別離会談全顛末
はじめにおことわり。今回も無駄に長いです。気合い入れて読んでください。だからどんなんだよそれ。
そしてあといっこ。これ「雑文」だからね。
あれはちょうど一回目の体調限界がやってきたとき(ちょうどこれを書いた時)でしたか。心臓痛と目眩のコンビネーションでボロボロになりながらベッドの上で考えていたのは、今のプロジェクトの現状、というよりは惨状についてでした。
どうやったらデスマーチを回避できるのか。とりあえず今のままでは絶対にダメだ。なんとかしなきゃ。なんとか・・・・・・とか、考えていたかどうかはわかりません。なにせうなされてましたんで。意識もほぼ無きに等しい状態です。
ぼけーっとしたままキーボード叩いて。気が付いた時には既に一通のメールを送信した後でした。
これが想像していた規模以上の爆弾となり、己の身にも降りかかることになるとは、その時には露にも思ってはいませんでした。
次の日。なんとか体起こせるようになりました。実際の所はまだ立つのがやっと、という状態だったんですが、2日間穴を開けていたこともあり、進捗は既にかなりヤバヤバ。一瞬迷いはしましたが、それでも出勤することにしました。
「おはようございますー」
「おはやーす」いつものように目線を併せないままの挨拶を交わしつつ、ちらっと左斜め前遠方を眺めます。
いない。会議か何かなんだろうな。会議するのが仕事のような人だから。まぁそのためにもメールにしたんだし。その内向こうから動いてくるでしょ。そのまま午前中は、追い立てられるように溜まってたタスクの消化に躍起になってました。
そしてお昼を過ぎ、午後になって自分の出したメールの記憶も、今日のタスクに潰されかかってきた、そんな時。とことこと一人の男性が私の所に近づいてきました。
「・・・・例の件で話が。ちょっと会議室に来てもらえますか。ここではなんですので。」
来ましたか。促されるままに席を立ち、後を付いていきます。会議室に向かうまでの1、2分が何故か何十分、何時間のように感じました。
さて。それじゃここらで私が前日、どんなメールを送ったのか説明しておきましょうか。送り先は今現在燃えさかっているプロジェクトを統括しているリーダーさん。K氏、と表記させて頂きましょうか。
で、送ったメールはこんな感じ。以下全文。
(前文省略)昨日、今日と寝床でずーっと考えてたんですが。お願いがありまして。単刀直入に言います。
- 毎日の帰宅の際、リーダーの許可が無い限り限り帰宅してはならない
- 土日や年末年始出勤の実質的な強制
この2点を速やかに取り下げて欲しいです。
現在のプロジェクトの進捗や成果度の現実から見れば、縛りを強くしたいという気持ちにはある程度の理解は示しますが。それでも私にとってこれは致命傷です。体持ちません。体力的にも精神的にも、絶対に無理です。
進捗をこまめにトラッキングかけることに関してはそれ自身が業務の妨げにならない限り特に異論はありません。でも、それと帰宅や休日までを制限して作業を強制することとは話は別だと思います。
それをやられると極限無くやる気なくなるんですよ。
私に限った話ではなくプロジェクト全体として、この方法では「今よりも悪くなりかねない」という疑念を抱いてます。実際、私はそうゆう目で見てます。
という訳で、申し訳ありませんが今後のこともありますので再考して頂けませんでしょうか。よろしくお願いします。
はーい言われる前に自分で言っておきまーす。ぼろぼろでーす。なんつー幼稚な文章じゃ。それでも雑文書きか俺。まぁ確かに意識がほぼ無い状態で書いたから推敲も何もあったもんじゃない、という言い訳はあるのですが。それにしてもひど過ぎる。少なくとも相手に伝えるための文章じゃないよな、これ。
まぁ本来であれば部分引用、または要約でもよかったのかもしれませんが。その時の緊迫感を伝えるためにはこの方がいいだろう、ということで全文引用させて頂きました。これより後の文章に関してはこのメールを頭に置いた上で、お読みください。
さて、会議室に座りました。当然のことですが部屋には私とK氏しかいません。
ちょこまかとイスのひとつに腰掛ける私。K氏は座りません。
そして開口一番。あらん限りの罵声が突如部屋を支配しました。
「何甘えたこと言ってんだ馬鹿野郎!!」
そして静寂。ピーンとした空気が張りつめます。
やはりこうゆう反応が来ましたか。まぁ当然と言えば当然ですが。まぁ端的に表現するならば、脅すヤクザと脅されるカモ。こんな感じ。
とはいえ、今を思うと不思議なんですけど、一歩も引く気にはなれなかったですね。恐怖心とかも無かった。ほぼ平常心保ってました。心拍数も若干上がってる位でブロックの発作とかに比べれば何ともない。開き直るってのはこうゆうことを言うのかもしれません。
K氏が再び口を開きます。
「今回こうゆう方針で行くってことは既に会社として決まったことなんだよ!もはや一人がどうこう言ったからどうなるという問題じゃないんだよ!」
「大体だな。メール全般に渡ってプロジェクトがどうのこうのとか偉そうに講釈ぶってるけど。じゃあ会社の代わりにお前が優秀な人材雇ってくるとでも言うのか?それとも遅れた時の何億もの賠償金、お前が会社の代わりに払うとでも言うのか?」
完全に頭沸騰しちゃってる。口挟む暇もありませんな。ちょっと煽り過ぎちゃったかぁ?やっぱり文章ってのはよぉく推敲しなきゃダメなのねぇ。反省。ってそんなこたどうでもよくって。
「え?どうなんだ?」
顔近づけて問いつめてきます。まさにヤクザの詰問そのまんま。
まっとうに答え返すんなら「知ったことかコラ!そんなことやれとは契約のどこにも書いてねぇよ!」で終わりなんだが。まぁここは普通に答えておきましょうか。
「できませんねぇ。」
「だろうが。そんな権限も無ぇクセにいちいち口挟んでくるんじゃねぇよ!テメェにそんなこと言う資格なんか無ぇんだよ。言うんだったら代案なり金なり人なり持ってきてから言えってんだ!馬鹿野郎が!」
カッチーン!
売り言葉に買い言葉とはまさにこのことですかな。おいおい仮にも上に立つ奴がそれいきなり切り出したらオシマイだろーが。いきなり核スイッチ押すよーなもんじゃん。これ聞いた瞬間、手短に頭蓋骨カチ割れる凶器が無いか探しそうになりました。やんなかったけど。当たり前だ。つーかそもそもそんな根性自体無いのに無理に凶悪的な文章使うのヤメレ>俺。
こりゃ今ヘタに言いつくろってもムダ。ましてやケンカ買っても何も得るもの無し。消極的だけどダンマリ決め込むしかねーな。そのまま30秒無言を貫く私。
しばらくその様子を眺めていたK氏、「いける」と踏んだのでしょうか。更に畳みかけてきます。
「それで。次にメールの冒頭なんだけど。お前間違ってる。許可無い限り帰るなとか、正月返上しろとか。そんなこた俺は一言も言ってねぇ!何聞いてたんだお前は!」
うーん、そろそろこっちも何かしら言っておかなきゃ雰囲気に飲まれるな。言い方難しいけどなぁ。更に煽らない範囲内で反論してみましょうか。
「いや、言いましたね。あの時のミーティングで。全員の前で。」
「断言してねぇよ!『遅れがある場合はそこを使って挽回してください』というあくまでお願い。なんで強制しなきゃならねぇんだよ!そんなことできる訳ないだろ!人の話聞いてたのか!?勝手に判断して思いこんでるんじゃねぇよ馬鹿野郎!」
そうか?あん時の口調や切り出し方からはそうゆう文脈にしか読みとれなかったぞ?・・・こりゃこのまま言った言わないの水掛け論になりかねんなぁ。私が言いたいのはそんなことではないんだが。
「という訳で。まずはこの『俺が言った』ということを取り消せ。それでないと話にもならん。」
あかん。この部分に関しては完全に固執してる。埒あかなくなるのが目に見えてる。仕方ない、じゃあちょっと切り込んでみましょうか。
「じゃあ。言わなかった。これでもいいでしょう。でもね。実際の所は言った言わなかったよりも、既にプロジェクトのメンバーが「強制された」と思っている、ここの方に問題点があるんじゃないです?大体。現に私が昨日一昨日倒れたのも間違いなく今回の負荷が原因ですよ?」
「こんな負荷でやってたら間違いなく私の次、その次が出るんじゃないです?ていうか誰だってぶっ倒れますよこんなもん。それでいいと思ってるんです?」
うし。我ながらいい切り返しだ。今回の騒動の根本だしね。と、心の中でガッツポーズ、してたんですけど。
打ち砕かれましたね。完璧に。
「何言ってんだお前は?」
・・・・・・え?
余りにも予想とかけ離れた返答に思わずキョトンとしてしまう私。
「10時11時で帰りが遅い?そんな奴SEじゃねぇよ。土日出勤?休日返上?そんなん当たり前だろ。日本中探してみろ。そんな奴この業界にいるか!?その程度で潰れるヤツなんざ、はなからSE名乗る資格無ぇよ!」
茫然自失。
「そもそも一度やるって引き受けたんだから、倒れようが血吐こうがやり遂げるのは当たり前だろ!テメェらが原因でプロジェクトがこんなことになっちゃったんだろ?だったらテメェらで命削ってでも挽回する。当たり前だろ?何が違う?間違ったこと言ってるか俺?」
・・・・・・間違ってるね。1から10まで全部間違ってる。
各人が遅れを生じさせた理由は個々に散在してる。それもいっこいっこは普段気にもかけないような、細かい気付かれない小さなものよ。でもそれらをないがしろにしてた結果が今のプロジェクトの惨状なんでしょ?それは各人がちょっと視点を変えて気付くだけで十分にリカバリーできたはずよ。そしてこれからも、改善していくためには地道にその問題を取り除いていくしかないんじゃないの?それやらない限り、人増やそうがプレッシャーかけようが一向に状況が変わることはないよ。
ついでに言っておくと、ここで今修羅場ってる人間に「作れ」を拒否する権限は事実上存在しないんよ。たとえそれが明らかに無駄で間違っていたとしても。拒否するという自体が既にタブーと化しちゃってる。
こうゆう問題を見つける余裕さえ許さない状況にまで、プロジェクトを追い込んでしまったのは。
「とにかく作れ」の空気を完成させてしまった全員の責任じゃないの?もちろん私も。あんたもね。
あんたの言ってる「作れ」と実作業者の思ってる「作れ」の意味の違いを理解してる?ちょっとでも理解できるんだったら、間違ってもそんな物の言い方できないはずだぞ?お前こそ誰に向かって口聞いてんだ?所詮リーダー如きで天下取ったつもりか?それ別のところで言ってみろよ。お前その場で刺されるぞ?なんなら俺がこの場で刺してやろうか?本当にわかってて言ってんのか?
・・・・・・という反論&煽りが、即座に脳裏に浮かびました。言おうと思いました・・・・・けど。言えませんでした。言葉を飲み込んでしまいましたね。ごめんな、期待に添えなくて。
この時点で、残念ながら「もう言っても無駄だ」と思っちゃったんですな。諦めちゃった。私は貴方に妥協できないし、貴方は私に妥協できない。この時点で悟ったのは、3秒でわかるような当たり前の事実関係だけでした。
貴方が作ろうとする世界に私は必要無いし、私が作ろうとする世界には貴方は存在してはいけません。こうなった以上あとはその判断に従ってそれぞれ動くだけしょう。
そう思った瞬間、ふっと魂が抜けちゃいましたね。自分の考えも相手の考えもすべて吐き尽くしたような。もう戻ることはできない、そんな恐怖心。そして不思議な安心感。
・・・・・・さて。
じゃあこれで交渉決裂ですね、と。私は態度変える気全くありませんので、自社にチクるなり、出入り禁止にするなり、どーぞ好きにしてくださいな。なーんも異論は申しませんので。んじゃ後はよろしくぅ、と会話打ち切ろうとしたんですけど。
終わらなかったんですな実は。なんか私の言動や態度がどうやらK氏の加速装置作動させちゃったみたいで。
一向に話が終わりません。そりゃあもう延々と。
向こうは向こうで吐いてしまいたい毒が相当あったみたいで。以下10分位ですか。延々と己の毒吐きまくりモードに突入しちゃいました。こちとら既に聞いてもいないのに。仕方ないので私もタバコに火をつけ足組んで傍聴モード。いいよねここ会議室だけど。それが仮にも契約先の客前で取る態度かよ俺。
そうして流しておいたら、しまいにゃ愚痴り始めました。
「言っておくけど何も作業者だけに負担かけてる訳じゃないぞ。メンバー(約40人)の中で一番最初に来て一番最後に帰るのは誰だ?」
目の前の人間に指を差す私。つーかあんたのここんとこの作業量も異常だって。倒れるぞ。既に倒れた私が言ってんだから。明日は我が身だぞ。
「だろ?俺だって責任は感じてるよ。だから今こうやってるんじゃねぇか。これまでのスケジュールすらろくに成立してない状態を、こうやってなんとか線引けるようにしてやったんじゃねーの?憎まれるどころか感謝されてナンボのもんだぞ。」
いやそのひいたスケジュールも1週間で使い物にならなくなるけどね・・・まぁ確かにこれまでが酷すぎたってことに関しては認めましょう。わすもそう思う。
「まぁ、これやることで嫌われるのはわかってるんだけどね・・・」
あ、弱気が出たな・・・。やっぱり自分を悪者にして立て直すつもりだったか。
この辺に、特に大規模プロジェクトの上に立つ者の苦悩が見て取れるような気がしましたね。そりゃ誰だって楽しく和気あいあいとやれるならばそれがいいに決まってるんだし。実際私はあくまでその理想を目指そうとしてる訳だし。ひょっとしたらK氏も、ね。それでも会社としての利益を貴方は優先しましたと。私は自分の感情を優先しましたと。だからこうやって破局したっつーことになるんじゃないですかね?
ちなみにこれらの感想はもちろんその場では言いません。黙って聞いてました。まぁもっとも口挟むこともできなかったですけどねぇ。加速装置オーバーヒートしてましたから。
でもここまで聞いて、やっと「文句メール出したことに対する後悔」の感情は消えましたかな。たった一通のメールでここまでの感情の吐露を引き出せたってのは収穫だったと思いますし。
なんか不思議なもんで。それがわかっただけでもこのガチンコ、意味あったのかもなぁ。これやってなかったら今後、K氏を生涯の仮想敵として生きていくことになってたかもしれませんから。ストーカーじゃあるめぇし。そんなウゼェもんは己の雑文だけで十分だ。
「じゃあ最後に。貴方の件に話戻るけど。」
あ、はいはい・・・・・まだ終わってなかったんですね?
「で、ぶっちゃけた話どうなのよ?契約何月まで?」
・・・やはり知ってましたか。
「来月(03年1月)までですね。そこでサヨウナラ、です。」
「普通にやったとしてもあと1ヶ月あればここ離れることはできるけど・・・それまで体持ちそう?」
「無理ですね。ぶっちゃけ限界です。」
考えることなく即答。
「わかりました・・・やっぱ交代、しかないなぁ。今の時期代わりの人材なんていないんだけどな・・・・仕方ない。時期に関してはできるだけ早くということで話進めておきますので。」
「・・・すいません。宜しくお願いします。」
「じゃ、そうゆうことで。以上よろしく」
「ありがとうございました」
以上、私の今回一連すべてのきっかけとなりました会談の全記録でございます。この1週間後、「前例が無い」とまで言われた異例のスピードでのプロジェクト離脱、そして退職へと繋がっていくと。明言はされてませんけど事実上の出入り禁止みたいなもんです。
でもまぁそのおかげで無事静養に突入できて、今こうしてキーボードを叩けている訳ですから「これでよかった」ということになるんだと思います。
今回のデスマ通じて痛感させられた教訓。「命あってナンボ」。
と、ゆー訳で。
いやー長かった。すんませんここまで付き合って頂きまして。今回の文章に関して言えば、いつも以上に「他人に伝える」よりも「自分の中でまとめる」作業の方に重点に置かせて頂きました。そのため、文章としては読ませるに値しない表現とかも随時散りばめられておりますが。LIVE感重視ということで流して頂ければ幸いです。何なんだLIVE感って。
実際どうしてもこのネタは書いておきたかったしね。これを書くことの是非も含めて、これから何が得られるかとかの判断は読み手の皆様にお任せ致しますです。
さぁて、これでやっと自分の中でも一区切りつけられた、という感じですかーね。かなりスッキリ。無論、まだ書き切ってないネタとかは今後骨をしゃぶるが如く書き足していくことにはなると思いますが。それでも幾分は客観的にネタとして提供できるでせう。まぁその辺はいつも通り気長にお待ちくださいな、つーことで。
んじゃじっくり休みつつ、職探しますかー。