勝者の椅子、争奪戦。


 いきなり前振りナシで書き始めますけど、この数週間ですか。約1年振りにゲーセン通いしておりました。それもほぼ毎日。

 お目当てはクイズマジックアカデミー2。通称QMA2。オンライン対戦によるクイズゲーム。全国の猛者とリアルタイムでクイズを楽しめ、色とりどりのキャラクター達が試合を盛り立てる。一部では「QMA2=萌えゲー」とかも言われたりする・・・。

 ・・・・・・もうちょっと細かく書こうと思ってたけど。説明終わっちゃったな。もういいや後は公式見てくれ。終わり。終わるな。

 いや、実際いいゲームでしたよ。根底こそ単純なクイズですけど、相手が無味乾燥なコンピュータから血の通った人間様に変わるだけでこれほど面白くなるのかと。特に人間4人で行われる決勝戦は思わず画面の前で息するの忘れますもん。かなり愉しませてもらいました。

 え?じゃあなんで所々文体が過去形になってるかって?

 うーん、ここから言葉濁すんですけど。

 やっぱりゲーセンにあるってのがね。一部の層には(?)人気ゲームですから平日休日朝昼夜いつ行っても満員なのはまだ許せるんですが。もうみんな連コ(*1)の連続だから待てど暮らせど順番なんか回ってこないんです。ていうか「順番待ち」という概念自体が無い。これの存在知ってから結構な数の稼働店回ったんですけど、どこの筐体も常連さんに完全占拠されてましたから。状況としてはどこも似たようなもんでしょう。こんな有様ではとても普段ゲーセン行かない層に「面白いからやってみてよ」とは薦められません。

 (*1)一人で何回も連続してやること。「コイン」と「コンテニュー」の掛詞、か?

 コナミ(これ作った会社)としては、「いろんな人に100円〜300円で楽しんで欲しい」と思ってるでしょうし、プレイの際にもそうゆう配慮されてはいるんですけどね。結果的にはこうゆう占拠連中が新しくやりたい人を押しのけてるってのが現状としてありますなぁ。なんか少ない筐体に群がる様を見てると戦時中の配給を思い出します・・・ってお前いくつだ。

 まぁそんなこんなで現時点で既に熱は冷めつつあり。もはや「はやくPS2で出ないかなぁ」とか考えてしまってるのですが。

 ただ、そんな中でもよーく観察していると、それはそれで面白いモンが見えたりすることもある訳で。

 それではここいらでマイクを現場にお渡ししましょうか。現地のゴンザレス・フジハラさーん。


 はいはーい。それではここからは「QMA2筐体争奪合戦」の実況生中継をお送り致します。解説は中級魔導士に上がった途端、予選1回戦すら通過できなくなったフジハラヒロキさんお願いします。

「よろしくお願いします、問題難しいんじゃこらー!」

 いきなり叫ばないでください。あと自分の頭が悪いのを問題文のせいにするのもやめてください。さて、そんなことをやっている間にも某月某日の名古屋市内某ゲーセン。QMA2の筐体は既に我がという猛者によって取り囲まれております。

 それではまずは今回の戦いの場でありますリングをご覧頂きましょう。

リング概要図

「相変わらずセンスの無い図でゴメンナサイ」

 そんな輩でもここまでできます、DynamicDraw3さん素晴らしいソフトをありがとうございます愛用してます。

 さて本題に戻りますと。赤い部分に関してはカード販売やランキング表示をするためのセンターモニターになりますので、ここではプレイをすることはできません。実質的には緑のプレイ用筐体とそれぞれに備え付けてあるイス。クイズで全国の猛者と対決する前にはまず店内の猛者からこのイスを勝ち取らなければならない訳です。

「実際には筐体の内側は壁になっておりますので対角線上の様子は伺うことができません。どのイスの人が早く席を立つのかの見極めが重要なポイントでしょう」

 さて改めてリングに目を向けてみましょう。見事なまでに野郎ばかり、ええと、ひぃふぅみぃ・・・17人から18人といったところでしょうか。

「とはいえ、一部のテーブルではもう勝者確定してるんですよ」

 えぇ?それはどうゆうことでしょう。

「(1)から(3)、あと(8)をご覧ください」

 それぞれのテーブルで、3人から4人で1筐体を取り囲む形になってますね。

「あれがいわゆる『廃人』と呼ばれる方々ですね。2時間でも4時間でも、金の許す限りあのグループの中でローテーションを回す訳です」

 なるほどぉこれは頭脳プレイだ!1プレイごとに交代するから店ルールの連コ禁止には抵触しない!ぱっと見仲間内でワイワイやってるように見えるから注意するにもできない!後ろの人間が答えをメモる(*2)ことで少ない投資で確実に過去問を回収できる!トイレにも行ける!これはさすがに合理的と言わざるを得ない!

 (*2)このゲームの常連と思わしき人は皆、筆記用具セットを持ち歩いてます。

「それでもトータルではハンパじゃない金飛んでいきますけどね。それに良く考えたら、あんな至近距離で野郎同士身寄せ合ってよくガマンできますよね。あいつらホモ」

 うわーーーそれは言っちゃだめーー。

「あーでも違うのか。彼等の選んでるキャラ、大抵はルキアアロエだし、寮もほとんどマロン寮」

 直リンすんなヴォケ!!

 ・・・こほん失礼しました。つい方言が。さて実況に戻りましょう。8テーブル中、4テーブルは既にグループによって占拠されていると。残りの4テーブル、(4)から(7)を残りの人たちで取り合わなければならない訳です。これは厳しいっ。

「あ、あの人。カメラさんちょっと寄ってください」

 おや・・・なにやら男性がなにやら怪しい動きを開始しましたね。年齢は20前後といったところでしょうか。メガネにそれを覆い隠す長い前髪、シャツにGパン。ナップサックに・・・・おーっと、チャックにはなにやら青い髪の美少女と思わしきイラストのキーホルダーがぶらさがっております。これは・・・紛れもなくアレですね。

「アレですね。ホルマリン漬けにして博物館に飾りたい程の」

 手元に持っているのは・・・やはりそうですね。エントリーカード。そして100円玉。戦闘準備を万端にした上で、席が空くのを虎視眈々と狙い続けております。

 背後に回り、じーっと画面を凝視。これは「早く終われ、席を立て」と呪いの念を送っているのでしょうか。右側の筐体に映って凝視。右側の筐体に映って・・・ぐるぐると、まるで衛星の如く移動を続けております。

「衛星つっても他の人には邪魔なだけですからねぇ。せいぜい現在故障中の気象衛星『ひまわり』がいいところでしょう」

 おっと今リングネームが決まりました。ひまわり君です。以降こう呼びます。そのひまわり君、相変わらずぐるりぐるりと周回を続けております。往年のモハメド・アリを彷彿とさせる、ある意味では軽快なステップ。

「まぁ効率的っちゃあ効率的なんですけど。これはこれで鬱陶しい事この上無いです。2chで真っ先に「氏ね」とか「逝け」とか書かれるのもこのタイプ。3周目してきた時にはいい加減蹴り飛ばそうかと」

 だからそうゆう発言は謹んで下さいって。あーでもやはりそうですね、その後方にはさらに数人の待ち人が控えているのですが、皆同様に訝しげな視線を彼に投げつけております。

「この辺が結局初心者さんに薦められない理由になっちゃうんですよね。上の廃人グループもそうだしひまわり君もそう。暗黙なり明示なりの交代ルールみたいなのがまるで確立されてませんから、結果失礼なヤツ、無礼なヤツ、自分勝手なヤツが勝つようになってると。そんな状況でゲーセン向かわせても、不愉快な思いさせて帰らせちゃうのがオチ」

 なるほどーそうゆう側面がある訳ですねー。とはいえ目の前のイスを確保しないことにはプレイもできない現実がある訳で。やはりひまわり君有利のまま次の局面を迎えることになるのでしょ・・・・

 ・・・・おーっとちょっと待ってください。動きがありました。(6)テーブルにて予選落ちが発生した模様です。注目しましょう。コンテニュー画面・・・。

 おーっと「No」を押したーーーー!!エントリーカードを取り出した!カバンを手にして・・・・立ちましたーーーー!席が空きましたーーーー!

 今回最大の山場を迎えました!20分待った末のようやくの空き場所!栄冠を手に入れるのはたったの1人!

 さぁどうなる!やはり優勢と思えるひまわり君・・・おやぁ?ひまわり君の姿が見えない!?これはどうゆうことか!?あれだけ他人の視線を気にせず慇懃無礼を貫き通してきた彼の努力は?

「あー廃人グループと何か喋ってますねぇ。グループには入らずとも面識はあるってことなんでしょうか」

 これは不覚っ!千載一遇のチャンスを逃してしまうのかぁ!?となると他の待ち人にチャンスが・・・動かない?周りの3人程の待ち人、ぴくりとも動きません!何故だ!?この時の為にそこに立って居たのではなかったか!?

「これは・・・100円出してまでプレイする気は無い、単なる見物人なのかもしれませんねぇ。実際それなりの割合でこうゆう人もいます。さてと、それじゃ私が」

 最大のヤマ場に水差さないでくださいっ!さて、その間にもぽつんと空いた筐体とイスは今か今かと次なるプレイヤーを待ち続けております!果たして間に合うのは誰か?ひまわり君か?それとも自らがチャレンジャーとなるべく見物人が名乗りを上げるのか?

『あれ?なにこれ?』

 おや?後ろからなにやら声が?

『じゃあちょっとやってみようか?』

 席に座ったのは・・・・・・カップルだーーーーーー!!突然の暴君登場!!誰にも邪魔できない最強の二人オーラを武器に、突如として現れ勝者のイスをかっさらっていったーーーー!

『あれ?これカードか何かいるの?』
『あぁあそこで買うんだよ。じゃあそこで座ってて』

「うーむ完璧な連携プレイですね。太刀打ちできません」

 あーーーたった今!ひまわり君が、廃人グループの波を抜け出て戻ってきたーーーー!ついさっきまで空いてた席にはカード待ちの彼女がぽつんと座っている!

 固まっています!ショックのあまり瞳孔開いたまま固まっています!状況が理解できていないようです!凝固しています!

 そして・・・その脇をカード買った彼氏がすり抜けていったーーー!!!

 一瞬彼氏が「誰?」といった感じでひまわり君に目配せしましたが・・・また何事もなかったかのように二人オーラの世界に舞い降りていったーーー!!

 勝負ありです!ひまわり君、一瞬のスキに痛恨の一打を食らってしまいました!!完膚無きまでに叩きのめされましたーーー!!!

 カーンカーンカンカンカンカン!!(ゴング)

 ・・・いやー熱い一戦でした。如何でしたか?

「無礼のオーラの差がそのまま結果となりましたね。それにしてもひまわり君にとっては厳しい。二回負けたと言っても過言ではないでしょう。名勝負だっただけに、彼に残ったダメージが気になります」

 そのひまわり君、虚ろな視線のまま、とぼとぼとリングから離れていきます。二度、三度と目頭に手を当てているように見えたのは気のせいでしょうか。

 ガンバレひまわり君!その涙も努力次第で報われる!プレイするための順番も彼女も、いつかは順番が回ってくる・・・・・と思う!その時まで!耐えろひまわり君!

 それでは最後に一言。

「せっかく空いた席見逃してまで何見てるんだ俺は、とアホらしくなりました」

 ミもフタも無い事言わないでください。それではお時間です。名古屋市内某ゲーセンよりお別れです。さようなら。


 という訳で。なんかえらい文量になっちまったってのもあるので控えめに小さい文字で補足入れておきましょうか。

 名も無き一個人を叩くのが主旨ではありませんので文中には脚色を加えております。まぁいつものことですけどね。その辺のところだけよろしく。

 じゃあその上で廃人プレイ等で席独占してる人を排除させるかどうか、とかなんですけど、やっぱり難しい面あると思うんですな。なんだかんだいってゲーセンも自転車稼業ですし。バカバカと金使ってくカモネギ、もとい上客に対しては注意してなんてのもやりにくいみたいですしね。実際問題として問答無用に金使ってくれる廃人や「ひまわり君」みたいな人がいないと施設投資分すら回収できない、というのも現実としてありますし。

 かといってそのままでいいか・・・となるとまた首をひねらざるを得なくなる。いつまでも固定客ばかりから吸い上げたところでいつかは底をつくのは他産業を見ても明らかな訳で。新規客を受け入れられる体制は作らなきゃいけない一方で、固定客も手放したくないというある意味矛盾した方針を維持させなきゃならないと・・・うーむややこしい。

 まぁただそれでも個人的に言わせてもらうなら、「待つには構わないけど待ったらちゃんとプレイできる」つー最低限の状態は維持してもらわないと人に薦めようにも薦められないよ、というところですかね。店側の努力(厭われない範囲内での監視も含めて)もそうですし、プレイする側のモラル的なところにも訴える必要はあるのかもしれませんし。なんにせよせっかく遊びたくて金持ってきてるんだから、最低限不愉快な思いはさせないでおくれ、ということなのかもしれませんな。

 という訳で以上蛇足でした。


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