フレックス各事情。


 月曜日AM9:30の喫煙室。一人の男がけだるそーにタバコふかしてます。ていうか私なんですが。例の如く休日モードの睡眠サイクルから脱出できずに呆けてます。

 あーあ。

 何様のつもりか知りませんが、いっちょ前に溜め息なんかついてます。そこに声をかけてきた山元さん(既婚男性:仮名)。

「どしたの?夜更かし?」

 2秒で正解導き出すのやめてください。まぁ相変わらずの生活を送ってる私らしいといえばらしいのですが。んでもねー、やっぱ眠いのよ仕事になんねぇふわあああああ、と大あくび。やっぱ月曜の朝って仕事になんねー。

「だったらフレックス使えばいいじゃない。」

 確かにねぇ。今の常駐先さんトコはフレックスを採用しているのでコアタイムの10時半までに会社に着けばいいことにはなっております、が。

「あ、自社?」

 そーなんよね。自社の方はきっかりがっちり9時から6時。常駐先がフレックスだろーが絶対に9時に入れって厳しーくお達しが来ておりますわ。まぁそんでも来るのはいつも9時15分なんですが。んな細かいこといちいち守ってられっか。

「だったら自社でもフレックスやってくれって言えばいーのに」

 はーい散々言いました。事ある度に要望も出しました。でももうバッサリですよ。「うちではフレックスは今後も絶対に採用しません」って。社としての回答返ってきちゃいましたよ。さすがにここまで明確に蹴られるともうなす術も無いなー。今はまだフレックスある常駐先だからいいけどそれもいつまで続くかですしー。自社勤務にでもなろうもんなら毎日イヤでも強制9時出勤確定よ。カラダ持たねー。その点山元さん(仮名)はいーよなー。自社の方もフレックスなんですよねー。

「いやぁそれがね。そうでもないんですよ。」

 おや何か言いたげ。言っちゃえ言ってしまえー。煽りつつ2本目のタバコに火を着けます。

「確かに制度上としてはあるんだよねフレックス。でもこれ使う為には2週間前に申請出さなきゃならんのよ。たかだか1時間出勤ずらす為だけのためでも毎日申請と許可が必要と。基本はあくまで9時出勤。それ以外は許可を取れ、これじゃーね。」

 あーよくあるパターンやね。勤怠管理にこだわりすぎて、制度を柔軟性ゼロの骨抜きにして死滅させる典型的パターン。

「そのくせフレックス使い続けると査定にも影響してくるし。こんなんじゃ使い物にならないよな。結局ウチの人はみーんなフレックス使わずに有給すり潰してる。意味ねー。」

 確かに・・・

「あら、そんなもんウチのところだって同じですよぉ」

 おや、いつの間にか隣で同様にタバコ吹かしてた山橋さん(既婚女性:仮名)。そちらも何かありますか。いつの間にやらこちらのタバコも3本目。すいませんチェーンスモーカーで。

「ウチのところは一応前日までに申請出せばそれでいいことになってんだけど、問題はその後。内勤の時だったかな。その日しんどかったから課長に10時半で出勤しますと伝えたら断られたんですよ。なんで?って聞いたら『君先週もフレックス使ったじゃないか。フレックスはいざという時のためにあるんだから、無闇に使わないように』だって。」

 うわぁそれはひでぇ、同情・・・。

「ふっざけんじゃないわよ!休まずに来る時点で感謝されるならまだしもなんで怒られなきゃなんないのよ!アンタ人の体のことどう思ってんのよっ!!って怒鳴り散らして強引に許可得ましたけどね。課長半ベソかいてました。」

 ・・・する必要はなかったな。強ぇ。

「でもまぁ男の人とかはなかなか強くも言えないから、ブーブー言ってましたよ。実際背負うもんとかあるとなかなか前には出られないでしょうしねぇ。」

 あ、山元さん(仮名)肯いてはる。まぁそうなるだろうなぁ・・・とここまで聞いてて思ったんですが。

 これらの話のいずれもに共通して、フレックスを使うことに対して「悪の感情」を持ってるよーな気がとてつもなくするんですけどいかがでしょ。逆を言えば時間通りに勤務することに対する必要以上の美徳、か。

 私が話切り出した時に返ってきた拒否の理由の一つとして、こんなのがありました。

「お客さんあってのこの商売をしている関係上、お客さんが働いているときに『すいません、まだ担当は出社しておりません』ではサポートもできないし、何より相手に示しがつきません。従ってお客さんの最も動いている時間である9時〜6時という規則を変えるつもりは全くありません。」

 これはこれで筋は通ってる。理屈ではまぁなかなかこれには勝てませんわーね。さすがにその場でこれを出されては何も言えなかったっす、私も。えぇヘタレと呼んでけろ。

 ただ、今から考えてみると言葉の裏ではこんな邪推もできるんですわ。

「うっせーなボケ!てめぇは9時から6時まで黙って座ってればいーんだよ!大人しく従ってるフリしてりゃ客のウケもいいし手取りも増えるんだから黙ってろ口ばっかりの唐変木が!フレックスとか聞きかじった言葉ほざいてる余裕あんだったら仕事のひとつでも取ってこいや能無しのキレっカス!」

 ここまで言われたらいっそすっきりしますわな。その日の内に辞表叩き付けてついでに刑務所入る期間を計算しつつ相手の胸元をナイフで一突きとかできるんだが・・・やりませんやりませんってば。

 まぁこれは極端にせよ、フレックス使わせることそのものに対する抵抗感ってのを感じましたねぇ。うちにせよ、山元さん(仮名)山橋さん(仮名)の証言からも。

 で、やっかいなのはここまで来ちゃうともうどちらが正しい間違ってるの話ではなくなりますから。正論V.S.正論。どっちが好きかの感情論。泥の被せ合いになるのが目に見えてるってことでしょー。それこそ夕暮れの土手でお互いで気が済むまで殴り合って、「テメェやるな」「へっ、お前のパンチも結構効いたぜ」と肩組みながら夕日に向かって歩き出さない限り、和解への道は見えてこないよーな気がします。どんな道だ。

 そうゆう意味ではフレックスという言葉も、まだまだ働き手の目をごまかす意味合いでしか使われてないところも多いんだろーなー。今まで9to6が当たり前の世界だったからこそ、この言葉が光り輝いて見えてただけの話で。で、雇う側も雇われる側もそれが無意識に頭に残ってるという前提があるから、なんとかしてバランスを保ってるだけの話で。

 でもさ。どうなんだろね。これからの話。会社という世界に入ってきたばかりの人、もしくはこれから入ってくる人の中には「なんで時間だけに縛られなきゃなんないの?バッカじゃねぇ?」とはなから時間制限の概念さえも否定する層は確実に増えるだろうし。それらの「なんで?」に対してどこまで応戦できるか・・・そっからが本格的に今の制度がどこまで持ちこたえられるかの試金石になるんでしょーな。がんばれ同士達〜、9to6なんてぶち壊してしまえ〜。他人頼りかい俺。

「あのー、なにボーッとしてるんです?」「寝てませんかー?」

 あ、すんませんちょっとね。んじゃそろそろ席立つべっかな。現在AM10:00。タバコ5本。朝からこれはさすがに気持ちわりー。んじゃこの件をさっそく文章に・・・。世の管理者さん、私を時間だけで縛るのは不可能なのですよふふふふふ・・・。

 サボッてるだけだろーがコラ死ねカス>俺。


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