忌引早退ケーススタディ


 私事でありますが祖母が亡くなりまして。数日間実家に帰っておりました。

 でまぁ久しぶりに親戚一同大集合となった訳なんですが、親戚は親戚でそれぞれの生活があり仕事があると。従って集まって話題になったのが「いかにして会社休んできたか」。相当すったもんだあったようでして。それ聞いてるだけでも面白い、と言ってしまっては不謹慎なんですが随分と興味深かったです。

 んな訳でまずはケーススタディ。一気にご紹介。


 ケース1(Aさん):

 祖母が危篤状態にある、という話は既に飛び込んできていたので「臨終を見届けたい」と早めの帰宅を申し出てた訳なんですが。上からの返事がどうも芳しくない。明確にNoと言う訳ではないけど、かといってYesとも言わない。キレたAさんが「もう関係ありませんから。クビにして頂いても構いませんから。私帰りますんで」と宣言して帰り支度を始めたその時、訃報が入ってきました。

 その瞬間から上の態度が豹変したそうです。ぱぱっと香典と花輪代も持たせて「すぐに帰りなさい」と。今までのケンカは何だったんだ、と言わんばかりの変わりっぷりだったとか。「そんなことで仕事辞めんな、というばあちゃんの気配りだったのかねぇ」とはAさんの弁。

 ケース2(Bさん):

 BさんはX社に在籍しつつから常駐派遣の形でY社に勤めています。

 訃報を聞いて即座に早退し帰宅することになりました。興味深かったのは二社の対照的な反応。

 現場であるところのY社では「すぐに帰りなさい」と促されました。抱えていた仕事は残りの人でなんとかすると。帰り際にY社名義の香典も持たせてくれました。Y社自体、多くの派遣を抱えていることもあって手続きが確立されてるからというのもあるのでしょうが、それにしてもスムーズでびっくりしたと。

 その一方で元所属であるところのX社の対応の悪さにもびっくりしたそうです。忌引が制度としてあるにも関わらず「同居の場合のみ」と担当者レベルで曲解させて忌引を使わせない(結局有給を使用)。「なんで休むんだ」と言わんばかりに休み期間の短縮や今日の早退時刻などを嫌がらせのように突付いてくる。「呆れました」とBさんは呟いていました。

 ケース3(Cさん):

 訃報が入ってきてこれは大変帰らなければ、と支度を始めたところ上からストップの声が。「どうしても帰らなきゃダメ?」と。どうしても忙しいと。帰られると仕事が止まると。どうしても糞もあるかボケ人死んでるんだぞと無視しようとすると尚「通夜だけじゃダメ?」とか食い下がってくると。キレて「いつまで休むかは私が決める!ごちゃごちゃ抜かすな!」と罵声浴びせて、ひるんだ隙にそのままトンズラ。

 「まぁあとは野となれ山となれだなガハハハ」と豪快に笑い飛ばしてました。強ぇよCさん。

 ケース4(私):

 訃報聞いた後30分で〆の仕事だけ片付けて、現場の人には「祖母亡くなったんで帰ります」と報告だけして即バックレ。フルフレックス&裁量制(もどき)なので会社への手続きは一切無し。ある意味一番スムーズでした。

 つまらなくてすまん。そうじゃなくて。


 とまぁこんな感じで。いろいろあるもんですねぇー。

 その後もいろいろと話してたんですけど、「こうゆう時に会社の本性って出るよねー」てのは皆が頷くところでした。そしてもういっこ。

 「親の死に目にも会えないような会社なんてこっちから願い下げだよね」

 これ、今回一連の道中(?)の中でも一二を争う名言でした。

 そうなんですよねー。やっぱこれってこれまでも変わらなかったし、これからも変わらない。変わってはいけない。そんな真理だと思うんです。それは人としてダメだろ、という厳密なるライン。

 さて。ちょいと我が身を振り返ってみます。今回はたまたま運良く帰ることができた訳ですが、システム業界の場合「親の死に目には会えない」のが基本です。人命<納期の優先順位はここでも脈々と受け継がれています。

 親の葬式に出られないなんて当たり前。「俺は親父の葬式にも出なかったんだ」と誇示しつつ『だからお前も葬式位で休むな』と無言のプレッシャーをかける輩もいーーーーっぱい存在しますし。ひどいのになると「自分の子供の葬式に出られなかった」例を知っています。

 どうよこれ?頭おかしいでしょ?

 もちろん「今までそうだったんだから従え」なんて戯言に付き合う必要なんかさらさら無い訳で。変えていかなきゃいけないんですが。そうでなきゃ次の世代が入ってこねぇ。ただでさえ人材流出止まらねぇっつーのに。

 でもさ、ちょっと冷静に振り返ってみれば。別にこうゆうのって会社云々だからとかそーゆー問題じゃないんだよね。あくまで己の価値観が最優先されるべきであって。会社に言われてどうにかなるもんでもないじゃない。

 そりゃ確かに会社イコール世界のすべてな価値観、いわゆる団塊世代的な考え方ですけど。そこから行けば「葬式行かず仕事する」なんて考え方も出てくるのかもしれませんわ。だからこそ「葬式位で帰るな」なんて暴言も平気で吐ける訳で。

 でも今は明らかにそーじゃないもんな。会社がすべてじゃない。いざという時に会社が知らん振りして見捨てるなんてこともしょちゅうあると。社内とか社外とか関係なく、自分がどの人と結びついてるのか、てのを考えていく必要があるんでしょう。

 今回はたまたまきっかけが葬式だったんですけど、他の些細な出来事も含めると「どっちを選ぶ?」と問われるシーンって案外多いと思うんだよな。それこそ子供の誕生日から好きなテレビ番組まで全部ひっくるめて。

 その時にわざわざ会社の顔色伺ってるよーじゃダメだってことなんでしょーね。わざわざ会社云々が決めることじゃないと思うし。決めてもらいたくもないし。

 この事に気付けただけでも。行ってよかったのかなと。そんなことを考えた道中でした。

 ・・・・・・ごめん、最後なんかオチ入れようとしたけど。

 感傷的になっちゃいますな。今回パス。


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