ソルトレークに神様が


 ソルトレーク冬季五輪が終わりましたな。

 いや、これを書いてる時点ではまだ後半戦まっさかりなんですが、既に私の中では終わってるので問題ないことにします。するったらするの。

 しっかしまぁ今回は聞きしに勝るひどい大会だったみたいですな。みたい、てのは私自身余り見てなくて(やっぱ時差はキツいべ)、他聞に過ぎない部分が多いがためにこうゆう曖昧な表現になってしまうのですが。

 まずはあちこちで言われてるのは審判の質の低さね。フィギュアスケート、フリースタイルスキー、スノーボード、スピードスケート、ショートトラック、どれもこれも非難轟々罵詈雑言の嵐。

 しかもこれらのほとんどがアメリカ絡んでるってのが笑えるやら悲しいやら。ダメだってこいつら調子に乗らしたら。ただでさえ自分さえよければ後はどうでもいい糞アメ公共なのこんなん認めたら図に乗ってますます(以下50字検閲削除)。

 まぁアメ公云々はともかく(まだ言うか)、冬季の場合は種目数が少ない関係上、マイナー競技でも採用される→競技人口が少ないし歴史も浅い→審判こなせる人材が少ない、の悪循環がモロに反映されてしまった、というのが実際のところなんでしょう。まだ抜け出すまでには時間かかるんだろうなぁ。オリンピックの種目になったところで手軽に始められるという訳でもないし。面白そうだなぁ、やってみるかジャンプ。できるかいっ。せるふツッコミ。

 で、やる方がやる方なら、見る方も見る方てな訳で、今回のテレビ中継、どこの局もガタガタのボロボロ。まだかろうじて「競技」として伝えてるNHKはともかくとして、民放各社はフジもTBSもテレ朝も日テレも誉めるところひとつもなし。完全に失格。民法各社の中継って、CM割り込みのタイミングといい、スタジオでのバカタレントの底の浅い会話といい、完全に「日本人選手の応援放送」の視点しか持ってないのが致命的。こんなもんスポーツ中継とは呼びません。アナウンサーも解説も抜きで、会場音声流しながら画面だけ映した方が絶対にいいよ。それくらい酷かった。なのでIOCさんお願いです。こいつらバカに放送権売るのやめてください。ロクなことがないから。あ、テレ東はいいです許します。いつも通りだったから。何が。

(ところでウラ取れてないんでカッコで書きますけど、長嶋一茂と松岡修造がジャンプ会場ではしゃぎすぎて取材会場から追い出されたという話は本当ですか?もし本当でしたらそいつらバイアスロンの銃でハチの巣にしてやってください。競技用の的でも可。つーか本当でなくてもいいから誰か殺れ。)

 とまぁ軽くで終わらせてしまうつもりが随分と長くだらだらと文句書いてしまいましたが。

 ただ、これで「もううんざりだこんな糞オリンピックなんぞ二度と見ねぇぞIOCもJOCもアメリカ野郎もみんなまとめて死んぢまえ」的な結論に行く訳ではなくって。本題はここからだったりする。

 私的にこれらの鬱憤をすべて晴らしてくれる出来事があったんですな。

 私は声を大にして言いたい。巨人が負けた次の日機嫌が悪くなる社会人失格のおっさん管理職よ。寺原の不可解な失格に唇を噛み締めるにわかオリンピックファンよ。自国が負けちゃったからという理由で人殺ししちゃうフーリガンよ。

 スティーブン・ブラッドバリーを注視せよ。

 あ、笑ったなっ。今「ぷっ」とか言って吹き出したな。笑うな笑うんじゃない!ちゃんと理由があるんだ!

 名前だけ出されてもなんのこっちゃという方もいらっしゃるでしょうが、「ソルトレーク五輪一のラッキー男」と言えばピンと来る方は多いのではないでしょうか。

 そうです。ショートトラック:男子1000mの金メダリスト。

 この競技が行われたのが日曜ということもあり、ほけーと何をするでもなく眺めてたんですわ。準決勝で寺原が理不尽なDNQを食らって「どこ見てんだよこのクソ審判は」とか毒づきながら。

 そんな若干荒んだ心境のまま見つめてた決勝戦。そこで事件が起こりました。3冠も狙っていたアメリカのオーノを始め、頂点を目指してた強者が、よりによって最終周の最終コーナーで一人、また一人と大転倒。各選手慌てて起き上がりゴールに足を投げ出そうとしている中、一人の選手が「すーーーーーーー」とラインを通過。そのままウイニングラン。それがブラッドバリー選手でした。

 凝固。そして大爆笑。

 ぶははははははははははぁぁぁ!!なんで最初からラスト寸前までビリっケツだった奴が1位なんだよ!しかも金メダル!!わはははは!!スローで見ると最終周、1/4は軽く遅れてるじゃんか!!これで金メダル!!すげー大珍事だ奇跡だハルマゲドンだ!うわー後の4人のゴールシーン、ドリフのコントだぁおかしいおかし過ぎる〜ぎゃはははははは!!!

 20分位ひとしきり大笑いして。その後お約束ということでネット徘徊して記事とか見てたら、ブラッド様(敬称付け)の恐るべき事実が発覚してさらに驚愕。

 準々決勝では4人中1人転倒1人失格してして2位通過。準決勝でも5人中3人転倒1人失格で1位通過。そして決勝ではトドメの5人中4人転倒で金メダル。

 全部他力本願じゃねーか!!

 大爆笑。笑い死ぬかと思いますた。

 そんでさんざ笑って笑って笑いまくって、やっとこさ平静を取り戻してみたらさ不思議なもんでさ。決勝戦見る前まで審判不信やらアメリカ偏向やらのもやもやしてた不快感、ぜーんぶ吹き飛んじまったんですな。なんか憑き物が落ちたみたいに。

 あぁ、この余裕が足りなかったのかなぁ、なんて思ったりして。

 考えてみりゃさ、好きで見てるはずなのに、見れば見るだけ不快感が増す、なんてこと自体がヘンな訳で。勝ったら勝ったでばんざーい、負けたとしても残念だったねぇ、でも面白かったからいーや。ミーハーとして見てる側としてはこれで十分なんだよな、実は。

 オリンピックに出るからにはメダルとってナンボ、有力選手が取り損ねた日にゃあ国賊扱い。取ったら取ったで周り巻き込んで自分のことのように大騒ぎ。いつからなんでしょうね。こんな風潮が当たり前になったのは。こんなんを「普通」として捉えるようになっちゃたのは。明らかに「異常」なはずなのにね。

 でもさ、実際は勝負事。今回のよーなことだって起こってしまう訳でさ。かたや国を挙げて湯水の如く金使って血の出るよな苦労重ねてやっといっこの金メダル。かたや周りがコケまくってコケまくって棚ぼた金メダル。どっちも同じなんだよな。1位は1位。こうゆうことを現実の出来事として見られるってのもスポーツならではの特権な訳で。

 ニュースで繰り返し流れるブラッド様の屈託のない笑顔見てると、スポーツ見るのを趣味としていながら忘れかけてた純粋な面白さを思い出させてくれるみたいでさ。なんかね、癒されましたです。

 大げさな話かもしれないけど、この一戦で私のスポーツ観、根本からひっくり返されたような気がしてます。もしこのショートトラック見てなかったら、私のことなのでソルトレークに対して差別用語使いまくりあらんかぎりの罵倒文章アップして、ネガティブにストレス発散したのがオチだと思うんよ。でも、ブラッド様の存在のおかげで、まるで海のように広い私の心。具体的に言えば瀬戸内海くらい((c)あずまきよひこ)。

 この「伝説」が見られたソルトレーク五輪に笑って感謝の意を奉げようではありませんか。スポーツの楽しみを改めて教えてくれた、ブラッド様に乾杯。

 という訳で。

 今、ネットで拾ってきたブラッド様の御姿を壁紙に設定しています。母国オーストラリアではブラッド様の記念切手が発行されるということで、なんとか入手してお守りとして持ち歩こうかと画策しています。

 つまり。

 その運、1/1000でいいから俺にくれ。

 そうゆうオチかい。


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