覚悟の不ススメ?


 なんだかんだで社会復帰果たしてから早1年が経過致しました。

 じじくさいとか言われるんだろうけど、それでも言わせてくれ。

 時が流れるのって早ぇぇぇえええええ!!!

 「なかなか決まらないのぉ」とぶつくさ言いつつ求人情報眺めてたのがついこないだのよーな気がしますもんね、冗談抜きで。こうやって人は青年から中年に、そして老人へと進化していくんでしょうねぇ。

 進化かよ。現実見ろ俺。

 まぁそれはさておきまして。そんな一年前の悪戦苦闘(?)をフラッシュバックするよーな事がありました。

 うちの会社でまた人採ることになりまして。理由は単純に人手不足。特にデザイン系制作が作業量爆発でにっちもさっちもいかなくなったそうで。まぁこれも言ってしまえばデスマーチなのかもしんないんですけど、さすがにこちとらデザインは素人、というか完全に素人以下ですからねぇ。口出しどころか製作過程の理解すらできましぇん(^^;;;;。完全に別世界。なにせ美的センスの勝負なら確実に幼稚園児に負ける自信がありますから。えへん。威張るな。

 まぁそんなワケで「人採る〜面接するぞ〜」の関係者の雄たけび、もしくは悲鳴を脇で聞いておった訳なんですが。

 ただですねぇ。その中で買い手市場的傾向とでも言うのでしょうか、そんな「雇う側の論理」てのが知らず知らずのうちに滲み出てたよーな気もしてきたんですよね。今考えてみると。

 んでは、ここまで前振りしておいた上で具体例に入りましょうか。私自身は一切面接には参加しておりませんが、うち会議室無いオフィスですんで、イヤでも面接内容は耳に飛び込んでくるもんでこうゆうことも可能な訳です。

 それって盗み聞きちゃんか俺。気にしない気にしません。

「こんにちわ〜」
「こんにちわ〜」
「こんにちわ〜」
「今日はよろしくお願いします」
「お願いします〜」
「お願いします〜」

 こんな感じでぞろぞろと希望者さん達がオフィスになだれ込んできます。もちろん向こうは真剣ですから、ばっちりとリクルートスーツに身を固め。学校の就職ガイダンスで習ったであろう「面接的御挨拶」も完璧にマスターしております。

 そんな方々に私服のTシャツやジーンズで対応するうちのデザイナーさんと室長さん。無論私の先輩上司さんでもある訳ですが。傍から見てる限りではこれが面接風景だとはとても思えん(笑)。

 しかし実際の面接は至極スタンダードでございます。雑談を交えた自己紹介から始まり質疑応答、業務内容の説明、持ち寄ってもらった成果物によるセレクション・・・という感じで、まぁこの辺はさすが手馴れてますな。淀みなく進行していきます。つーかよく考えたら私自身去年この面接受けてるんだし。普段接してるとこの人たちが海千山千の兵(つわもの)だっつーことすっかり忘れちまうわ。

 まぁそんなこたいいんだ。問題はここからで。

 大体面接は1時間〜1時間半程度のものなんですが。終了後希望者さんが挨拶して帰っていくのですが。

「ありがとうございました・・・」
「宜しくお願いします・・・」

 明らかにげっそりしてるんです。何なんだそれはと。その語尾の点々には何が隠されてるんだと。

 まぁ単純に疲れた、というのもあるんでしょうけど、それ以上に理想と現実の壁を見出してしまったんじゃないかな、と彼/彼女らの表情からは読み取れるんですよね。無論本人に聞いた訳ではないのですが、なんか当たってるよーな気がするんです。

 もっとも、これも面接した側から見ればこれは狙った上での行動なんですけど。面接の後半ラスト20分からですか。敢えてこのお仕事(今回で言うところのデザイナー職)のネガティブな話をボディブローのように叩き込んでいったんですな。

「まず予め覚悟しておいて欲しいのですが」
「入って2、3年はプライベートはあってないないようなものだと思ってください。」
「2徹3徹も当たり前の世界です。休日も日常的に潰れますから体力必須です」
「次から次へとクライアントの要望やダメ出しがやってきますので、それをかわせる 精神的なタフさも必要になります」
「正直な話、前に雇った人でも既に潰れた人もいます。ていうか潰れる率の方が高いです」
「ですのでうちとしては、これらを受け入れることができて、かつそれでもこの仕事がしたい、 という人を求めます。逆にこの仕事がしたい、という部分ではできる限り応えていきたいと思ってます」

 いやぁ今思い返してみても強烈だったなアレは。まぁそんだけ実際は泥臭いもんなんですよということを強調したかったということなんでしょうけど。

「ははははは・・・・」

 希望者さん笑い声がひきつってました。そりゃひくわな。

 まぁ突き詰めていくとデザイナーだからとかそうゆうレベルの話じゃないんだろうなと。わてらシステム側でもこんな話耳にタコができる位聞かされてるし。なので以降はいっそのこと職種云々抜きにまとめようかな、と思ってるんですけど。デザイナー職云々の議論は他所でやってくれ。

 いや、この価値観っていつまで通用してくれるのかな?というのはやっぱり考えてしまうんですよね。

 今回の面接でもそうだったんですけど、雇う側(入られる側)は雇われる側(入る側)にある種の「覚悟」を迫ってると思うんです。スキル習得して手に職つけるために、他のものを犠牲にする心積もりがあるのかということを示したかったと。だからこそ敢えて暗部を喋ることにより希望者さんに選択を突きつけたと。

 確かにこれはこれで「正直な対応」ではあると思う。実際に理想云々とはかけ離れた現実ってのがいやが上にでも存在してしまってる訳ですし。

 でもね。残酷なこと言っちゃいますけど。こうゆう考え方が雇う側にとって正しいか間違ってるかってのは実は完全に無関係なんですよ。

 実際には至極単純で。雇われる側に「覚悟すんのヤダ」と思われてしまったらハイそれま〜で〜よ〜、なんです。

 で、ちょっと考えてみてください。もし近い将来、皆が皆「覚悟すんのヤダ」って考えるようになってしまったらどーなっちゃいますかね?

 人入ってきませんよね?逆に出ていく一方ですよね?となると最後誰もいなくなった、ってことになりゃしませんですかね?この状況まで追い込まれても、なおも「こっち来るんだったら覚悟しとけよ」って叫ぶことできますかね?

 私かなり疑問視してるんですが。

 根拠として挙げられるのはふたつ。

 まず、単純に人の持つ目標、言い換えれば欲望が1つではなくなってる、ということが言えてまして。

 以前(特に高度成長期なんかがそうか)でしたら仕事で成功することイコール人生で成功すること、と言い切れたのかもしれませんが。残念ながら今もうそうじゃないんですよね。仕事成功させたい、プライベート仕事充実させたい、家族との時間十分に作りたい。

 ORじゃないんです。ANDなんです。

 で、ここは誤解して欲しくないんですけど欲張り=ラクをする、ではありませんから。その辺はみんな若くてもちゃんとしてます私と違って。をい。

 自分が許容できる、もしくは価値があると見込める範囲内であれば、その中では高ポテンシャルで仕事するし吸収する。最近はそんな傾向が強いような気がするんですよねぇ。

 カッチョよく表現するならQoL(Quolity of Life)の向上。泥臭く言うなら欲張り。全部トータルで考える。

 そうゆう人が確実に増えてると思うんですな。

 んでふたつめの根拠となるのが、これを求めるための大きな制約条件となる「時間」の考え方。

 ああなりたいこうなりたいあれしたいこれもしたい、と考える一方で時間ってのは過去だろーが未来だろーが一律24時間/365日ですから。

 となると「朝起きてから夜眠るまで仕事に打ち込んで」なんて悠長なこと言ってらんねーんですな。何寝言言ってんだそんな余裕無ぇよと。そうゆう意味ではこれまでになくシビアになってしまった、ゆとりが無くなってしまった、とも言えると思うんですが。

 欲張りになればなる程、時間の考え方がビシッとしているよーな気がするんですよね。特に周りの「できる人」程その印象強いです。

 そんな中、果たして「仕事にすべての時間を使え」なんてことが聞き入れられてくれるのか。どうなんでしょうかね。

 一昔前ならば両立なんてもっての他だったさまざまな欲求。加えて絶対に変わらない時間。仕事の習得のために他捨てるなんて発想、問題外の外になってしまうんじゃないですかね?私はそう思うんだけどな。

 

 まぁここで言っておくのはここまでにしておきましょうか。すべて捨ててひとつにのめりこむことが、絶対悪とは言い切れませんし。私自身がそーしてきたことでなんとか今でも糊口凌げてるというのもありますしね。一日二日で価値観変えられるほど人間柔軟にはできてませんから。ゆっくり考えてくれればそれでよろし。

 でもね、これだけは頭に留めておいて欲しいです。

 「この仕事がやりたいから」と考える人がいる内が花ですよ、と。


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