新着別 分類別消え去る権限
いきなりちょい難しめの話で恐縮なのですが、権限委譲という 言葉をご存知でしょうか。別の言葉があるかも知れないけど、俺は こうやって聞かされてるので以後この言葉で統一。 会社組織の中で働くとなれば切っても切れない言葉ですな、これ。
基本的に権限、まぁ決定権なり拒否権なりを想像して頂ければ 間違いないんですが、これは組織の上の立場にいる人が 基本的に握っています。いわゆるトップダウンってやつで 上から許可を得て、初めて下が動くことが許されるシステム。
で、この権限を下の者(部下)に委ね、決定権を与えること。 これが権限委譲ってやつです。
基本的に、会社ってのは常に権限委譲が起こり続けないと 潰れます。権限委譲を行なわないこと=少数の人間が 重要な決定権をすべて握っていることになるからです。 その少数の人間だっていつまで働けるのか、いつまで生きてるのか、 まったく保証がないのが現実ですから。「権限の跡継ぎ」が いない状態で、権限保有してる人間が天国行っちゃったら。 目も当てられないのは誰にでも想像できるよね。
ただ、だからといってやみくもに「じゃ君明日からこれ決めてね」 ってどこぞのペーペーに言ったところで正しい判断ができる訳が無い。 だから基本的には権限の委譲と共にノウハウの委譲ってのが セットで行われます。まずノウハウの方を順番に 教えてあげて、それをマスターしたなという時点で権限委譲の 方も行なう。こうして会社全体でのレベルを落とすことなく、 質の高い権限委譲を行なうことができる訳です。
というのが、学校で教わった理想論。いや、なんでこんなこと 覚えてるかっていうと、この授業が面白かったんだな。こうゆう 理想論上げておいてからそれをブチ壊すというスタイルの講義だった もんで、学生時代珍しく真面目に聞いてたんです。
という訳で、当然ながら私もこんな理想論これっぽっちも 信用してません。という訳でただいまよりさっそく破壊活動の開始。 当時の記憶をどこまで覚えてるか、いざ勝負。
こうゆう言い方するといかにも会社がノウハウの知識循環と、 的確な状況判断の上に成り立ってるような錯覚覚えそうになるけど 騙されちゃいかんぜ。
というのもこの理想論、「権限を与える立場」の視点がすっぽりと 抜け落ちてるんだよね。
わかりやすくいきましょ。 例えばあなたが課長さんかなんかだったりして、優秀で将来を期待されてる A君に、自分の持ってるノウハウを授けることになっちゃったとします。
さて、貴方はA君に、すんなりとノウハウを教えることはできますか? ここで「はい。」と答えた貴方、本当にそういい切れる自信、ありますか?
というのも、あなたがリストラに怯えるしがない中間管理職だった場合。 A君にノウハウ伝授してしまうことで、「あなただけにできる仕事」がなくなります。 ノウハウを他人に与えてしまうで、自分の存在価値を打ち消してしまうんです。
逆にもっと野心持ってて「もっと出世するぞ!」と意気込んでた場合。 A君に教えてしまうことで、A君がスキルアップしてしまう。自分だけが 持ってたものをすんなり明け渡せます?「他人を蹴落とす」と 考えるならばノウハウ伝授するのって他人に力与えてしまうんじゃない?
2パターン出しました。どうゆうことか。結局自分の立場ってのが 何よりも大事なんです。自分の身を守るために、自分の持ってるノウハウ をそうやすやすと他人に手渡す訳がない。自分の中で独占することが 保身の術になってるんですな。
でも、これをみんながやっちゃうと会社の業務が回らなくなってしまう。 だからどうするか。周りのどうでもいい、しょーもないことからこつこつ と時間をかけて教えているフリをする。で、周りの雑用はそっちに任せる。 でも核心になる部分は最後の最後まで絶対に教えないんです。 教えるのは退職なり出世なりで、その業務に関わりを持たなくなる直前。 こうすることで自分が関わってる間は 「周りの雑用は全部他人に任せる。でも最後だけは自分が決定する」 という状況を作り上げていくんです。自分は何もせずとも、自分の存在価値は 残しておく、と。
つまり本当の意味での権限委譲なんか全く行われてないの。 「これは権限だよ」と言いつつ、実はてんで役に立たないノウハウ 教えることで、権限委譲やってるフリしてただけ。
こんなんで社内全体のレベル上がる訳がない。現に昔からの 大企業、組織ぶくぶく太ってガタガタになっちゃった。 結局上に聞かないと何も決まらない、何も進まない、この図式は こうゆうところから来てる訳。 これじゃ機動力も実行力も競争力もな〜んにも無くなっちゃうのも無理ないよ。
ようやく心ある企業の人間がこのことに気が付いて、いかに そうゆう輩から権限を取り上げるかで必死になりはじめたのが現状だと 思います。膿出し切るまでにはまだまだ時間かかるかもしれないね。
とまぁここまでが講義で習ったことを自分なりに解釈したところです。 この授業聞いてたのが確か4年位前。にも関わらず未だにこうやって ネタに使えるんだね。自分で書いてみてびっくり。
ただ、残念ながら、今はもうここからさらに発展し始めてるんだよね。 言ってしまえば1世代前の考え方になっちゃってるような気がする。
何がっていうともう「ノウハウの委譲」ってのが崩壊し始めてるんだ。 実際こうやってインターネットぷらぷらしてたら実感できるでしょ。 別に社内に固執しなくても、いっくらでも詳しい情報得られる。 普段の生活では頼れないようなエキスパートに救い求めることもできる。
社内を見てもそうなんだよね。なにかあってその度にいちいち担当 の答えチンタラ待ってたら、競争相手に負けちゃう。〆切過ぎちゃう。 スピードが求められ、 ノウハウはどんどん共有化される。下手すりゃノウハウの方が重要視 され、権限なんてもんに頼るヒマも余裕もないんだよね。そんなもん 待ってられっかってなっちゃう。
そう考えると、実は権限委譲なんて言葉とっくに過去の言葉になりつつ あるんです。すくなくとも心理面を考慮しない効率性から 考えればね。
問題は、今まで権限に頼ってた、言い換えれば守ってもらってた連中が、 今までの考え方捨ててスピードに乗りきれるかでしょう。
10年も20年もこの考え方でやってきたヤツがそうそう考え方 変われるとは思えないんだけどなぁ。前だったら「そんな信頼の置けない 情報に頼るな、俺に聞け」ってはったりもかませたかもしれないけど、 今はそっちの方が信頼できない世界になっちゃったからね。 権限を持ち得る根本が崩れ去っちゃた訳。
そんな中でいくら強がろうが、周りから負け犬の遠吠えと醒めて みられるのが関の山。だから忠告。 「権限持つことが身を守ること」なんて考え方はとっとと墓地に送り込んだ 方がいいと思うよ。その方が自分のためだもん。
これからは偉いだの偉くないだのそんなもんは関係なくなるよ。 仕事できるかできないか。それだけ。
書いてて胃痛くなってきたけどな。