ん、相変わらずといえば相変わらずなんだけど、 私、すこし寂しいです。

 落書きしてしまう根性そのものが悲しいのではない。 せっかく格好の落書き場があるというのに、なんで そんなセンスの無い駄文しか書けないんじゃ! もっと気合入れて、読み手笑わせるモン書いてくれや!

 松本さん、重ね重ねすまん。

 それにしてもセンスのある落書きってのはほんと読んでて 面白い。いや、いけないんだけどね。そんでも許せてしまう 位面白いものは面白いんだから仕方がない。

 時には笑いすら越えて、感動すら覚えてしまうこともあります。 どっかの公園の公衆便所だったかな。入って周りを見てみると 細かい文字がびっしり。「なんだこれは?」と読んでみると、 バイセクシャルのカミングアウトは是か非か真剣にパネルディス カッションしてるんですよ。公衆便所で。 あれは感動したなぁ。読みふけってしまいましたよ、20分 公衆便所で。

 最近、こうゆう「熱い」落書きがどんどん減って寂しいです。 いや、マジで。公衆便所でもちんこだのまんこだの犯すだの、 面白くもなんともない単なる原語の羅列。はいはいわかったよ そんな単語だけで喜んでるお前らの知能は小学生で止まって んのかもちっと真剣に笑いの道目指せよ、と合ってるんだか 間違ってんだかよぉわからん愚痴をこぼしてる毎日なんです。

 結局この記名帳も低レベルな落書きだけか、あ〜あ、とがっかりしつつ 最後のページに目を通した時です。運命の出会いでした。 神は見放してなかったのです。

 久々に爆笑してしまいました。いやぁ、うかつだった。

「書いてるんじゃねぇよバーカ」

 これに対して次の人。

「うるせぇ!次書いたら殺すからな!」

 これに対してまた次の人。

「春日井市岩成台*−*−* 冨田寛子」

 わはははははは!冨田さん(仮名)最高!!真面目に書いてた としてもすげぇし、もしギャグで書いてたらカミソリ並の切れ味!

 原語書いてるお前ら、ちったぁこの冨田さんのセンス見習えよ。

 いやぁ、いいもん見せていただきました。

 ありがとうございます、松本さん。


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