退職有効度検討会議
あーあー。マイクチェックマイクチェックちぇっきらー。
大丈夫ですね。それではこれより会議の方を始めさせて頂きたいと思います。本日は皆様お忙しい中お疲れ様です。
さて、今回の議題なのですが「退職後の生活における様々な影響」ということで、今回お集まりの皆様に各視点からの影響・変化を調査して頂きました。本日は各々これらを発表して頂き、結論を導いていこうかと考えております。
まずは今回の被験者に関して改めておさらいしておきましょうか。愛知県春日井市在住のFジハラHロキさん。30歳。デスマーチによる過労の為平成15年1月をもって某ソフトウェア会社を退職。以降自宅療養しつつ現在に至る・・ですね。
「あのー。その中途半端な伏せ字なんとかなりませんか?」
まぁ一応プライバシー保持ということで。特に気にしないでください。それでは順番に発表の方お願いできますか?
「ではまず私の方から。『体の健康』ということで、被験者の健康状態をチェックしてきました。まずはこちらの方をご覧下さい。
体の健康
12月 1
1月 3
2月 5
3月 7
4月 6
「評価方法ですが、約3ヶ月+直前1ヶ月の観察結果を最低1、最高10の10段階評価にて表しています。以降他項目に関しても同様の評価方法を使用させて頂いておりますのでお願いします。」
はい了解です。それではその評価理由を。
「まず、去年ですが、担当医から入院の打診もあった位なので、死人一歩手前の状況と言っていいでしょう。そこから自宅療養に入る訳ですが、ゆるやかながらも堅実に復調しているということが言えると思います。現在では通常の業務であれば問題なくこなせるでしょうね。そうゆう意味では退職して休んだということに関しては一定の効果が現れたと推測出来ます。」
4月になって評価が落ちてる原因は?
「まず現在治療中の歯が痛んでいるということ、これに伴い適正な運動ができないことにより体重・血圧がリバウンドしつつあるということ。そして最後に、最近になって不眠・睡眠リズム障害的な症状が現れてることによる低下ですね。」
「あ、それに関しては僕の方からも言及させてください。」
あ、それじゃどうぞ。お任せします。
「僕の方なんですが、『心の健康』について調査しておりました。まずはこちらをご覧ください。」
心の健康
12月 1
1月 2
2月 4
3月 6
4月 6
「デスマーチによる心身疲労からその回復、に関しては体の方の回復とシンクロしてると言っていいです。ただ、3月、4月となるにつれ、回復状況が頭打ちになってるんです。原因に関してはこの後の報告を待ちたいと思うんですが、退職したまま再就職していない、とかの心理的要因が回復を押しとどめてる、ということがあるかもしれません。夜眠れないことに関しても、純粋に体が疲れていないということ以外にも、ベッドに入ってからあれやこれやと考えこんでしまうなんてことも増えてきてるようです。」
何を考え込んでるんでしょうねぇ?世間への体裁?再就職の現実?
「をいかに雑文に落とし込むかで悩んでるみたいですよ。」
ほっとけやそんなもん・・・・こほん、失礼。えっと、じゃあ次行きましょうか。
「はーい。私の方なんですけどー。『社会復帰願望』とかということでー。よくわかんないけど調べてみましたー」
いや、わかんないけどじゃ困るんですが。
「えーと。部下にやってもらっちゃったからー。なんでも、再就職なり独立なりで、ちゃんと働く意志を持ってるかという意味らしいですー。こんな感じー」
社会復帰願望
12月 5
1月 1
2月 2
3月 4
4月 6
「体や心がゼロもしくはマイナスからスタートしているのに対してぇ、こちらは実際に退職してから数字がガクンと落ち込んでるのが特徴的だって言ってましたー。」
誰が?
「田中くんー」
・・・・・・えっと。続けて。
「それでー。実際の転職活動の方は3月から始めましてー。一旦はここで決まりかけてたらしいんですけどー。それがポシャっちゃいましてー。4月から改めて探し始めてるそうですー。それでも評価が振り切れないのはヘタに休養に慣れちゃったからエンジン上がらないからじゃないのかなー。と言ってましたー」
田中くんが?
「はいー」
・・・・ありがとう。お礼言っておいて。んでは次。
「はい」
趣味娯楽の充実度
12月 1
1月 4
2月 9
3月 8
4月 6
「仕事がすべての去年は当然最低評価。1月も事実上体動きませんでしたから評価は低め。2月・3月に関しては非常に充実していたようですね。ただ4月に入ってからはどうも何をやってものめりこめない空気を感じているようです。マイナス面に関しては体や心と見事に一致してますね。趣味娯楽の場合心理的に持っているゆとりが大きく影響しますから、仕事が決まってない現在に遊び呆けていても満足できないのは納得のいくところですね。以上です。」
あ、ありがとう。手短にまとめてくれて。
「バランスを取ってみました。」
「なんのー?」次っ。次っ。
「ほんじゃ最後行きまっかー。『金銭的余裕』っつーことでー。」
最後に出てきたな飛び道具。
「やかましい。まぁこちらは預金通帳の残高いきなり出してしまってもいいんやけど、それじゃリアルでひいちゃうんで評価に反映させときましたわ」
金銭的余裕
12月 9
1月 9
2月 7
3月 6
4月 5
「基本的には一応身分わきまえてるよーで。贅沢品には手出してませんなー。せいぜい2月の旅行と、その頃ハマってたメダルゲーム位。ただ、言わんでもわかるよーに、今無収入だから。事実上最後の給料や積み残しのボーナス、わずかばかりの退職金で食いつないでるのが現状ですな。今のままもし職が決まらないと・・・」
と?
「7月頃にはキレイさっぱり、オケラさんになるのが確実ですわ。ちなみにもし名古屋以外に就職となった場合、5月までに決まらないと引っ越し費用が捻出できませーん。まぁ一応トラの子としての失業保険という手は残ってるけど、なんだかんだ言いつつも結構切羽詰まってますなーワヤですわ。ま、体がどーの心がどーの言うても、結局は先立つモンがないとどうにもならんっちゅーことですなー」
なるほどね。あ、君の大阪弁全然ダメだから学習し直してくるように。
皆さんご報告ありがとうございました。それでこれらを全部聞いてみた上で、改めて気付く点とかありますでしょうか?
「まず私としては『退職休暇は2ヶ月が適度』説を提唱してみたいですね。じっくり体直すもよし、趣味に没頭するもよし。金銭的や心理的負担を深く考えることなく、休みに没頭できるのは2ヶ月位が一番適度ではないかと思います」
「これ以上長いと『決まらない不安』てのがどうしても出てきますし。」
「死ぬほど貯金してるとか、思う存分パラサイトできるんなら話は別なんだろうけどなー。普通の稼ぎだったらこの辺が限界やなー。」
あとは?
「んー。まぁ今回の被験者の場合は『退職に後悔はない』と言い切ってますからなんとも言えないんですけど。今回の2ヶ月ってのがひとつの目安としますと、これ位の期間なら無給の休職でも、いろいろ考え直してリフレッシュするには十分な期間であるとも言えるような気がしますねー」
「逆を言えば2ヶ月程度の休職すらも渋るような会社でしたら、きっぱりと決別するのも手かも知れません」
「退職でも休職でもどっちでもいいけどー。死ぬ寸前とかじゃない限りはどっちがいいか考えるのもいいかもー。」
と田中くんが言ったの?
「ううん私ー」
えらい。
まぁ大体こんな感じになりますか。せっかく被験者が体張って導き出した事例ですので。有効に生かしていくことにしましょう。後は議事録とその公開の方よろしくー。
それじゃあ今日はこれまで。皆さんお疲れ様でした。ではでは。
「あのー」
ん?まだ何か?
「早く就職決まるといいですねー」
・・・・・・ありがと。