罵倒の次には何がある


 1995年、インディーズレーベルであるP-VineよりリリースされたKING GIDDRAの1st「空からの力」。

 もう7年前になるんですなぁ。当時かなり聞き込んだアルバムの1枚です。大学入った時位にスチャダラパーでラップっつーのがあるのを知り、そっから高木完、ECD、Rhymesterと流れていって、そんな時期に聞いてたのがこのアルバムだったんですな。

 やっぱり当時としてはKING GIDDRAの存在てのは大きかったですよ。ライミングの密度がぐんと濃くなったのもこの頃からですし。「コードナンバー0117」「星の死阻止」「行方不明」この当たりは繰り返し繰り返し、お前サルかとツッコミたくなる位聞き続けてたのを思い出しますわ。

 その後KING GIDDRAは活動休止という名の実質的な解散状態となりまして、それぞれソロとして活動していたのですが、やはりKING GIDDRAのインパクトがあったからなのか、それぞれのソロ活動は正直あんまりパッとしないな・・・てのは感じてたんですな。その後更にいろんなスタイルが出てきたから目・耳が肥えていったってのもあると思います。と。

 そんな状態がずっとくすぶってたのですが、彼らが実に6年ぶりにシングルを出すと。活動休止後、一度3人で集まって作品発表したこともあるのですが、その時はDJ OASISのアルバムの中でfeaturing ZEEBRA, K DUB SHINE名義になってたので、復活というよりは余興というような雰囲気が強かったと。しかし今度は正式にキングギドラとして(オフィシャル表記もカタカナに変えて、版権持ってる東宝からちゃんと許可も取って(笑))シングル2枚同時リリース!OK!これは要チェックだ!買うぞー!!

 ・・・・・・ということを知ったのは、発売前どころか、とっくに発売日過ぎ。しかも収録曲「ドライブハイ」「F.F.B.」の歌詞の中にホモセクシャル及びHIVの差別を助長する表現があるということで出荷停止・自主回収が行われることになった、というニュースで初めてリリースの存在を知ったという体たらく。

 うをー!アホか俺はー!なんでマメにチェックしておかねーんだー!ちゃんと買ってればちょっと待つだけでたんまりとプレミアが・・・こほん、なんでもありません。

 あーあ、こりゃもう買えないだろうなー、でもあきらめられないな・・・と別の用事ついでにCD屋に行ってみたところ、なんとあっさりと未回収分の新品を発見(笑)。いやぁ世の中諦めないでいるといいこともあるもんですな。メーカー・小売店間の情報伝達の遅さにカンパーイ。おい。

 ま、プレミア云々は置いといて。改めて歌詞カード眺めてみます。開封した時点でプレミアなくなるじゃんという説がありますが、そんなこた知ったこっちゃありません。どれどれ、今回問題になってるのは「ニセもん野郎にホモ野郎 一発で仕止める言葉のドライブハイ」(ドライブハイ)、「Fast Food Bitch Honey! どっちがいい カラダ壊すぜ おしまいにHIV」(F.F.B.)ですか。個人的には「うーん、この程度でも今は回収になっちゃうのねぇ」という感じ。もっと過激な、もっと酷い表現してるライムなんざ他にもいっぱいあるからねぇ、という若干どころかかなり醒めた感想。

 むしろこうやって今までとは比べ物にならない程の人数のチェックが入るようになったんだな、ということに関しては素直に喜ばなきゃいけないのかもしれぬ。HIPHOP/Rapがゴールデンタイムの音楽番組で流れるなんざ、前は絶対に考えられなかったことだしね。これからは今まで以上に「見られる、聴かれる」ことは意識しなきゃいけないってことなんだろーな。

 ま、差別云々に関してはここではちょっとおいといてラストでフォローするわ。それよりも今回の2作聴いたんですけどねぇ。差別云々とは全く関係ないところでちょっとそれは無いんじゃねーの?つーのがありましてね。前から思ってはいたことなんで、この際わからん人おいてきぼりになるのを承知の上で書き散らせて頂こうかと思いまする。専門外の人スマヌ。できるだけがんばってついてきてくれ(^^;;;。

 今回2枚のシングルに6曲中4曲歌詞付きの曲が収録されてるんですが(2曲はDJ OASISのインスト)。いわゆる「BITCH」を題材にしてるF.F.B.以外の3曲は全部内容一緒なんですよ。簡単に言ってしまうと「お前らニセモンだ。俺らがホンモノだ。」こんだけ以上。「空からの力」の時には随所に取り入れてた社会風刺・メッセージも陰を潜めて、単に言葉羅列してるだけ、という印象が最後まで拭えませんでした。残念ながら。

 相手(大抵の場合は他のライマーを指す)をDISり(罵倒し)、自分のスタイルを見せつける、ってのはHIPHOPとしてはずーっと存在し続けてるいわば標準装備みたいなもんだと思うんですけど。いい加減これらのジャンルが世に出てきて久しいのに、いまだに「これしかない」ってのが多いような気がしてしょうがないんですな。ステージ上でのフリースタイル(アドリブ)やバトル(1vs1で相手を打ち負かすことを前提としたアドリブ合戦)ならいざ知らず、CDに収録された作品での「小山の大将自慢」にはこうも続くとさすがに食傷気味なんですよ。

 つーかすいません言い切ります飽きました。

 正直言わせてもらって、聴き手にしてみたら本人がニセモノかホンモノかなんて別にどーでもいいんですわ。あんたらすごいのはわかった、じゃあそっから何が言いたいの?と考えてみても、その回答は聞けども聞けどもちーとも見えてこない。今回のこの2作に今までもくすぶってた不満をモロに感じてしまったんですな。

 この傾向に関してはキングギドラに限った話じゃないので、ある意味八つ当たりに近いのがこの上無く心苦しいんですがね。実際今でも好きよ、ZEEBRA/K DUBの声の絡み方は。それでも言いたくなってしまう位、いまだに「俺はすごいぞ俺はすごいぞ」だけの世界なんですわーな。

 この辺の「次に何を出すか」をもっと理解されるようにしとかないと、今回のような回収騒ぎとかは絶対再発しますよ。DISするからには責任が伴う、それを覚悟の上でDISするんだから、その裏にある理由も含めてぴしっと提示してく必要があるんじゃないですかね?少なくとも「とりあえず過激な言葉並べてビビらせておけばリスナーはヤバいヤバいとウケてくれる」、なんてのはもう過去の話になっちゃってるんじゃねーかい?

 もちろんこの言葉は暴言書きであるわすにもそのまんま跳ね返ってくる訳なんですが。きゃーやめてー耳痛いー。遅いわ今頃ボケても。

 という訳で長々とすんませんでしたね。特にキングギドラ好きな方にとってはヤリ玉あげるようなマネしてしまいほんと申し訳ない。んでもやっぱりまだまだHIPHOPは聴いていたいからねぇ。売れなくなった→やる価値なし、なんて安易な判断されたくないでしょ?やる側も聴く側も。どうせやるんだったら認めてもらいたいのもあるしね、てな動機でダラダラ書かせて頂きました。どうぞご容赦を。

 あ。それで。最後にひとつフォロー入れておこうかな。

 既にキングギドラ側からの釈明・謝罪も入ってますが、決してHIPHOPという音楽自体がホモセクシャル・ゲイ・HIVといったものを常時差別対象にしているということは無い、ということは理解して頂けると幸いでございまする。そもそもHIPHOP自体、マイノリティー側から派生してる音楽(文化)だしね。

 この辺はわすの敬愛するECD師匠(勝手に呼んでますが)がたった7行ですべて表現しきってます。ここでの対象はゲイに関してなんですが、どれに当てはめても一緒だと思うよ。

オイ アイツつまみだせよ ゲイだ
いんやちょっと待て 別に敵でもねーだろ
あいつも戦うマイノリティだ
選んだわけじゃない 運命だ
神がいるなら神のセイだ
好きじゃないのはわかるけどOKだ
わかったらいくぞ SAY YEAだ
(ECD「encore: I say "HO"」)

 わかるよね?これの言ってる意味。

 そーゆーことです。はい。


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