カモネギ車購入交渉


 消費者は吟味に吟味を重ね、自らの納得行くモノのみを購入する。供給者は常に消費者の動向し注視し、常に消費者に満足してもらえる製品を提供していく。

 これを維持していくためにも我々消費者は、常に製品評価に目を光らせ、いいものには賛美を、悪いものには罵倒を繰り返していかなけれなならない。この地道な作業の繰り返しが、結果として経済のサイクルをよりボトムアップしていくのである。

 である。はずなのである。

 なんだけど。

 とある晴れた土曜日のお昼。私はただただ惰眠を繰り返しておりました。あー、おフトンってあったかいのねー。ぬくぬくー。

 プルルルル。プルルルル。おや、電話。がちゃ。もしもしー。

 「あ、こんにちはー。トヨタカローラ愛知のN里と申しますー。」

 あーこんちわー。お世話なってまーす。

 「例の件、1台条件に合うのが見つかったんですよ。もしお時間ありましたら見に行きませんか?」

 あーそっすねぇ。今日ヒマだし、んじゃ今から行きまーす。

 「お待ちしておりますー。」

 がちゃ。んじゃしゃーない。起きるか。

 身支度している間に説明をば。今載ってる車(平成元年産コロナ:愛称「ぼろころな」)が今度の3月に車検を迎えるのですが。もうあっちこっちガタが来てまして、今度車検通すとなると部品交換とかで結構な金額いっちゃうらしいんですな。少なくみて15万、もしくはそれ以上らしい。仮に車検通したとしてもまた次の2年間、無事に動き続けている保証もどうやらない、と。

 んじゃまぁもうちょっと足して新しい中古車に買い換えましょうという話になりまして。先のN里さんにお願いしてたんですよ。

 条件は至ってシンプル。

「予算30万〜40万。AT車。車種問わず。色問わず。その他一切の条件全部問わず。」

 だって〜。わかんないんだもん〜。車なんて壊れなくて動けばそれでいいじゃんか〜。ええ。ええ。わかってますよ。イチ消費者たるもの、常に商品の出来具合には細心の注意をはらわなきゃいけないんでしょ?ええ、すいませんでしたね。ぜーんぶ他人まかせにしてますよ。

 だって、自分で選ぶより他人に選んでもらった方が確実なんだもん。それがたとえ「売る側の人間」であっても。いいんだいいいんだい!時にはネギしょったカモになったっていいんだい!

 などと幼児退行を起こしている間にも本人は身支度を終え、ぼろころなを走らせ、お店に到着致しました。

 「こんにちわ〜」あ、N里さん、どもども。「んじゃさっそく行きましょうか。」よろしく〜。

 N里さんに薦められるまま車の中へ。へー。これN里さんの個人カーですかぁ。いい車乗ってますねぇ。わかんないけどとりあえず誉めておく。

「いやいや、それほどでも。」

 このN里さん、去年お店に入ったばかりの新人さんなんです。その割にこの車ってことは、やっぱローン抱えてるんだろうなぁ。つーことはしばらくはこの世界で踏ん張ってみるってことなんだろうなぁ。ちなみに車内ではDRAGON ASH「Viva La Revolution」のCDがかかってました。よし、センス合格。

 世間話をすること5分。トヨタ系列の中古車センターに到着。

 「これなんですけど。」

 あーこれですか。資料も手渡される。平成5年産のホンダシビック。見積もり価格40万5千円。ちょっと予算越えてるのね。

 んーと。何聞けばいいんだろ?わからん。えーと。これ、走ります?

 「そりゃ大丈夫ですよ。全部点検もして部品も変えて納品させて頂きますのでご安心ください。」

 いつの間にか横にいた中古車担当のY田さんが即答しました。あ、さいですか。つーかひょっとしたらすごく馬鹿な質問をしたのかもしれんな。他に質問・・・やっぱ思い付かん。

 「エンジンルーム見てみます?」

 あ、N里さんの助け船だ。あまりに質問しないので不安に感じたのでしょうか。言われるままにボンネットを開けてもらいます。・・・・・・へぇぇ。・・・・・・全然わかんねぇや。たはは。説明を聞いてとりあえず肯いておく。意味はとりあえず考えない。

 手応えがあるのかないのか不安そうにボンネットを閉めるY田さん。そりゃそうだろうなぁ。ずっとうんうん言ってるだけだし。すまんのぉ、わすが極端な車オンチで。普段避けてる話題だけに、こうゆう時になるとやっぱ困るもんなんだね。

 えっとあとは・・・。うーん。何を聞けばいいんだ?もう何も思い付かないぞ。えーとえーと。

 「試乗されてみます?」

 あ、それがあったか。試乗されてみます。運転席に乗り込んで店の周りを一周してみる。ぶろろろろ。

 「乗り心地とかどうです?」

 あー大丈夫だと思います・・・。他に何と言えばいいんだろう。ここはやはり「風に乗るような乗り心地」とか言うべきなのだろうか。それとも「初速は地を滑るが如く、加速は空を駆けるが如く」等と表現力を駆使せねばならぬのか。これのどこが表現力やねん、とひとりボケツッコミを展開してる間に試乗終了。ありゃりゃりゃ。

 「とまぁこんな感じなんですが、如何でしょうか?」

 あーさいですねぇ。他探すのもめんどくさいし。あ、まけてくれます?

 「そうですねぇ、それじゃ・・・諸費用全込みで39万にさせて頂きますよ。」

 あっさり下がったな。まぁ既定路線なんだろうけど。まぁいいや予算内だし。けってい〜。これ買いまーす。

 「ありがとうございます〜。」

 という訳で、お電話受けてからわずか1時間で次の車の購入が決定いたしました。次の車決めるために毎週ディーラー通ってカタログ集めてる友人が聞いたら卒倒するだろうな。

 品質の吟味も、価格の吟味も、何ひとつ考えず。わっはっは、まさにカモネギ鍋。

 んでもねぇ、今回一連のやり方、私の中では正解だと思ってるんよ。最近は中古車でもインターネットでもう買えるじゃないですか。やろうと思えば自分で考えて自分でいっくらでも吟味できるようになった訳ですし。ですのでちょっと前に覗いてはみたんですよ。

 でもね、もう全然歯が立たなかった。意味不明な単語の羅列。3分で投げ出したのが正直なところです。パソコン初めて買う人の感覚ってこんな感じなんだろうなぁ、とつくづく感じましたからね。

 ですので今回は(も)完全に頼らせて頂きましたわ。ラクだし。多少割高だろうが技術料扱い。持ってってくだしゃい、って感じです。

 まぁ今後5年先、10年先を考えた場合、私のような「まかせっきり」が通用するとは思ってませんけどね。今後は流通側も時代にそって形を買えざるを得ないと思いますし。そうでなくても選択肢は広がっていくと思うしね。まぁそん時までにはせめてエンジンルームの中に何が入ってるか位は覚えたいと思いまーす。

 そんなことを考えながらぼんやりしていると、帰り際N里さんがこんなことをおっしゃいました。

「いやぁね、正直な話ですけど、始め話聞いた時は『これで40万って大丈夫か?』と不安だったんですよ。ですのでもしヤバそうだったら躊躇なく止めるつもりでした。でも実物見て『あ、これなら大丈夫だ』と安心しましたよ。もし何かあってもうちでばっちりやらせて頂きますのでご安心ください。」

 おいおいおい。・・・・・・まぁいーや。まかせまーす。


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