非日常的反論メール


 あ、新しいメール来てる。どれどれ。

「はじめまして。某田某行(仮名)と申します。貴殿のホームページはいつも拝見させて頂いております。」

 はぁ、またこりゃご丁寧にどうも。

「貴殿の連載されているエッセイの数々は、共感することも多く、いつも参考にさせて頂いております。」

 いえいえ、それほどのものでは。所詮は暇人の戯言ですし。

「しかし実は今回、どうしても一言申し上げたく、メールさせて頂いた次第です。」

 はぁ。しかしまぁなぜ。

「決して、貴殿と争うつもりではございません。しかし中にはこうゆう考えもある、ということだけでも分かって頂きたいのです。」

 こうゆう考え、ねぇ。

「貴殿の『議論をしたくない』という主張も自分では理解しているつもりです。したがって、このメールに対してお返事をして頂く必要もありません。ただ、もしお返事頂ければ幸いでございます。」

 いや、それ実質「返事くれ」言ってるのと変わらんって。

「エッセイの「どれどれどれ」に関して貴殿はこれこれこれと申しておりましたが、実はあれあれあれでそれそれそれでありこちらこちらといったことも現に存在する訳です。その点にかんしてはあちらあちらと言った主張もあり・・・。」

 だあああ!やっぱこれかぁ!!うっとおしい!!

「どうこうがそうそうしてこうこうであり、あれそれがどうこうしたからあちらこちらとなる訳です・・・。」

 長いー。読んでて意味わかんねー。

「あれらがこうなってこうなるのならば分かるのですが、こちらの方もこうゆう事情がありましてどったらこうしたら・・・」

 もう訳わからんー。読み飛ばしたいー。

「つきましてはこうゆう考え方もあるということをご理解頂き、しかるべき処置をお願いしたいと考えております。」

 あ、やっと結論。結局修正要求してるじゃんかぁ。

「最後になりましたが今後益々の貴殿のご発展をお祈りしております。長文失礼致しました。」

 はいはい、失礼されました。

 ふぅ、やっと読み終わったよ。こうゆうメールって読むだけで疲れるよぉ。

 で、なんでこんなこと書いたかということなんですが、別に反論メール送るなとかそうゆう訳じゃないです。この点に関してはもう言いたいことは言い尽くしてますからそれを読めと。

 それよりも。面白いなぁと思うんですよ。反論メール眺めてると。反論内容がどうこうじゃなくって、メールの持つ雰囲気がね。

 これ、冷静になって考えてみると結構笑えるよ。という訳で今回これをネタにしてみようと思います。また前フリ長いよおい。

 まずこうゆうメールって総じて文章が長い。堅い。まわりくどい。あんまりしつこくすると嫌われちゃうんダゾ!ダゾはよせ俺。

 言葉ひとつ取ってみてもそう。「貴殿」なんて普通使うか?こんな言葉使われたらやっぱ身構えるよ、見た側が。こうゆうメールになると聞きなれない言葉がジャンジャカでてくるから、読んでみてもちーとも意味がわかんねぇ。すんませんな、バカなもんで。

(余談:全然関係ないんですけど、周りに一人「貴殿」を常用してる方がいます。だけどその方、文章の組み立てが実に見事で「貴殿」使っても違和感がないのよ。ある時には自然に、ある時にはそれをネタにって感じで。世の中にはべらぼうに文章うまい人いるもんだなぁと感心してしまいましたね。)

 要はまるっきり「手紙のマナー」になってるんですよ。ホントに拝啓で始まって時期の挨拶も入って敬具で締まる抗議メールって存在しますから(笑)。

 おそらくメール書く側にとっては自分なりの配慮を利かせてるんだと思いますよ。「相手に誤解されたくない、失礼になってはいけない」と文章に保険かけまくった結果、数珠つなぎ的に文章量がどんどん長くなる。結局、明確な理由がないままどんどん量だけが増えてしまうため、言ってること自体はどんどん訳わかんなくなっちゃう。

 あぁ、これを極限まで追求するとライフスペースの定説みたく、読んでて2分で頭痛するような文章になるんだ。納得納得。

 刺されるぞ俺。

 確かに「あぁ、このメール一本書くのに何時間と費やしてるんだろうなぁ」つうのはひしひしと感じるんですよ。普段慣れない文章書くために辞書とにらめっこしたのかもしれない。書き終わっても送信する前に何回も見直して校正したのかもしれない。涙ぐましい努力です。

 しかし如何せん。この配慮が抗議メール受け取る立場からすると逆に鬱陶しく感じちゃうんですな。相手に気使って使って使いまくった結果、それが逆効果になってしまい、相手を怒らせてしまう。ああ無常。

 結局、書き手にとっての考慮して欲しい点と、読み手にとって考慮して欲しい点がてんでかけ離れちゃってるんですよ。

 例えばこれは私の個人例ですけど。私は普段の連絡をできるだけメールですますように策略(笑)している上に、メーリングリストにもいくつか加入しているので、日に100通〜200通位のメールを読んでます。(これ決して多くないよ。世の中には300、500なんて人もざらにいる)

 これだけ来るとメールを読むだけでも結構な仕事量になってしまうんですね。現に読み切れない時も起こるのでそうゆう時は休日までキープしておいてからじっくり読む(特にMLとか)とかもやってます。必要分のメールを読み、必要なものにはお返事しなきゃならない。

 となると1通に対してそうそう何時間もかけてお相手できないんですよ。せいぜい1通当たり5分〜10分がいいところです。そうしないと他の方へのお返事が遅れることになってしまう。

 そうゆう状態の時に「お手紙のルール」に乗っ取った、世間的には「礼儀正しい」メールをもらってしまうとちょっと困る訳です。

 まず当然ながら読むのに時間がかかる。内容を把握するのにも時間がかかりますな。その上返事出すとなると、それなりにこっちも考えまとめなきゃいけない、整った文章にしなきゃいけない訳じゃないですか。さすがにメールで「難しい言い回しされてもわかんねぇんだよボケ1/4の文章量で書き直してこい!」なんて暴言吐く訳にもいきませんし。

 いっこいっこは細かいことなんですけど、これが積み重なっちゃうと「うざってえなぁ」という嫌悪感を抱くようになってしまい、反論の内容がどうこう言う以前の問題でレスポンスするのがおっくうになっちゃう訳なんです。

 もちろんこれはあくまで個人例ですから、逆のパターンも存在しますわね。書き手は手短にすまそうと「間違ってるよー」と数行のメールを送っただけなのに、読み手はそれを「なんて失礼な輩だ」と捉える場合だってある訳で。

 結局同じ内容の抗議メールでも、それを受け取る人の性格とかによっていいようにも悪いようにも取られちゃうんですな。その違いに気がつかないから、反論から反論への無意味なケンカが生まれちゃうんです。

 うーん、やっぱ不毛だよなぁ。

 わすみたいに「一切の議論はしません」と宣言してるならともかく、大抵(というかほとんど)は本来の命題とはかけ離れたところでも議論、というかケンカしなきゃいけない訳でしょ。どうしても「時間のムダ」的な考えをしちゃうんですよね、私としては。

 うーん。だったらさ。決めちゃわない?抗議のルールとかしちゃってさ。

 いっこフォームかなんか作っちゃって、文字数とかも限定させちゃってさ。ついでだから火種になりそうな単語とかはNGワードにしちゃって受け付けないようにする。誰が何回NGワード使うかあらかじめカウントしておいて、100回に達したらお礼にメールボムプレゼントとか。

 ヤだよそんなフォーム。やっぱあかんかルール化は。

 どんなにマナーだのモラルだの己の都合だの叫んだところで、文句出すのも受けるのも人間だもんねぇ。

 それ忘れないようにしなきゃーね。お互ひ。


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