髪を切りにいく


 土曜のお昼なんです。

 眠いんですよこちらとしたら。この眠気の続く限りなすがままに眠り続けたい訳ですよ。

 それをどーですか。「髪切りに行ってこい」と。まさか29歳にもなってたかが頭髪で指導受けるなんざぁ夢にも思いませんでしたよまったく。高校生か俺は。「こらぁてめぇ脱色してるな停学だ反省文だ親の呼び出しだこっち来いこらぁ」と竹刀ブン回して追っかけてくる体育教師に「違うんですぅもともと茶色なんですぅこれが自毛なんですぅ」と泣きながら弁明してた高校時代カムバック(実話)ってか。あんな教育やってたから、仕事中に雑文書いて時間潰して「これが正しい不良リーマンの姿だぜぇへへへへ」と一人自己満足に浸ってるような人間のクズを量産したんだっつーの。ちったぁ己の将来性の無さを恥じろや愛知県教育委員会のクソ爺い共、今でもあの恨みつらみは忘れてねーぞボケ。

 ・・・あり?なんかしょっぱなから論点ずれてるよーな。

 まぁ実際の話、新しいお客さんと初めて会う時とかには悲しいかな派遣の身分ってヤツで、やれ背広だのネクタイだの頭髪だの靴下だのと、そうゆう「ご命令」がさも当然のように飛んでくる訳ですわーな。身なりぴしっとしてバグ減るんだったらいっくらでもやってやらぁ!文句あんだったら「このネクタイしめるだけでバグ100件減少!開発効率200%!今なら快眠マクラもお付けしてこのお値段!」とかやってジャパネットたかたで通販してみせろってんだ!在庫買い占めたる!

 ・・・・・・やっぱり論点ずれるな?あれれ?

 とまぁそんな説得力あるのかないのか自分でも説明できない精神状態で、まぁ端的に表現しますと単に寝起きのボケボケ頭で髪切りに行ってましたです。始めからそう書け俺。

 自宅から車走らせること約20分間。いつもお世話になっている美容院に到着。

 私、ここ7年位ずっと床屋(理容店)ではなく美容院の方を使っています。私が学生時代、バイトしてたお店の隣のスペースに新規開店したのがこの美容院なんですね。それが縁でずっと使わせてもらってると。ちなみに私がバイトしてたそのお店はとっくの昔に潰れました。やっぱ美容理容ってのは不況に強いのかな?

 まぁいいやそんなこた。トビラを開けます。がらがらーん。

「いらっしゃいま・・・・うわぁ相変わらず伸びてますねぇ。」

 開口一番それですかいせんせい。そんなに伸びてるのかなぁ。なにせ元長髪ですからねぇ、ちょっとやそっと長いところで不快感ってのは感じないんですな。あくまで自分にとっては。そう思いつつ受付しつつ前回来た日時を確かめてみる。

 えっと。3月か。・・・・・・え?3月?

 半年かいっ!もちろんその間に他の店に髪切りに行った記憶もなし。そっかぁ。会社の上司の口調に「お願いだから切りに行ってくれ」的なニュアンスが込められてたのはどことなく理解できたんだけど、そうゆう意味だったのかねぇ。自分では気にならなかったとはいえ、周りから見たらそこまで伸びてたってことなんですな。

「だめですよ、伸ばすにせよ2ヶ月に1度は整えないと。量が多くて固い割には細いですから。枝毛とかの原因になりますよ?」

 せんせいにも怒られてもーた。えらいすんませんほんまに。途端に弱体化するこの態度。それでこそ人間のクズ。わけわからん。

 まぁそんな挨拶を交わしつつ、カット始めてもらいます。まぁ大体いつも通りちょい長めに、あと多めにすいてくださーい。

 さくさくさく。小気味よいリズムでハサミが入ります。

 ばさばさばさ。音を立てて髪が頭から落ちていくのがわかります。

 ん?ばさばさばさ?えっと?今回何cm位切ります?

 「えーとそうですね。10cmまではいきませんけど、7〜8cm位は。あ、もっと短くします?」

 あ、いいです、大体それ位で。あんまり短くするとヘンだし・・・そこまで伸びてたんか。なんかさっきまで散々キレてたのが申し訳なくなってきた。まぁあとは細かい部分は全部おまかせにしちゃって身を委ねることに。

 でまぁこん時って、眠くなる、というまでではないけど、妙にほけ〜っとしちゃうんですよね。陽の当たるテラスで何をするでもなくひなたぼっこに専念してるような、そんなぼんやり感。あれは何なんでしょうね?実際、カットにかかる時間は約30分。妙にこの30分が早く感じたりする。なんなんでしょ?仕事30分持続させるのってあんなにしんどいのに。え?それはお前の性格だ?それは失礼。とにもかくにも他愛のない世間話などしながらゆるゆると時は流れます。

 ・・・あ、そうだ。せっかくだし聞いてみよう話がてらに。隣のあっしのいた店なんぞはとうの昔に潰れてしまいましたけど、なんだかんだでもうこの美容院も長いですよねぇ?やっぱ不況に強いとかってあるんですかいねぇ?

「そんなことないですよぉ。」

 あ、やっぱり。

「幸いにもうちの場合はごひいきにしてくれるお客様いらっしゃいますからやっていけてますけど。やっぱり全体的にはきついですよ。ほら、最近回りにも値段下げてそれウリにしてるお店とかありますし。やっぱりそうゆうお店に流れたりというのもあると思いますよ。」

 ふーむ。

「あと、何も値段とかコストの話だけじゃありませんしね。ほら私達って立ち仕事の力仕事になるじゃないですか。体が資本なんですよね。風邪ひいただけでもお客様の前には立てませんし。ようやく独り立ちできるほどになったけど、体壊してしまい店閉めざるをえなくなったなんてのも話に聞きますねぇ。」

 はぁ、やっぱりラクなショーバイなんて無いんだわなぁ。

「それでもこっちは今できることをしっかりやっていくしか無いんですけどね。 もちろん頑張るときには頑張るけど、あくまで体壊さないのが第一。 休むときにはしっかり休む。バランスですね。」

 どこぞの「動け動け」馬鹿に聞かせてやりたいですそれ。

「フジハラさん、ちゃんと休めてます?」

 ぐはぁぁぁっ!それを言うかぁ痛い痛い耳が痛い心も痛いっ!最近荒んでいたから尚更痛いぃぃ!!

「はい。カット終わりましたぁ。お疲れ様です〜」

 とまぁそんな具合にいつの間にやらカットは終了。あとはシャンプー。シャンプーは別の店員さんにやってもらってたんですが、やはり男性(女性に比べれば縦にも横にもでかいしな)に対してのシャンプーには慣れてないのか、頻繁に腕だの胸だのが体に当たるのでどうしていたらいいものやら反応に困ったりしつつ。こらこらこら。あとは乾かしてぇ、整えてぇ、でハイおしまい。ふぅさすがに頭軽いわぁ。

 まぁ実際の話、ここんところ(主観的に)つらいこと続いてたしなぁ。いつの間にやら結構な気分転換にはなりましたな。世間は相変わらずせちがらい訳ですし、こうゆう細かいことでも心プラスに持っていかなきゃってことなのかもしれませんねぇ。 まぁさっきの話じゃないけど不況不況って嘆いたところでどーにもなりますまい。 後ろ振り切って前に進むことにしましょーかねー。あくまで限界超えない 範囲内で。てきとー。

 んじゃ会計すまして〜。どんもありがとです〜。

 「次は今度こそ2ヵ月後ですよぅ!」

 クギ刺されましたぶっすりと。

 えー?こちらはてきとーじゃダメなんですかぁ?

 ダメに決まってんだろ>俺。


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