やせなくちゃ


 試練の時がやってきました。私がここに足を踏み入れた瞬間から、 私という人間がたったひとつの数値によって判別されてしまいます。

 私に待っているのは栄光か。屈辱か。運命が決まる。

 どきどき。どきどき。

 左足、そして右足を台に載せる。静止。恐る恐る、目線を足元に 運んでいく。示された数字を直視する。現実と対峙する。

 「・・・・・・・72kg」

 あ〜また1kg太ってる〜。おやつも抜いてがまんしてるのに〜 およよよよ。

 すっかり太ってしまいました。人によっては72kgならいいじゃん とお思いの方もいるかもしれませんが、太り方がかなり微妙なんです。 まずいんです。

 まず社会人生活約2年で5kg太りました。ちなみにその前の学生生活 3年間で5kg太ってます。つまり5年間かけて計10kgの脂肪を体内に 蓄積している計算になってしまっています。

 で、この間、「やった〜体重減った〜」と喜んだ記憶がありません。 記憶のタンスを掘り返しても、出てくるのは ため息ばかり。じっくりじわじわと体脂肪を溜め込んでいるという 現実が身に降りかかります。ほんとは脂肪で10kg太ったんじゃなくて 現実の重みが10kgあるのでは。そんな現実逃避願望さえもが 脳裏をかすめます。んな訳ねぇって。

 原因はかなりはっきりしてます。めちゃめちゃ単純。間食と運動不足。 これだけ。仕事は座り仕事。カロリー消費量ほぼゼロ。 仕事から帰って来てご飯たらふく食った後は大抵深夜まで パソコンに向かいっぱなしの生活。夜更かしした挙句に夜食バクバク。

 そりゃ太るわな、ってこんだけ分かっててなぜ対策打たんのだ 藤原っ。政治やら仕事やらに噛み付いてるヒマあったらまずてめぇの その見苦しい腹のたるみなんとかせんかいっ。聞いてるのか藤原っ。

 いわんとってくれ〜。それだけはいわんとってくれ〜。 とりあえず古式に従い床をのたうちまわってみました。お見せできない のが残念です。じたばた。

 とは言え、いい加減このような堕落した生活に決別し、この忌々しい ぜい肉を体外へと放出しなければならない時が近づいてきたのも事実です。 2回も宣告されちゃうと、さすがにね。

 1回目は健康診断の精密検査でした。尿蛋白(−)の結果にホッと している私に、お医者さんはこうおっしゃいました。 「まぁ今回は異常なし、ですけど血圧高めですし、塩分の取り過ぎと 肥満には気を付けたほうがいいと思いますよ。」その時は蛋白 出なかった安堵感で明るく「は〜い」と答えてたのですが。

 さすがに2回目はそうはいきませんでした。お世話になってる田中医院様 のお言葉。「ちょっと血圧高いですね。あと体重も。ちょっとでも 心臓に対する負担は減らしたいですから、落ち着いたら対策練りましょうね。」 じくじく痛む胸を押さえながら「は〜い」と力無く返事するのが やっとでした。

 という訳で今、私の身体に課せられた使命は「痩せる」ことなんです。 なんですけど。

 実は今回の騒動で「当分の間運動は一切ダメ」というお達しを受けちゃってる んですよねぇ。めちゃめちゃ矛盾してるじゃねぇかおい。痩せるためには 運動しなきゃいけない。運動するには心臓直さなきゃいけない。 心臓負担少なくするためには痩せなきゃいけない。こうして今ここに 痩せる、心臓、運動三者のジャンケンの法則が成立いたしました。 いやぁ八方丸く収まりました。めでたしめでたし。何がだ。

 それよりも、どうやって痩せるか考えなきゃいけない段階でこうゆう こと考えて喜んでる私ってやっぱりダメなんですか。こんな事書きつつ 雑煮やらおせちやらプリンやらコーラやら飲んでる私ってやっぱり 銃殺刑なんですか。人間として生きる価値ありませんか。

 どうなんですか。しくしく。泣くなっ。


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