作業時間を疑え
HDDの整理してましたら、辞めた会社に提出していた作業時間表(要はタイムカード)のファイルが出てきまして。
最近になってよーやくこうゆうモノも冷静に見られるようになってきましたので、しばし眺めていたのですが。
「デスマで会社辞めたよ」となりますと、さぞかし作業時間もものすごいことになってたんだろうなぁ、と皆さんお思いかもしれませんが。
実はこんな感じになってました。
2002年10月:163:20(180:00)
2002年11月:166:30(184:00)
2002年12月:157:20(174:30)(ちなみに左側の時間が会社に提出してた時間。カッコ内が現実に働いてた時間です。世間的に言うところのサービス残業ですな。逆を言うと社内・社外諸々の決まりを守るために、このカッコ内時間から申告値を逆算して提出してた訳。まぁこの辺のところは改めてネタにします。)
あれ?こんなもんだっけ?と皆さん思われるかもしれませんな。うん、私も思った。
この業界(という言い方もヘンですけど)、月300時間当たり前。400時間で一人前、500時間で偉業達成、なんてキチガイ沙汰な論語が平気で上司の口から飛び出してくる世界ですから。こうゆう輩を一刻も早く射殺しない限り、永遠にデジタルドカタ扱いから抜け出せないんだけどな。
そっから考えればこんな労働時間、一人前どころか半人前未満じゃねぇか、とお思いの方もいるかもしれません。ちょっとこの辺のところ説明しておきましょうか。
まず10月11月が普通なのは、この時点ではまだ爆発する前(もちろん潜在要因は山積)でしたから、帰りたいときは定時でも平気で帰ってました。無論プロジェクトの他の人はこの時点で既に終電帰りが当たり前になってる状態でしたけど。とりあえずまだ逆らうことができたというだけの話です。
そして12月なんですが。事実上帰宅までもが制限されていたにも関わらず、作業時間だけから見れば11月よりも少ないと。この辺のカラクリをちょっと追ってみようかなと。
話を見えるようにするために、12月分を週単位に分割してみました。こんな感じになります。
第1週 41:50(46:00) 実働5.0日
第2週 48:50(55:00) 実働5.0日
第3週 30:00(33:30) 実働2.5日
第4週 36:40(40:00) 実働4.0日第1週はそこそこの値におさまってますね。この週の時には既に各所で爆発は起こってましたが、確かそれにキレて帰っちゃったんだと思います。
一方、第2週は典型的な地獄状態です。毎日終電。ただそれでもこの時点で既に体壊れる予兆みたいなのを感じてましたから、土日は蔑みと罵声を浴びつつも無理矢理休んでました。結果、爆発的な数字にはなってません。それこそ徹夜や休出が入れば週60〜70時間位にはなってたでしょう(事実そうゆう人もいました、詳しくは後述)。
それで第3週。ぶっ倒れます。ちょうどこれ書いた頃ですな。1回目のダウンで会社休んだ関係で、時間に関してはガクンと落ち込んでます。出勤したのも2日と半分ですからね。そりゃあこれ位までは落ちるだろうと。
つまり、たった2週間で体が壊れちゃったんですな。当時の文章が物語るように、体力的にはもちろん、精神的にもボロボロの状態。
そして第4週。この時点で契約解除が決定しましたので、作業時間も落ち着いています。そんでも4日で40時間ってのはどうよ、という感じですが。この後本格的にダウン、そして退職へと繋がっていったのは既にご承知の通り。
こうゆう諸々の諸事情があってのこの数字なんですよね。ですので退職交渉する際にもこの点は詰問されました。「実際200も超えてないのになんでそんなになっちゃったのよ」「倒れるような数字じゃないよ」といった感じで。まぁこの点に関しては個人差ですから、としか言いようがないです。たとえ今の記憶を持ち合わせたまま2002年12月に逆戻りしたとしても、おそらく同じ位の時間で倒れてたと思いますから。こればかりはどーしよーもないべ。生まれもってのものだし。これがわすの限界だっつーのごほごほごほ。
ですが。かといってこれを私個人の話として終わらせる訳にはいかないんですよ。私はたまたま体壊れるという外部要因(?)があったから、この時間に抑えることができた、とも言える訳で。
ちょっと興味あったんで、作業時間表コピーして、当時のプロジェクトで他の人がどれくらい働いてたことになるのか、ちょっと推測してみました。
当時見聞きした環境から察するに、
- 平日は例外無く終電まで
- 休日は月2日のみ、定時帰り
という状況でしたから、それに伴う形で計算してみると・・・
第1週 63:30(71:00) 実働6.0日
第2週 63:30(71:00) 実働6.0日
第3週 69:40(78:00) 実働7.0日
第4週 69:40(78:00) 実働7.0日
合計 264:20(296:00)これが推測としての最低ライン。実際にはここに終電超えての徹夜や早出、年末年始休暇の完全返上等も加わるはずですので、この数値に30〜40時間はプラスしたとすると、おそらく300時間は軽く超えて、350時間に手が届くか届かないかというところまで行くでしょう。更に人によっては片道2時間の通勤時間とかプロジェクト以外での管理仕事とかも加味される訳ですから、もはや人としての基本的人権すらも危うい状況。ていうか奴隷同然。
狂ってますね。
もし体壊してなかったら、私もこれだけやらなきゃいけなかったってことだよなぁ・・・と思ったら背筋凍りましたよ。今となっては現在このプロジェクトのメンバーがどうなったのかを知る術は全くありませんが、物理的な死人が出ていないことを祈るばかりです。マジで。
さてさて。それでこっからさらに考えを加速させてみたいのですが。
こうやって自分の実体験と他人の推測とを重ねてみると、思ってた以上に月単位での合算された作業時間ってアテにならないもんだなぁ、というのを強く思ったりします。
現におそらく辞めた会社やプロジェクトから見れば私は「200時間如きで倒れやがった役立たずの軟弱者」という存在だったんではないかと。世間的にもそう評価する個人(特に管理者)や組織ってのが大多数を占めると思いますしね。
さらに言えば、他の人の推測例のように、月単位から見ても異常、となってる場合。もはや転移しまくりの癌細胞のように、あとは体を蝕んで蝕んであとは死ぬのを待つだけ、の状態になっちゃってるんじゃないのかなと。そんな考えさえ浮かんでくるんですな。どうりで脳ミソ筋肉の体力バカが我が物顔で闊歩してる訳ですわ。やっぱ射殺だな。もぉええって。
つー訳で私としては改めて自衛を呼びかけたいです。ていうかだな、いいかげん月時間だけであーだこーだ言うのやめれ。過程を見ろ。原因を探れって。とりあえずこれ読んだ方は、まず自分のタイムカード眺めつつ、一度冷静に回顧してみることをお勧めしますよ。
それに、過去を遡って状況を把握するためには、上の例でも使った「週単位」がせいぜいの限界だと思うんですけどね。この週はこの作業した、こんな事があったからこれだけの作業時間になった。ここを把握していかなきゃ、いつまでたってもやれ300だ350だといった戯言からは抜けきれないと思うぞ。
最近私が傾倒しているeXtreme Programmingには「週40時間労働(40-hour Week)」というプラクティスが存在(*)してまして。私もこれを強烈に支持してるんですが。本気でかつ集中して仕事した場合に、人間が体力的/精神的に耐えられる作業時間なんてのはどう高く見ても1日8時間が限界、それ以上やっても効率落ちるかミスしてやり直しにするのがオチじゃねぇか、だったらそんな無駄なことやってんじゃねーよクズが(語感は意訳)という主張に心の底から共感する、というのがあるんですな。
((*)XPの改訂版では「最適ペース(Sustainable Pace)」と置き換えられてますけど。アメちゃんのことはともかくとして、こと日本においては「週40時間労働」の方が強烈かつ挑戦的でプラクティスとしても効果があると思ってるので、私はこのまま使います(笑))
さらにここにピープルウェアの概念もブチ込むならば。集中して作業した場合、その集中した時間に見合う休息時間(=無業時間)が必ず人間には必要なんだから。常に全力疾走しろ?馬車馬の如く働け?終電なんて当たり前?休日返上しろ?できるかボケ!寝言は寝て言えっつーの!そんなんで体持つ訳ねーだろ馬鹿が!
その無駄に長い作業時間は本当に必要なものなんかえ?数多の時間を犠牲にすることで、何かを得ようとはしてても、実は何も得てないんじゃないの?単に時間ドブにドカドカと放り投げてるだけなんじゃないの?
本来そっから考えていかなきゃいけないんじゃねーの?
狂ってるよこのまんまじゃさ。