他人の会議を傍観しよう


 いやぁ、こうゆうこともあるもんだな、と。

 その日は本来所属している会社の方のミーティングがあって、 いや、正確にはあると記憶してて、実際行ってみたら 社内知らない人ばっかり。「あっれ〜?俺ひょっとして 日付間違えた?」

 結局のところその通りでして、 私がミーティングの日付を間違えていたんです。 その日は別の部内ミーティングだったという オチでした。

 「あっちゃぁ、無駄足かぁ」と思ってたら、中から「せっかく 来たんだからうちのミーティング参加してよ。見てるだけでいいからさ。」 と声がかかり、なりゆきのままに参加させられてしまいました。

 はじめ5分は「しまった、速攻で帰ればよかったぁ」などと 思っていたのですが。

 いやぁ、迂闊でしたね。会議というものがこれほどまでに 面白いもんだとは思わなかった。結局ミーティングが終わるまでの 小一時間、のめり込むように聞いてしまいました。

 ここで「な〜に〜!てめぇ会議キライなんじゃなかったのか? この裏切り者が!」とお思いの方、落ち着いてください。それは 誤解です。私が「会議=時間のムダ」論者であることには 今も変わりありません(笑)。

 じゃあなにが面白かったんかというと、会議のプロセスというか、 その場に関わる人間がどうゆうスタンスで臨んで行くか、 この一部始終観察することができた、という点です。

 確かに今までも何度も何度も会議というものには 出席してるんですけど、 やっぱりそうゆう時って自分は当事者なんですよ。いかに 会議に参加してなくてもね。頭の片隅にその会議そのものを 眺めてる「第三者的な視点」もあるにはあるのですが、 やっぱり当事者だとそっちだけには集中できない。

 ところが今回、完全に第三者として会議眺められました からね。言ってしまえば「結論がどう出ようが知ったこっちゃねぇや」と。 だからこの人はどうゆうスタンスでこの意見を言ってるのだろうかとか、 あの人ずっと黙り込んでるけど何考えてるんだろとか、普段目に 入らないポイントがかなり把握できました。うん。おもろかった。

 てな訳で、記憶する限りでその会議をドキュメント化してみましょうか。 名付けて「勝手に議事録」。けけけ。

 参加人数は課内メンバー6人+傍観者の私。構成としてリーダーの 人が会議司会を兼任。残り5人の内2人が社内で仕事してる人。 残り3人+私が社外で派遣やってる人、という分布になっています。

 まずは社内としての業務連絡。来月の社内旅行の告知や 冬のボーナスに伴う面談の告知などが行われました。この辺は 皆知ってないと困るので、ちゃんと聞いてます。メモも取ってます。

 あと社内でついにメールが使用できるようになりました、 との告知。はじめ「へ〜」と思ってたらメールアドレスは社内で 一人だということ。がくっ。全社員で使い回さないだけまだ ましなんだろうけど、まだまだだねぇ。ま、いっか。 どうせ会社に頼るつもりはないんだから。

 などと考えていたら、いつの間にか個人の業務報告に話が 移ってました。要するに一人一人が今月何をやってたか、を 報告するんです。

 私、この業務報告ってのは基本的にはムダだと思ってます。 というのも、こうゆう場合、大抵は1人が1人(この場合リーダー)に 報告するため、という性格が強いんですよね。建前上は 1人がN人に向かって報告する、ということなんですけど、 それでもやはり全体から眺めてみると1人が話し、1人が それに答えて返してるだけ。 1人5分業務報告してたとして、6人で30分。うち25分は 口開けてほけ〜と待ってるだけになっちゃうんですな。

 案の定面子を眺めてみるとひまそ〜にスケジュール帳眺めてる人、 プリントアウトされてる書類にボールペンで意味不明のぐるぐるを書いてる人。 眠たいんだけど寝る訳にもいかず目がうつろになっちゃってる人。 (ボールペン持ってるとなぜかやっちゃうよね、ぐるぐる) 「あ〜はやく終わらないかなぁ」てな心境が滲み出ています。

 で、こうゆう場所で発表されるのって大抵は正常系、つまりうまく いった業務に対する報告がほとんどなんですよ。「これこれやりました。 順調です。」ってな感じでね。これって本来なら報告する必要すら 無いのよ。だって正常なんだもん。後で文面にまとめてFAXなり メールすればそれで十分通用する。こんな事でいちいち集まるんだったら 1時間早く帰宅してぐっすり睡眠取った方が絶対効率いいのに。

 本当だったらそれよりは異常系、つまり「どこがうまく行ってないか」を確認 することの方が700倍大事なことなんだよね。でも実際には 「内容よりも報告をする、という形を作ることが大事」と 腐りきった形式主義重んじる輩が多いから、会議自体が抑揚の 無い、ただの集会になっちゃう。

 前にウチの上司とこのこと話題にしたとき、上司の人もやはりこれを 懸案として認識してたんで、会社としてもいかに「形だけの会議を なくすか」に苦心してるみたい。ただ、会議は会社としてよりは 出席するメンバーの性格によって色づけされちゃいますからね。 その辺の兼ね合いが難しいみたい。

 とまぁそんな感じで会議が進行し、 心の中で「あ〜あ、やっぱりいつも通りの形式会議かぁ。これじゃ 日記のネタにもならねぇな」と会議記憶するのやめようとした矢先 でした。メンバーの1人が報告の中で漏らしたんです。ぼそっと。

 「スケジュールわかんないんですよ。線(〆切)がいくつもあって どれが本当なんだか・・・。」

 え、えぇぇぇえ?全員の視線が瞬間的にその人に向けられます。 なんでも前に知らせてもらって認識してたスケジュールが、実際に進行してる スケジュールとあまりに食い違っていて、しかも複数のスケジュールが 存在してるからどれを信用していいのやらとなってるらしい。

 そらシャレにならんだろ。すかさず司会の人が尾部細部をツッコんでます。 これ、明らかに情報伝達の怠りだねぇ。プログラマさんの場合、特に 最初に「スケジュールありき」な人種だし。

 なぜそうゆう事になったのか、気付かなかったのか、今後どのように フォローするか、この辺のアドバイスがリーダーの人から説明が行なわれてます。 周りの人も一転して目が真剣になってます。そりゃそうだわな。明日は 我が身だもん。そうだよなぁ、やっぱこうゆう異常系の話のほうが まだ価値あるぜ。それを「会議という形であるか」は別の議論としてね。

 この発言がきっかけになったのか、その後の個人報告で出るわ出るわ、 異常系報告のオンパレード。「始末書を書かせることは社員にとっては 士気を下げることでしかないのでは。」「やはり社内のメンバーと 社外派遣メンバー間での亀裂は存在しているのでは。」 「入社間もない新人をいきなり1人で派遣に出すのはあまりに危険。 リスクを考えると自殺行為としか思えない。」などなど。

 うっわ〜。これ全部独立してネタに使えるわ〜。

 後で聞いたのですが、この形でのミーティングでこれだけダークな話が 出てきたのって初めてなんだそうです。ちなみに藤原、ここまで ただの一言も発言してません。ツッコみたい箇所も山ほどあったけど、 結論が私の考えとそう違わなかった事と、議題よりは会議する人をウォッチング したいってのがありましたので。う〜ん、偶然の産物としてはかなり ラッキーだったのかな?この展開は。

 で、この間ずぅ〜とメンバー観察モード入ってたんですけど。 前半の30分がみんな死んだ魚の目してたのとは対照的に、後半30分の メンバーの饒舌なこと。「ってことは何か。今まではこうゆう事ですら 切り出せなかったんか」と判断せざるを得ませんでしたね。 そんだけ前回までの会議が形式化してたってことなんでしょう。 「言いたいことは今言わなきゃ〜」って雰囲気、少なからず 感じました。

 メンバーの1人が「もっと言いたい〜」と匂わせつつ、 理性的に話切り出してたのが印象に残りましたね。やっぱりこうゆう場所で 自分の言いたいこと切り出すのってメチャメチャ難しいんよ。 いくら周りがそうゆう空気を望んでいたとしても、人間として どうしても尻込みしてしまうのが正直なところだと思うもん。 だから普段からいかにこうゆう事でも言える空気を作っておくかってのが すごく大事なんだろうね。紋切り型の決まりきった会議やってる内は これは無理な相談だと思うな。

 そうゆう意味では今回の冒頭に切り出したメンバーの功績ってのは大きい と思うよ。

 あともういっこ印象に残った点としてラストの方、リーダーの人が 「会社の意見」としてではなく「個人の意見」として喋ってたということ。 「これは会社の意見とは違うかもしれないけど・・」と前置きしてたのが それを物語ってる。少なくともこの会議の中で会社のポジションとか言う 訳のわからん立場から1人の社員として場に引きずり出した、この ポイントは大きかったと思うし、意義もあったと思うよ。周りにしても リーダー本人にしてもね。

 やっぱまず意見持たなきゃ。それをぶつけて位置確認しなきゃ。 会社の言葉なぁなぁに垂れ流しても、それ惰性的に受け取っても、 どっちにしろ上昇はあり得ないぜ。

 てな訳で、洪水の如く言葉が投げ出されてミーティングは終了しました。 ミーティング始まる前のどことなくめんどくさそうな雰囲気がかき消されて、 メンバーがどことなくすっきりした顔つきになってたような気がするのは 私だけではなかったような気がします。

 個人的にもたった1時間でこれだけネタ拾えたら万々歳。あとはいかに 会議そのものを無くすかとか、そうゆう風に考えてくれれば言うこと無し、かな。


新着別 分類別
Index