うぎゃぎゃぎゃぎゃぁ
連休を利用して、久々に四国旅行なんてもんに行ってきました。
とはいえ基本的には高齢になる祖父・祖母の世話役が主ということで差し当たってここで取り留めて書くような事はなかったんですがね。ムキになってこんぴらさまの階段40分で往復したら次の日の朝足腰ボロボロになってて動けなかったとか。あれほど申し込みの際に「部屋食にしろ」つって頼んだのに泊まったホテルのいずれもが嫌がらせの如く個室の宴会場を手配してたとか。「早くしろ!」「次行け!」「何やってんだ!」と次々に客を罵倒する松山城ロープウェイ駐車場の交通整理人(推定50歳)は客商売する資格ゼロですのでとっとと城壁のてっぺんからダイビングして死んで下さいとか。そんなこたぁわざわざ書くまでもないんですよ。
いっぱいあるじゃねぇか書く事。
いや、それよりもあーた。今回初めて経験したんですよ。一夏の経験。あ、もう秋か。一秋の経験・・・なんかカッコ悪いなこれ。
2日目の夜のことでした。前日の階段昇降運動のダメージと、その日一日運転してた疲労とが重なって、夜の9時位には既にくたくたのへろへろ、ボロ雑巾同然の廃人と化しておりました。
その体たらくを見かねたのか、周りからこんな提案が上がりまして。
「あんた、マッサージ受けなさい。お金は出すから。」
え〜。マッサージ〜?わざわざお金出してまでしなくても、お風呂の横にあるじゃん、自動マッサージ機。あれで十分だから。
「いや、違うから。絶対に違うから。」
う〜ん、でもなぁ。なんか抵抗あるなぁ。ほら、どうも温泉でマッサージって余りにもコテコテのスタイルじゃん。なんかなぁ・・・あ、こら。フロントに電話すんな。あ、こら、勝手に頼むな。こらこら、商談成立させんな人の話聞いてんのかこらっ。
「んじゃ頼んだから。今のうちにお風呂入ってきなさい。」
なんじゃそりゃ。うーん、まぁ仕方ないかぁ。騙されたと思って一度やってみますかねぇ。ネタになりそうだし。それがホンネか俺。
つー訳でお風呂へ。なんでも風呂上がりが一番マッサージには効率的とのことだそーで。そーですかぁざっぱーん。あーいい湯だぁ腰と肩と膝に熱が伝わってくのがわかるー。やっぱ温泉はえぇねぇ気持ちええー。こらそこ、てめぇの反応十分にオヤジじゃねぇかとツッコむでない。んな感じで2、30分程湯に浸かりまして、てこてこと浴衣姿で部屋に帰ってきますと、そこには見慣れない人影が。
あ、もう来てましたか。マッサージ師さんが祖父相手に既に始めておりました。
「あ、帰ってきたな。んじゃ次あんたね。」「もうすぐですから。しばらく待っとってくださいねー。」
白衣を身にまとったマッサージ師さんも言葉を返してきます。見たところおばちゃんと呼ぶにはちと年齢が、でもおばあちゃんと呼ぶにはまだ早い・・・50歳位かな。ちょっと小太り目の方がぐいぐい、と祖父の腰を揉んでいます。そして部屋の片隅には白い杖。ふむ。
自分の順番を待ちながら話してたのですが、視力を無くしてからマッサージの勉強始めて資格取って、かれこれもう25年これ一筋でやってるとのことだそうで。ほえ〜大ベテランじゃないですか。これじゃあ単におばちゃん呼ばわりする訳にも行きませんな。んじゃあここは先生と呼ばせて頂くことに致しましょう。
あ、順番ですか。どんな感じになるのかなぁ。あーいもう覚悟は決めましたー。好きにしてください先生よろしゅー。
「それじゃあ始めます・・・うわっはっは、立派なお体でぇ」
いきなり先制パンチ。確かにねぇ、173cmの78kg(この日の体重。リバウンドしたんよ(泣))だとそうなるんでしょーねー。
「では肩の方から・・・・」
ぐいっ。ぐいっ。うを、これは確かにそこらの機械マッサージとは全然違うぞ。圧力も力強さもケタ違い・・・う・・・うぉ・・・あ・・・・うぎゃぎゃぎゃぎゃぁ!痛い痛い痛い痛てぇぇ!!先生もっとやさしく!!
「なんですかこれは・・・ものすごい凝りですねぇ」
まぁねぇ、肩凝りは中学の時に自覚症状出て以来既に十ウン年ですから。そんなに凝ってます?
「肩ガチガチよこれ。運動してないでしょ。」
ぎくっ。当たってる。こらそこの親戚一同。声張り上げて笑うな。肩から手の方に降りて上腕、下碗。その間ひたすら「痛い痛い痛いっ」を連呼する私。あのぉ、これもうちっとやさしくできないですかぁ?
「うーん、兄ちゃんの場合、体大きいでしょ。だから普通の人より強めにしないと筋肉もほぐれないのよ。痛いとは思うけどできるだけガマンしてくださいね。」
快楽は痛みを超えたところにあるってか。SMかこれは。痛いたい痛っ。
掌に映ったときに先生、ふとこんな一言を発します。
「あらお兄ちゃん。仕事してない手ですねこれ。コンピュータか何かやってる人?」
嘘?マジ?どんぴしゃり。あいそーですー、一日中パソコンの前に張り付いてますー。肩と手だけでわかるもんなんです?
「体付きは典型的な事務仕事の体ですからねぇ。あとはやはり肩凝りですか。この仕事長いですから、大体はわかっちゃいますねー。」
ほえー感心。でも相変わらず痛いです手に電気が電気がっ。
こうなるともう完全に先生の術中にハマッてしまいますね。その後もマッサージ進むにつれ、次々と的確に心臓を射抜く矢のような発言の連発。首を揉みながら、
「歯が悪いですねぇ。早めに治しましょう。あと目使い過ぎ。2時間に一度位は遠くを見て休憩しましょう。」
腰を揉みながら、
「椅子に座る時間が長すぎますねぇ。歩いた方がいいですよ。腰痛もひどいでしょう。腰の筋肉つけないと痛みで歩けなくなりますよ。」
足を揉みながら、
「体の割には足首が細いですねぇ。よく捻挫とかするでしょ?膝も悪いし。一度靴を専門の人に合わせてみてもらってはどうです?腰の負担も和らぎますよ。」
これ全部医者に言われてる〜。当たってるよ〜。どーでもいいがなぜ何か言われる度に声を上げて笑うか親戚一同よ。
「ねぇねぇ、この人(私のこと)、何歳だと思います?」
こらこら、余計なことを聞くな。先生即答。
「体だけなら40歳は確実に超えてますねぇ。」
場内大爆笑。
えーん。まだ28なのにー。もうお嫁に行けないー。
しかし、反論できませんでしたね。実年齢を言うのが精一杯。言うこと当たってるし。それ以前にその間も痛くて痛くて痛くて。脂汗書きながら痛み耐えるのが精一杯で。時折奇声を発しながらひっくり返ってました。うぎゃぎゃぎゃぎゃぁ。
でも、確かに痛みが和らいでくると、その箇所がぽわーんと暖かく軽くなるのは確かなんですよ。あ、これがこの効果なんだなぁという感じで。案外SMとかってこうゆう気分なんだろうか、ってそっちに結びつけんなよ安易に。
「は、お疲れ様でしたー」
先生がポンと背中を叩きます。あー終わりかー。なんかどっと体の力が抜けていくのがわかります。体の節々をいろいろと動かしてみる。肩。首。腰。あ、なんか軽い。んでもってあったかい。これは確かに初めての感覚かも。
「それじゃあありがとうございましたー」と先生はそそくさと部屋を去っていきました。ありがとう先生。軽い体を。そしてネタを。
ところでこの話、後日談がありまして。
その日、軽い体のままぐっすりと眠りにつきまして。次の日の朝、旅行中とは思えない快適な目覚めを迎えることができました。体も快調。うし、これもマッサージ効果なりと悦に浸っていたところ。周りがこんなことを聞いてくる。
「ねぇ、体痛くない?」
え?痛いどころかすこぶる快調ですが?
「マッサージ初めてなんでしょ?普通の人は初マッサージの次の日って『揉み返し』が起こって体痛くなるはずなんだけど。」
へ?なーんともありませんが?
「あ。つーことは。既にマッサージ受けられる程体弱ってんだな。やーいおやじー。」
おやじってゆーーーーなーーーーっ。血涙。