彼女。


「ねぇ、ちょっと聞いていい?」
「ん?何を?」
「ここんところの文章読んでるとさぁ。」
「ん?」
「増えてない?彼女いないとか結婚しないとかの記述。」
「そうかねぇ。意識してないけど。」
「いや、絶対増えてるって。以前はこの手の話するだけでもイヤがったじゃん。」
「まぁ日々成長してる証じゃないの?やっぱり雑文書きの嗜みとして下ネタのひとつやふた」
「そうゆう話じゃなくて」
「はい」
「やっぱなんだかんだで意識してんじゃないの?」
「うーん。」
「やっぱ世間一般的には結婚しないとかのセリフは強情にしか聞こえないって。」
「やっぱ無いと言えば嘘になるでしょ。」
「・・・・・・意外とあっさり認めたね。屁理屈こねまわすもんだと思ってたけど。」
「まぁねぇ。こんな所でカッコつけたって意味ないし。」
「ねぇねぇねぇ、じゃあさ。」
「何よ、いきなり目を爛々と輝かせて」
「狙ってる人とかいるの?職場とか。」
「職場ねぇ。女性の方もいるけど・・・ロクに話もしてないね。基本的に 仕事中は一人象牙の塔こもりっぱなしだし」
「・・・じゃあ遊び友達とかは?」
「考えてみれば男ばっかりだね、私の遊び友達。」
「・・・。あ、じゃあさ。水泳。ジム行ってるんでしょ?水着姿の 女の子といきなり深い仲・・・きゃああ」
「何を一人で盛り上がってるか。無いって全然。大体もう水泳行き出して1年 近く経つけどその間に誰かと喋った記憶って無いよ。こっそり行く。黙々と泳ぐ。そそくさと帰る。この繰り返し。」
「・・・あのね。」
「何よ。」
「努力って言葉知ってる?」
「何を努力するの?」
「ったくこれだから。大体合コンとかの機会だってお酒飲めないだの めんどくさいだの今日は風が吹いてないだの、理由をつけては断ってるでしょ!」
「最後のは嘘だろ。」
「そうやってごまかさないの!大体自分からきっかけも探そうとせずに 見つかる訳ないでしょ!?」
「しかし、実際に探してないのが現実だしなぁ」
「・・・・・・その根拠の無い落ち着きぶりはどこから来るの?」
「うーん。性格なんじゃない?できたらできたでラッキーとか思う だろうし、ダメならダメでまぁいいかと思うだろうし。緊迫感は確かに無いね」
「現実味持ってないでしょ?数年後に結婚してる自分とか」
「確実に無い。想像すらできない。」
「今はまだいいのよ。理由付けだってあれやこれやできるし。でも5年後 10年後に未だ一人身ってのも考えるとつらくない?」
「・・・・・・そっかなぁ?それはそれでありなんじゃないの?」
「ふーん。どうやら本心みたいねその辺は」
「こんな所で嘘付く価値観も持ちあわせてないしねぇ」
「じゃあ。今現時点で彼女いないってことに対してはどうなのよ。寂しいとかそうゆう感情はないの?」
「うーん・・・・・・・ねぇ。」
「そこで即答しない時点で底は見えたね。」
「まぁねぇ。そらこちとらだって男だし。一人寝が寂しい時だってあらぁな。」
「でも実際には探してもいない訳だし。どゆこと?」
「うーん、あれやこれや理由付けはできるんだろうけど。やっぱ『めんどくさい』に帰結しちゃってるね。」
「やっぱりそこに行っちゃうんだ。」
「行っちゃうんだろうねぇ。そう言って自分で自分ごまかしてるんじゃないの?それを更に隠したいが故にめんどくさいって言っちゃうんだろうなぁ。」
「じゃあそれ改めなきゃいけないんじゃないの?」
「まぁ本筋から行けばそうなるだろうねぇ。でも今のところ改める気はない。」
「あらま。」
「ただでさえ人間のクズ自称してる位だからねぇ。ちっとばかし身奇麗にしてうわべだけで彼女作ったってすぐに露呈するのがオチでしょ。下手な鉄砲にも限度はある訳で。だったら今は今でやっておきたいことも腐るほどあるし。まぁ大人しく巡り合わせを待ちますよ。無いなら無いで悔いはなし。」
「・・・・・・ふーん。ひょっとしてさ。」
「何よ。」
「恋愛に関しては案外運命論者?」
「・・・・・・かもなぁ・・・・・・まぁこんだけ喋ればあとは想像つくでしょ。もうおまかせおまかせ。どうにでも取って。」
「ふーん。あとさぁ。」
「まだあるの?」
「今回こうやって長話してたけどさぁ。」
「うん。」
「導入部は実話だけど中盤以降はすべて一人で二人分の会話捏造しました、ってこと暴露してオチにしてやろうなんて浅はかなこと、まさか考えてないよね?」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・図星?」
「・・・・・・・・うん。」
「まだまだ前途は暗いね。」
「すんません。」


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