崖っぷち最終日完全版


 はじめにおことわり。今回無駄に長いです。気合い入れて読んでください。どんなんだそれ。

 

 2002年12月26日(木)。

 AM7:00。

 目覚まし2つのシンクロナイズ。ジリジリジリリンリンリン。

 んにゃ・・・もう朝だ。

 起きなきゃ・・・起きなきゃ・・・・。

 うへ?・・・・・・体動かねぇ。起き・・・上がれん。

 おいおいおい、既にギブアップですかわすの体は?

 前日、寝たのは午前5時でございます。いや、前日は午前0時には帰ってきて速攻で横になったんですけどね。精神的に昂揚してるのと、頭痛と胸痛と胃痛と腹痛が見事なまでに共鳴しておりまして。まさに寝るに寝られない状態でした。

 ちなみに余りの不眠加減に、前日夜のにっきにはこんなこと書き残しております。

 がんばれ俺。あと1日の辛抱じゃ。

 半年ガマンできてあと1日ガマンできない訳が無い。

 GAKU-MCの言葉通り、真っ白な灰になるまで動いて、そこから新しい何かを見切れ。

 と暗示かけなければならない程体力的にせっぱつまってます(笑)。

 とりあえず今日はもう寝て、明日気合で片づけてきます。

 生きてたら週末にでもご報告。

 死んでたら骨は拾ってくれ(笑)。

 えーと。今、頭冷静だから言えるな。何様のつもりだ俺。

 とはいえ実際には目覚ましの音は把握できていながらも、体起こすことさえできないまでにボロッカスになってるのが現実でございます。

 さすがに起きようかどうか迷いましたな。本日現在の常駐場所とオサラバできる最終日。今日ですべてにカタがつく。今日行かない・・・ということは・・・明日行かなきゃいけない・・・・・・。

 起きなきゃ〜〜〜!!

 人間、死ぬ気になれば何でもできます。

 AM8:00。

 とりあえず無理矢理起きた。着替えた。朝食は・・・喉通らねぇ。ちなみに昨日の夕食も食べてません。

 うー。もう朝食はパスでいっか。とはいえこのままでは昼までには力尽きるのは目に見えてるよな・・・という訳で、緊急ドーピング作戦開始。

 掟破りの同時服用。危険ですから真似しないでください。

 ぐっはー!なんか違う意味でキテるー!時計を見る。あと・・・10時間。10時間我慢すればいいんだ。気合いじゃー!気合いで持たせるんじゃー!

 んじゃ逝ってきまーす!字が違う。

 AM9:20。

 会社着。オフィス・・・に入る前に、改めて付近の喫煙室で気合いの入れ直し。

 プロジェクトが噴火してからというもの、目に見える形で増加したのはタバコの消費量でした。この1週間に関しては2箱じゃ足りず、一日3箱買ってました。いくら吸ってるのがマイルドセブンのエクストラライト(3mm)とはいえ、これじゃあ許容量超えてるよなぁ。

 わかってます。わかってますけどこれ無いと目ぇ開けられないんです。これ終わったら節煙しますから。勘弁してくだせぇ旦那様。誰だそれ。

 タバコ1本吸い終え、改めて、戦場なるオフィスへ。

 AM9:25。

「おはようございまーす」
「おはやーす」

 いつもの感じのオフィス。既に皆さん、殺気立った状態で業務に取りかかってます。なんか邪魔したら刺されそうな雰囲気。

 オフィスの空気がこんなんなっちゃったのは・・・やはり12月入った頃からですかね?火噴くまではこんな殺気なんか感じ取れなかったんだけど。この雰囲気が少なくともリリースまでは続くんだよな・・・。

 と感傷に浸る間もなくこちらも戦闘開始。

 あのね。通常常駐最後の日って大抵は与えられた仕事もなくて、ぽけーっと身辺整理しながら雑談しつつ終業時間を待つことの方が多いんですけど。今日中にこなさなきゃならないタスク。

 ・・・・・・通常ペースなら1.5日はかかるよー。でも今日中に終わらせないと明日も来なきゃいけないよー。なんで最後の最後まで追い立てられるんだよー。号泣。

 とは言え、周りも今の仕事進めてるペースもそんなもんなんだよな。私の体と同様、ドーピング重ねて無理矢理作業のスピード早めてる。そんな感じ。このことによって無論作業量は増えてるように見えるけど・・・質に関しては多分スカスカなんだろうな。それが露呈するのは早くて単体テスト時、悪いとリリース直前、もっと悪いとリリース後・・・。

 ・・・・・・考えるのやめよ。仕事だぁ仕事!来るなら来いやかかってこんかぁおらぁ!!

 誰にケンカ売ってるか私よ。

 PM12:00。

 午前終了。気合で作業進めたぞい。

 そして屍いっちょあがりー。ばたんきゅー。

 ちょうどドーピング効果も切れたみたいで、イスに座ってることすら既に辛い状態。うー。休憩の後、午後業務かー。最後まで体持つのかなー。そんでも休み時間精一杯休まないとなー。壁伝いに体引きずりながら食堂へ。

 ふー。朝も食欲無かったけど、ここは食べておかなきゃな。おばちゃーんうどんちょーだいーあんがとー。いっただっきまーす。

 ・・・・・・やべぇ。食えねぇ。

 箸からうどんを口に運ぶ直前で体が止まります。明らかに体が食物を体内に入れることを拒否してます。

 さすがにちょっとビビりましたね。この体験はさすがに初めて。ここまで来てたか俺のカラダ。

 とは言え食べないことにはどうにもならん。その根拠はなんだ。わからん。わからんけど食わなければ。おらーヤケじゃー。てめぇうどん如きで抵抗するたぁいい度胸だぁ!おとなしく俺のエサになりやがれ往生せぇやあ!!!

 どうでもいいけど何故にケンカ腰か。

 なにはともあれ完食。気持ち悪いけど。勝利。食後は再びドーピングした後、休憩終了時まで倒れ込むように机の上で眠ってました。

 PM1:20。

 本日最大のイベント。これまで私が検討/作成していた各種仕様書の引き継ぎミーティング。

 作成した仕様書、A4に印刷して約100枚。これらをざっくばらんに説明しつつ順番に引き渡していきます。ところどころ質問が飛んでくるものの、この辺はなんとかクリア。そりゃまぁ答えられるわな。その部分作ったのは私なんだし。私が答えられないということは、この部分に関してわかる人間がプロジェクトに一人もいないということも意味するし。

 ただ。仕様書が徐々に相手側に積まれるにつれ、私の中で沸き上がったのは、開放感ではなく、罪悪感でした。

 というのも。この火の噴いたプロジェクトの状況では、まだ今後要求仕様が二転三転するであろうことは目に見えてるんですわ。それに伴い、I/Fや共通の作り込みも転覆するのは自明の理。

 となれば、今渡してる仕様書は3週間後には「単なるゴミの束」になっている可能性が極めて高いと。

 とりあえず今日時点までの変更内容に関してはマージは取れているはず。でも手を入れられるのも今日までの話。おそらくこの仕様書が別のプログラマさんに渡り実際にコーディングする頃には、結局またこの仕様書に手を入れなければならないでしょう。もしくはこの仕様書をゴミ箱に投げ捨てて自力のみでコーディングしていくかのどちらか。

 そもそも、自分の書いた内容が合ってるか間違ってるかなんて、実際にそれを作って動かしてみなきゃならないことには確かめようがないし。そうゆう意味では自信を持って「これで作って」なんて、とてもじゃないけど言えないです。世間体云々別にして一技術者として。

 引き継ぎの進行と共に崩れ落ちていくプライド。敗北感。そしてそれでもこんなボロだらけ(になっていく)仕様書を頼りにプロジェクトを進めて作らなきゃならない、残されたメンバーに対する慚愧の念。針のムシロに座ってる気分でした。

 今回の一連を通じて決意したこと。もう二度とエセSE仕事はやんねぇ。エセ仕様書なんて糞食らえだ便所紙にして流しちまえ。主観入ってます。

 引き継ぎは約1時間強で終了。「これまでありがとうございました」「お疲れ様でした」と挨拶して席を立ちます。

 疲労が加速度的にのしかかります。

 PM4:00。

 その後追加して作る必要があった書類作ったり展開したりで、パソコンから手が離れたのがこの時間。

 ドーピング効果も消え、真っ白に燃え尽きる私。

 もーけつたたかれてもあたまひっぱたかれてもなんにもできませーん。いっそのことここでころしてくらはーい。

 漢字変換位しろよ。

 んでも冗談抜きでそんな状態でしたね。耳と鼻の両方からエクトプラズム出てたんじゃないでしょうか。もう目はかすむは頭は痛いわ呼吸もままならないわ。

 そんな状態のままで喫煙室へタバコ吸いに。こらこら。

 行くと他のメンバーさんが先行してタバコふかしておりました。何気なしに話しかけられる私。

「どう?進んでる?」
「やっぱり年末まではかかりそう?」

 そうなんすよね。実は今回の撤退、一部の人間を除いてはまだ公にしていないんですよ。プロジェクトの志気にも関わることなんで直前までは言わないように、とこちらから希望出してましたんで。ですので当然この方々も「今日で辞める」ということは知らないと。

 一瞬言葉に詰まる私。そりゃそーだよなー。なんて言ったらいいものか。とりあえず「とりあえず今年分は気合で終わらせます。まぁ年末年始は出てくる気力も残ってないですし、家でこそこそやりますわぁ」とお返事。

 すまんのぉ。一人で勝手に逃亡決めちゃって。

 吸い殻を灰皿に投げ捨て、背を向ける私。やはり罪悪感は拭いきれません。

 PM4:10。

 さっきのは吸った気にならなかったんで改めて喫煙室に。こらこらこら。そうゆうことやってっから本数増えるんだっつーの。

 今度は既に撤退することを知っている一部のメンバーさん(主にプロジェクトの中でも同じ役割(Java側)を担当していた人)が待機してました。一人でタバコ吸わせろっつーの。

 でもまぁ事情は通じてるので一通りお話とか。

「年明けからは自社に戻るんです?」
んにゃ。自社も退職。既に意思表明はしてあるんで後は慰留を突破するだけ。
「辞めてからは?」
しばらく休養。転職先も探してません。つーかこの忙しさじゃ転職もできないし。 どっちにしろカラダ動きません。しばらくは休ませてもらおーかなと。
「いーなぁ。俺も辞めようかなぁ」

 ははははは・・・・・・笑えねぇ。ごまかしておこう。

 今度は一本吸い切り、ちゃんと灰皿へ。んじゃそろそろ片づけに入りますかねぇ。

「あ、送別会、大丈夫ですよね?」

 あ、そっか。それがあったんだったな。ういなんとか。それまでには片づけておくねー。

 PM6:00。

 その後書類(という名のゴミ)をシュレッダーに流し込んだり、手持ちの私物をこっそりカバンに押し込んだりしている内に、あっと言う間にこんな時間。もう体調に関してはいい悪い通り越して自分でも訳わからんくなっております。

 もーどーにでもしてー。もしこの時誰かが襲ってきたとしても、抵抗することなく刺されることを選んでいるでしょー。その方がラクに死ねそー。

 そんな事を考えてる中。考えるなそんな事。

 てくてくてくとサブリーダーさんが近寄ってきました。

 ・・・・・・なんですと?やっぱり最後にプロジェクト離脱のご挨拶をして欲しいと?あのー、私基本的には誰にも知られずにここ去りたいんですけど。その旨は既にそちらにも伝えてあるハズですよね?

 え?それでもやっぱり正式に挨拶は欲しい?「突然いなくなりました」じゃ今後にも関わる?んーーーーーーー。まぁ別にどっちでもいいけどねー。私の事情は既にご存じですよね?それでも構わないのであればいいですけど・・・。

 え?いいの?やってほしい?

 仕方ないのぉ・・・・。

 PM6:10。

 という訳で唐突にミーティング。最前列にぼけーと突っ立ってる私。

「という訳で突然なのですが、本日をもってフジハラさんが自社に戻るということになりました。」

 いや戻らないんだけどねー辞めるしー。と心の中だけでツッコむ私。

「どうもいままでありがとうございました。最後にフジハラさんの方からご挨拶を・・・」

 あーはいはい・・・と喋り始めたのですが。実はこの場で何を喋ったのか、今思い返してみても、全く記憶が残っておりません。疲労ピークでしたし。立ってるのも辛かったですし。ありがとうございましたー頑張ってくださいー。そんな感じだったのではなかろーか。

 先程喫煙室で話ゴマカしてた人が「ゑ?」てな感じでポカーンと呆け面してましたね。印象に残ってたのはそれ位。もはや後フォローに行く気も失せてました。まぁいいや。

 んでそのまま拍手と共にミーティングが終わった後、サブリーダーさんに促されるままに、改めてリーダーさんにご挨拶することに。

 んー。この人とはもう顔も合わせたくなかったんだけどね。この際開き直って大人の態度で行きますか。今までお世話になりましたありがとうございます。

「いえいえ、こちらこそどうもありがとうございました。お体の方、ゆっくり治してください。」

 あ、大人の反応だ。向こうは向こうで私のこと刺し殺したい程に怒り覚えてるのは間違いないのに。

 申し訳ありません。今後のことはよろしくお願いします。

 自然に出ましたな。この言葉は。

 PM6:30。

 全部終わった。挨拶も終わった。入館証も偽装用名刺も全部返した。

 んじゃさよーならー。お元気でー。

 すべてを終え、オフィスを後にする私。

 振り返らない。何かから逃げるように足早に、とても病人とは思えないような速度で歩き続ける私。

 映画じゃねぇんだ浸るな俺。

 さて、これでとうとう待ち望んだ終わりがやってきて・・・・・ないんだな。送別会があったんだ。

 実はこれも私が望んだ話ではなくて。先程の事情知ってるメンバーさんが勝手にでっち上げたものなんですな。本来であればお断りしてもよかったんですけど、私云々以前にその場のストレス溜まりまくり&発散のしどころを求める空気に圧倒されて、断り切ることができんかったんですわ。

 大体だなぁ、「昨日いきなり話上がったばかりなのにすごいですよ!全員出席ですよ!『意地でも行きます』ですって!」なんて言われてみろっ。断れるかっ。

 まぁ人望がどうこう言うよりは、おそらく飲んでストレス発散したいからだろうね。毎日終電、休日返上、日々増大する過度なプレッシャー。これじゃあおそらく今のプロジェによって抱え込んでるストレスは私以上のものだろうし。

 仕方ありませんかぁ。座って呆けてればいいや。後から他のメンバーさんも追っかけてくるはずだし、先に行って待ってましょーかねぇ。

 PM7:40。

「遅いですよー何やってたんすかー」
「もう始めてますよー」

 すまんすまん。まさか時間潰しのために入った喫茶店で私自身が潰れるとは思ってなかったんで。携帯に電話なかったら今でもそのまま寝てたよ、とは言わずにこそこそと席に座ります。とことん綱渡りな体力勝負。

「んじゃ改めてかんぱーい」
「おつかれさまでしたー」

 皆さん既に結構なペースで飲み進める。んじゃとりあえずいつものようにウーロン茶ねー。うーいありがとー。

 ・・・・・・・飲めねぇ。一口が精一杯。

 えっと食べ物は、付け出しにサラダに手羽先焼き鳥・・・。

 ・・・・・・・食えねぇ。箸持つ気力さえ起こらん。

 仕方ないので飲まず食わずのままボーッと呆ける私でございますわ。みんな見ておけ、俺の生き様を。これが最後まで闘った漢の成れの果てよ。真似しろとは言わん。だが何か伝わる物がある筈だ。それを感じておけ。俺の姿を脳裏に焼き付け・・・

 ・・・てねーじゃん。食ってるし。飲んでるし。俺いなくてもいいし。いや、そっちの方が気楽なんで嬉しいんですけどね。そんな感じで進む宴。

 それでもこの場所において「デスマーチ」及び「それに潰れた私」ってのは格好の酒の肴。結構な勢いで質問が飛んできます。差し障りのない範囲内で答えておく私。いや、全開にするには既に体力無さ過ぎるし。「詳しくは「ピープルウェア」読んでおけ」で逃げておきました。実際この本には私の言いたいこと以上のことが書いてあるし。

 基本的には今回の面子、私より経験年度が少なくて、かつ今回が初めてのデスマという方が多かったんですが。それでもその人なりに「今の空気がヤバい」というのは皮膚感覚として感じてるんじゃないかな、というのがやりとりを聞いてて思った印象でした。じゃあ後はどのように回避させていくか、または生き延びていくか、てのが今後のテーマになるんじゃないかな。実際回避できないからこそのデスマであって、じゃあこの後好転させる可能性は甚だ低いとしか言えないんだけど・・・ここでも沸き上がるのは罪悪感。

 こればっかりは仕方がない。割り切って振り払うしかないです。私は「逃げる」という選択肢を取った。みんなは現時点ではという条件付きながら「残る」という選択肢を取った。これだけの差なんだと思います。こうゆう状況だからこそ学べるものもあるでしょうし。反面教師としては得られるものも沢山あると思います。

 健闘を祈ります。死なない範囲内でがんばってください。

 PM11:00。

 宴も終わり。酒が進んでからは仕事の話は無意識のうちに避けられてたような気もします。まぁいっか多少みんなもスッキリしたような雰囲気もあるし。

 そのまま方々に散らばる形で解散。最後は同プロジェクトかつ自社の後輩さんと高蔵寺駅までご一緒。もうカラダが訳わからず麻痺してる状態だったので、ポロッといくつか本音喋ってしまってたかもしれません。覚えてないんで。酒も飲んでないのに。

 でもまぁいずれ文章にすることばかりなんだろうから、問題はなかんべ。

 その後輩さんとも駅で別れ。姿見えなくなるのを確認してから、そのままベンチに倒れ込み休息。ここから自宅まで車で帰る必要があったのですが、とてもじゃないけど運転できる状態じゃなかったです。最後普通に歩けてるフリをしたのは最後の意地でした。倒れ込むリアルな姿だけは見せたくなかったんで。

 目の前のコンビニでペットボトルのカフェオレ買って。一口だけ飲み干して。再度ベンチに転がって。なーんにも考えず、ボーッとしてました。

 先のこと?そんなことはわかりません。

 前のこと?後悔してたらキリがありません。

 ただ。「今度こそ終わったんだな」と噛みしめるために。

 やらなきゃいけない、必要な儀式だったんだと思います。

 

 ここでこの日の記憶は完全に途切れます。次に気が付いたのは次の日のPM4:10。自宅のベッドの上でした。車もありましたんで、どうにかして自力で帰ってこれたんだと思います。どうやって帰ったのかは覚えてません。

 あぁ、もうちょっとしたら病院行かないとなぁ、と思いつつもベッドの上に寝っ転がりながらまず最初に浮かんだのは「今この時間も、昨日飲んでたあの連中は仕事してんだよな。年末年始返上で」ということでした。

 沈む船に連中を残して逃げてきた、というこの一点のみにおいて、それから今を持ってもまだ、この罪悪感が事ある度に脳裏をかすめます。おかしいもんですよね。逃げることを常日頃から信条としてたはずなのに。

 振り切らなきゃいけない、とは思ってるんですけど。結局は一人一人で判断しなきゃいけないことだ、と頭の中では割り切ろうとしてるんですけど。

 どうしても。これだけが気がかりなんです。


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