止まる勇気


 いつものように頭ボケ〜とさせたまま出席してたとある 進捗ミーティング。

 何回か話に出してるように、今また新しいプロジェクトが 立ち上がったばかりで、作業始めたばっかりという段階なんですけど。

 嵐は突然やってきました。ミーティングの一番最後に いっきなりこうゆう発表がされたんです。

 「突然で申し訳ないんですけど、ユーザさんの意向により 今年の4月から3ヶ月間、設計を含めてすべての開発を 一時的にストップします。」

 ・・・・・・へ?頭の中のもやもやが一気に晴れる私。

 詳しく話を聞くとこう。ユーザの社の異なる2部門で、機能が 重複するシステムを作ろうとしていたことが発覚し、このまま 稼動させた場合、両方とも破綻するのが 目に見えて明らかになったということ。そこで、両方のプロジェクトを 完全に停止し、その間を利用して、どちらを作るか、両方を作るなら どう折り合いをつけるか、その調査期間に当てるということ。 したがってわてら開発サイドはその結果が出るまでの間は、 開発を進めず、待機の形を取って欲しいとのこと。

 これ聞いた瞬間、心の中で密かに爆笑&バンザイ三唱 してたんですけど(笑)。いやぁ、こうゆうことってあるんだねぇ。

 まぁプロジェクトの重複に関しては明らかなユーザサイドの マネジメントミスだぁね。2つの部門の上位機関が、なんでもっと 早く気が付かなかったんだろうね。社全体にしてみれば プロジェクト停止するだけで億単位の損失なんだろうなぁ。 あ〜あ、知らねっと(笑)。

 バンザイ三唱ってのはいろんな意味持ちますね。まず真面目に言うと、 純粋にモノ作る立場からすれば「期間が長くなる」ことに対する デメリットなんてないんですよ。コーディングもテストも〆切に追われること なくじっくり腰落ち着けてできますしね。その分精度は絶対に上がります。 期間が長すぎると開発者のモチベーションが下がるのでは、という疑念も あるかもしれませんが、「余裕ある時間」の前ではこんなの贅沢な 悩み。残業も土日出勤もしなくていいんだから喜べっての。 残業できないことをデメリットと思っているヤツのことは知らん。無視。

 もともと今回のプロジェクト、「社内では初めて挑戦する手法」ってのが 結構盛り込まれてるんですよね。レスポンス速度とかその辺にも 不安ある。だから調査期間が増えるってのは純粋にありがたいんです。 だから停止期間終了後開発が再開されるという前提がある分、先行投資しても 決してその時間はムダにはならないしね。 もしぶっコケたとしても調査結果は今後の資料としてフィードバック していけばいいんです。

 という訳で、それほど今回の停止が影響与えるという訳ではありません。 給料出るし。・・・え?そんじゃ不真面目な喜びは何かって? やだなぁ、こうやってネタにできることに決まってるじゃないですか(笑)。

 んじゃこの判断、ユーザ側にとってはどうなんだろ?ってのを 考えてみたいんですけど。実は「止める」ってことに 関しては私はプラスの評価をしています。

 私は人からまた聞きした情報のみでしか判断できない立場 なんですけど、それでも今回の判断、その原因を考えれば 妥当なものだと思ってます。言い方を変えるなら、 英断、と言ってもいいのかもしれません。

 というのも。

 やっぱりなんだかんだ言いつつ日本の組織、公務員でも会社でも、 殴っても蹴っても前に進もうとしないクセに、一度前に進み出したら どこに走ろうが決して止まらない性質持ってるんですね。 始めからブレーキの無い暴走機関車。「決まったことだから」だけを盾に どこまででも突っ走りますから、線路で赤ん坊が寝ていようが、 抗議団体が線路の上でダイインやってようが、構わず轢き殺す。 んでさんざ被害撒き散らした挙句、スピードの出し過ぎで バラバラに分解しちゃってこっぱみじん、というお決まりのパターン。

 「ホントにこっちに走っていいのか?」と考える 自己確認能力が欠如しているためにこうゆう事起こってしまう 訳なんですけど。

 今回、素人目に見ても上の2つのプロジェクト、かなりドロドロ した関係になってたと思うんよ。自分達が提示してるのがコケたら、 それがそのまま自分達の評価にはねかえる。だから意地でも止めたくない。 第3コーナーのイン目指して300kmで並走する2台のF1マシンみたいな もんか。プロだったら危険察知した時点で安全な方向に回避するけど、 その辺素人だから(バカだから)アクセルゆるめることを知らない。 んで第3コーナーで衝突どっかーん、となっちゃう。

 どうでもいいけど今回比喩がえらい多いな。たとえるってことはそんだけ 文章に説得力無い証拠なんだけど。ま、ここまで使ってしまった以上 続けさせてもらおう。

 だからこの2つに対して「バカタレー!このまま行ったらぶつかるぞー! 止まらんかボケー!!」と罵倒できる立場の人間がいないといけない。

 暴走止めるための手段として2通り考えられて、今回のパターンでは どっちなのか、個人的にすっげぇ興味あるんですけどね。残念ながら そこまで問い正すことはできなかったので推測。

 ひとつは「止まれ〜!」の叫び声聞いて、慌ててドライバーが ブレーキ踏むパターン。すんでのところで危機回避ができた、てこと。

 もうひとつは叫んでもドライバーが聞く耳持たなかったので、 進行方向にトレーラー突っ込ませて実力阻止するパターン(笑)。 ドライバーの命なんかどうでもいいからとにかく車は止めると。

 過去の事例とか見てみると、圧倒的に後者のパターンの方が 多いような気がしない?青島都知事の都市博中止といい、環境庁の 干潟埋め立て阻止といい。これ以上被害与える位ならいっそ ここで自分もろとも自爆してしまえ的な。ちょっと違うか。

 私的には今回も後者な気がするんだけどなぁ。

 でも、どっちにしろ、今回こうやって押さえる側がいた、ってのは 喜ばなきゃいけないことなのかもしれませんね。

 もちろん、そもそも暴走しないようにするのが最大の防御法なんですけど、 現時点で100%これに期待するのは無理な話。だからストッパー的な 立場ってのは必ず必要だと思います。

 勇気いるよな、これ。下手すら自分もろとも無理心中になっちゃう 訳だし。でも恐れていちゃ、それこそ何にもできないんだからさ。

 という訳で、今回のプロジェクト阻止した方々。誉めてつかわす。

 このページで誉めるのって滅多にないことだよな、貴重だよ。


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