WWFを眺めながら


*今回プロレスにまったく興味ない方にとってはちょっと つらい前フリに なってるかもしんない。主題は別のところにあるのでなんとかついてきてください。

 最近ちょっとはまってるもの。アメリカンプロレスWWFの「RAW IS WAR.」。

 SkyPerfecTV!のSky Sports1で毎週放送してるんですけど、 これが見てたら意外と面白くて。時間が空いてる時とかに コーヒー片手に眺めてます。プロレス見るなんてもう何年 ぶりに見るかなぁ。下手すると10年単位の世界になるよ。 どちらかと言ったら今までプロレスは興味の対象外にあることが多かった ものですから、かえって新鮮に見られます。

 で、やっぱり思うのが「やっぱりあちらさんの世界なんだねぇ」 つーこと。普段から新日や全日見てる人とかは、違和感ありまくると 思うな。K1やPRIDE等見てたらなおさらね。なにせほぼ全試合の決着が 第三者の乱入で決まりますし、試合の展開や技も大味で単純だし。 この辺はいかにもアメリカつうやつかもしれん。

 そうゆう意味ではあちらさんの文化がいろんな所に垣間見れて むしろそっちの方で面白いです。番組冒頭に出る「この出演者は特別な 訓練を受けているからこうゆうことができます。絶対に マネをしないで下さい」の注意書き。Fuck、Bitchといった隠語に 必ず入るピー音。おなじみの中指立てポーズにはモザイク。 ハンマーや鉄パイプなど常人が食らったら死ぬと想定できる シーンは殴る瞬間だけ画面カット。

 うんうんうん、訴訟社会だねぇ。

 レスラーに関してもいろいろ思うところあるよ。どんなに客席で暴れても、 絶対に観客には指一本触れない。ヒールだろうとベビー(善玉のことを こう言うんですね、知らなかった)だろうと、試合会場を出た瞬間から 求められる社会的規律とファンサービス精神。やっぱこの人達って、 まずエンターテイナーなんだなと。人に見られてナンボ喜んでもらって ナンボの世界。

 さて、このままプロレス話続けていてもボロが出るだけなので (私はプロレスに関しては完全に素人)そろそろ本題行きますね。 やっぱりこのWWFの特徴かつアピールポイントというのは、 上で挙げたような、徹底したエンターテイメント路線なんです。極端な話 試合なんかよりも演出、お話を優先させますから。 だって試合してる時間よりマイク持って叫んでる時間の方が長いんだもん。

 またこの話の展開の方が早いんだ。1、2週見ないだけで、 すっかり勢力地図が変わっちゃっう。見るんなら気合入れてチェック しないと、すぐに追いつけなくなっちゃう位。

 それ位話の流れが早いので、見る側がそのテンポに追いつけるように しなきゃならない。

 で、これをサポートしているのが、徹底したケーブルテレビ戦略なんですな。 この辺はつい最近、日経ビジネスの記事にも載ってました。テレビ王国の アメリカでもそんだけ「ビジネスとして」注目を集めてるってことなんでしょう。

 ケーブルテレビ戦略の柱は3つ。

 ひとつめは自らが持ってる番組ソースは惜しみなくガンガン流すこと。 数万人規模のアリーナ中継から、どこぞの田舎の体育館の中継まで 区別なく放送してしまう。同様に試合以外の関連番組も流す。 これによって「もっと見たい」という顧客の欲求を満たします。

 ふたつめが繰り返し行う再放送。スカパーでもそうなんですけど、1試合に つきだいたい4〜5回は再放送が行われます。これはWWFの方針のようです。 おそらく回数流すことによって放映権料を優遇するなどの策が取られて いるんでしょうね。これをやることで視聴者は自分に都合のいい時間帯を 選択できます。「ちゃんと見たい」という不満の解消。

 で、最後がペイパービュー(PPV)方式による番組販売。 年に何回か行われる重要な試合に関しては1試合いくら、で番組を 販売する。普段から見てる人はやっぱり気になるからお金別途払って 番組見ます。ここでがっちり稼ぐ訳なんですな。

 うーん、考えたもんだなぁ。

 で、この戦略見てると、コンセプトの根本がむちゃくちゃ単純な 所にあるのに気付きませんか?

 そう、「見たい時に見たいだけ見られる」つーこと。じゃあ これを満たすためにはどうすればいいのかが、ちゃんと戦略として 練られているということだと思うのですが。

 よく考えたら、今まで行われていたマスコミ(テレビはもちろん ラジオも新聞も雑誌も)の方法論とは明らかに正反対のアプローチじゃ ありませんかね?

 元は業界用語だったのにすっかり世間に浸透した単語に「ひっぱる」 というのがありますよね。ひとつのネタをずーっと使い続けて 時間を引き延ばすこと。

 今のメディアって何から何まで「ひっぱり過ぎる」傾向に なっちゃってないかな、と思ってて。時事性と問わないバラエティーや ドキュメントなんか、特にこの傾向強くなってるんじゃないですかね。 ひとつのネタでだらだら持たせて、次のネタ惜しんで惜しんで小出しに して。

 これやられると見る側読む側としては「次はどうなるんだろう」という 期待感よりも「はよ続きやれよ」の不満感の方が先に出ちゃうんですよね。 端的に言えば見てて鬱陶しい。

 確かに、もはや見る側がどっしり構えて番組と 向き合うことができなくなっちゃってる、というのはあると思うんだ。 テレビ1時間すらゆったり見られない、もしくは見ててもじれったく思う ってことは、そんだけ受け手に余裕がないことの現われだと思うしね。 これは素直に私も感じる。自分がそうだしね。

 ただ、やはりこれと同時にどうしても勘ぐっちゃうんだよね。 こうやって水増し・出し惜しみしなきゃいけない程に、 提供できるソースの質も量も減少してるんじゃねぇか?、とね。

 「ひっぱって引き延ばして」タイプの作り込みが悪いとは言わないよ。 そうゆう番組見たい時だってある訳だしね。でも、こればっかりになるのが問題。 1週間朝昼晩連続でそうめん食ってらんねぇのと一緒。

 確かに日本のマスコミがクソだからって、すべてWWFと結びつけるのが すっげー乱暴な論理だってのは百も承知よ。でも、なんか足りないもんを 感じるんだよな。こやつら、演じる側も作る側も、必死になって エンターテイメント演じてるのを見てるとね。

 太く短く、ぎっしりと詰め込んだ番組・記事。こうゆうのもっと 見たいんですけどね。大丈夫大丈夫、やりゃできるって。WWFみたいに 体張りまくって天井から飛び降りて登場しろ なんてムチャなこと言わないから。

 オーエン・ハート氏のご冥福をお祈りしつつ。


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