形だけの議事録帳


 しかしまぁ、この手の話題となるとまぁなんでこうもネタに困らないんでしょうか。本質はすべて一緒のはずなんですけど、あの手この手で押し寄せるっつーか、ネタの湧き出る泉っつーか。

 暴言書きにとってはカモネギなんですけどね(笑)。ネタのためなら受けてやろうではないか己の不幸。

 いつものようにめんどくさがりながら自社のミーティングに出席したときのこと。今回、私が議事録を取る当番だったんですわな。どーでもいーよーなお話をくっちゃべりながら、議事録をしこしこと書き上げてたんです。

 おつかれさまーとミーティングが終わりました。「んじゃこれ議事録でーす」とリーダーさんに紙を渡しました。

 リーダーさん、紙を一瞥するや否や。

「だめ。こんなのは議事録と言わない。やり直し」

 と突っ返してきました。

「議事録ってのはメモ書きじゃだめなの。ちゃんと文章にして、形式を組み立てて作らなきゃだめでしょう?」

 このミーティング中のどこをどう切っても議事録に残さなきゃならんような内容なんざひとつも存在してねぇじゃねぇかと思ったのはとりあえず心の引き出しにしまっておきまして、渋々と書き直しはじめました。

 あーめんどくせーよなー。大体今時手でしこしこと書くなんて悠長なことやってらねんえぇよなぁ。キーボードだったら10倍は早くラクに書けるぜ。あー、もう30字書いたら手が疲れてきたよー。早く家に帰ってご飯食べたいなー。また返事書いてないメール溜まってるしなー。

 頭の中では全く別のことを考えながら書き書き書き書き。はい、できました。これで文句ないでしょ?と提出。

 書き直した議事録を見てリーダーさん、またも顔をしかめます。

 「だめ。」

 えー!なんでよー!ちゃんと言われた通りにしたよー!?

 「字汚過ぎ。あと誤字多過ぎ。」

 ・・・・・・。ぷちん。

 あ、やべ。今血管切れた。

 あーもういいですわ。今書いてもこれ以上のモノなんざ作れませんから。後日プレーンテキストに落としてメールで送ります。よろしいっすね?以前は『議事録はワープロ不可、手書きのみ』なんてふざけた事言ってましたけど、こんなんじゃ100回やってもラチあかねぇ!メールで送ります。よろしいっすね?

「うーん、しょうがない。よろしくね。」

 はいはいはい。んじゃ失礼しますね。んではさいなら。

 あーもうっ!だったらはじめからキーボード使わせてくれよ!!意味もなく2枚も手書き議事録書かせてしかもそれ無駄にして!写経やってんじゃねーんだからよう!!とキレちゃってた訳なんですな。

 ちなみにフォローを入れておきますが、リーダーさんのこの指摘は非常に的を射ております(笑)。議事録はあくまで後で他人が見たときにどのようなやりとりをしたかを記すものですから、それが簡潔にわかるように書くべきなのは当然のお話。

 あと私の字の汚さ及び誤字の多さに関してはもはや折り紙つきです。ここ数年、ペンを持って字を書くなんて作業は年に数回しか行ってませんので、ただでさえ悪筆だったのがさらに磨きかかってます。磨くなよそんなもん。すっかりIMEの辞書に頼り切った文章書きに慣れてしまったために、漢字も小学生並みに忘れてます。何せ次の日プレーンテキストに落とすために自分で書いた議事録を読み返してみたのですが、マジで自分の字が読めませんでした。

 そりゃあ突っ返されて当たり前ですなぁ。わっはっはっは。笑うな。

 という訳で、結局は私が一人でキレていただけのお話なんですが。どーにも腑に落ちない、もやもやとした感情も残ってましてね。「なーんでだろなー」と考え込んでいたのですが。

 プレーンテキストに落として、それをしげしげと眺めてたらわかりましたわ。不快感の理由。

 んじゃちょっとここで、本来ならば社外秘扱いになるこの議事録なんですが、今回は特別にかすめとってしまいませう。カット&ペーストするだけなのですが。ちょっとこれご覧ください。なお、さすがに社名や氏名、業務内容の一部に関しては実名と一致しないアルファベットに置き換えさせてもらいました。


定例会議議事録

作成者名 藤原
作成日 2000年6月XX日

開催年月日 2000年6月XX日

出席者 A、B、C、D、E(敬称略、順不同)

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議題(内容)
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各人の個別報告:

A:
S向けXXXシステムの開発
6月リリース分開発中、スケジュール問題なし。
ただし秋以降のスケジュールがまだ未定の部分があり不安。

B:
T社→U社の後方システム要件定義。
7月〜9月に開発、その後統合テストを経て結合

C:
V社向けWindowsNTの機能カスタマイズ
5月末に仕様書をUP、その後開発へ。スケジュール問題なし。
NTのイベント取得にて情報不足の面もあり。

D:
W向け******品関数作成
現在開発中、スケジュール問題なし

E:
Z社向けXXXXXXシステム開発
5月末にリリース、順調に稼動できる見込み。
現在、次期リリース分の着手範囲調査中。

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連絡事項
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懸案事項
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特になし。


 こんな感じ〜。

 極端な話、社外秘の文章とはいえ、ここでこうやって公開した所で、誰かの役に立つとはとても思えない、極めて情報量の少ない議事録ですわね。こんなもん。

 で、更に言いますが、この議事録、作者の手によって水増ししてます。捏造といっても差し支えないかもしれん。この程度のでっち上げなんぞ暴言書きの手にかかればってそうじゃなくって。要は普通ならこんなこと書かんだろ、というモノでも(スケジュールとかなんか特にそうだわね)、隙間を埋めるだけのために文章ねじ込んでるんですよ。

 現実にこんな議事録が、会社の議事録バインダーに永久保存される訳なんですな。果たしてこの程度のものが社内文章として存在しておく必要性があるのか?これなんですな、根本でもやもやしてた不快感ってのは。

 順番に考えていきましょか?まずわてら通常のメンバー。今後将来に渡って、これらの議事録を必要とする機会って果たしてあるのでしょうか?

 無い。永久永劫、神に誓って無い(笑)。

 次。今回参加していないメンバーや他部署のメンバーがこれを見直す可能性。これもほぼ皆無だと思いますわ。あるとすればせいぜい過去に誰か自分と似たようなことやってないかを探す位だと思うんですけど。

 人に聞いた方が早いわね、んなもん。

 となるともうこれしかない。この議事録はリーダーさんのため?

 でも、これも違うと思うんだな。というのも、所属メンバーの今やってること、所属先、スケジュール、これらの情報はわざわざミーティングで報告を受けるまでもなく、個別にちゃんと保持・メンテナンスしてるはずです。

 んなもん悠長にどこの議事録かなぁ・・・なんてめくってたら仕事やってられっかい。自分で管理するのがイチバン効率的に決まってる。ましてやウチにはグループウェアとかの類は導入されていませんしね。

 とここまで考えちゃうと。この議事録の存在価値ってのが宙に浮いてしまうんですよね。一体誰の為に私はこんな作業やってるの?そもそもこんな議事録しか取れないミーティングそのものに存在価値ってあるの?と芋づる式に不満・不信がぼこぼこ掘り出せちゃうんですよねぇ。

 結局さ。「なぜそれが必要か」という理由付けを何も考えてないからこうなっちゃうんだと思いますよ。特にうちの会社だけの問題じゃないよな、こうゆうのって。

 毎月毎週集まってミーティングすること自体に意義がある。議事録取ること自体に意義がある。そう信じて疑わないから、「まずミーティングありき」「まず書類ありき」の世界になっちゃう。一度この固定概念に囚われちゃったら。

 形だけが残って魂が死に絶えるのは目に見えてるんじゃないですかね?それでこの10年間、日本の企業組織が負けに負けまくってるんじゃなかったんですかねぇ・・・?

 どこでもそうだと思うんですけど、取った議事録とかはファイリングされ、誰でも見られるようにポンと置いてあります。で、書き直し命じられた時に「どんな感じなんだ」とぺらぺらとそれをめくってみたんですよ。

 形式的にはともかく、内容的に見るべきものは何もなかったですね。ええ、見事なまでにただの紙束。たとえこの事務所が火事になったとしても、このファイルは速効で見捨てられる程度のもんだと思います。

 でも。作ってる人達はこれで満足しちゃってるんじゃないです?何ヶ月・何回もミーティングを重ねて出来上がった議事録という名の「ゴミの山」を眺めて、満足感を覚えちゃってません?

 それってすっごく空しくありません?あかんよ、それじゃあ。

 まぁそんな訳でさんざバカにさせて頂きましたが。まぁこれからも指を加えて黙って見ててもいいんですよね。それはそれでネタには困らんし。でもさ。なんか壊したくならない?こうゆうの見てると無性に。ムラムラくるっつーか。

 という訳で今頭の中で、どーやってこれらをデストロイしてやろーか、いろいろと妄想膨らませておりますです。幸いにもここまで散々猫被りまくった甲斐もありまして、そこそこながらも発言力も持ち合わせ始めております。あーやってぇ、次にこーゆうことやってぇ。時々一人ニヤけながら頭働かせてますです。端から見たらただの危ない人かもしれませんが。

 まぁいざとなれば自分さえよければ後はどーでもいい人間ですから。ネタのためだったら何だってしますよん。

 犯罪にならない程度に。


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