オトナもコドモも疲れてる


 先月今月と終電等遅い時間帯の電車に乗る機会が多かったのですが。馬鹿営業の馬鹿スケジュールに付き合わされてね・・・まぁいいやこの話は。

 いやね、夜遅くの電車の風景とか眺めてますと、日本って大丈夫なのかなって思ってしまいます。大袈裟かもしれないけど。

 以前(それこそ3年前の偽装派遣会社辞める直前とか)だったら、23時台の電車なんて座れて当たり前だったんですけど。なんですか今のこの乗車率は。座れないこともしばしです。あと以前だったらさして珍しくもなかった泥酔して寝っ転がってるオヤジ、飲み会明けで妙にハイテンションな集団なんてのも滅多に見かけなくなりました。あるのは疲れ切った表情で眠りこけるサラリーマンやOLの群れ。もちろんみんな無表情。

 そりゃ単純に乗る人が増えたとかダイヤの絡みとか勤務体系の多様化とか、いろんな要因が絡むでしょうから単純な比較はできないとは思うんですが。ただそれでも車内に漂う、どんより加減というか悲壮感というか。そんな重苦しさは確実に強まってるような気がします。

 この列車乗ってる人ってのはやっぱ「帰りたいのに帰れない」人なのかなぁ。厳しくなる一方のノルマにプレッシャー。泥沼化するサービス残業の蔓延。溜まった鬱憤を吐き出す機会なんかどこにもなく、ただただ耐えることしか生き延びる術が無い。そんな人達なんだろうか・・・・。いかん。考え出したらこっちまで暗くなってきた。

 とはいえ、なにも疲弊してるのはサラリーマン連中だけという訳でもいかないようでして。とある日の23時。ぐったりした気分で帰りの電車に乗り込みました。この日も散々戯言に付き合わされて心身共にぐったりうんざり、とっとと座りたかったんですが座席は満員。

 ていうか正確には1席だけぽつんと空きがあったんですけどね。こりゃラッキー座ろう、と思った瞬間、人影が目の前をショートカット。速攻で空席に座られてしまったんですな。むむぅ。

 席取り合戦に勝利したのは、それこそどこぞの繁華街でも100人単位で捕獲できそうな今時風の高校生あんちゃん。髪は脱色耳にはピアス。携帯電話片手にくっちゃべっておりますな。くそぉ。君は若くて体力もあるんだろ?ここに死にかけのおっさんが突っ立ってるんだから、君は大人しく席譲りなさいっての。

 等と念波を送ったりもしつつも所詮は敗者、ぽつーんと突っ立ってるしか術が無く。(一方的な)遺恨もひきずったりしてしまいますから、どーしても先の彼をチラ見してしまうのですが。

 さっきまで話した携帯電話を切って「やれやれ」てな具合で腕組みしてうつらうつらとしております。あぁ彼は彼で疲れてるのかな、目的の駅に着くまで寝るのかなと。

 奇妙な行動はこっからでした。

 目をつぶって10秒か20秒経ったのでしょうか。ぱっと目を開けて。携帯取り出して。あーメールが飛んできたんだろうな。なんかぷちぷちと(←おっさん的表現)携帯いじくってます・・・あ、送信したみたい。もう一度携帯懐にしまって。もう一度腕組みして背もたれして。

 目をつぶって10秒か20秒経ったのでしょうか。ぱっと目を開けて。携帯取り出して。

 以下延々ループですよ。こんなところにあったか天然永久機関。もしくは新作のからくり人形か。見てて可笑しいやら気の毒やら。

 改めて凝視してみると(この時点で席取り競争負けたことは既にすっ飛んでる私)、周りに負けず劣らずの疲れた疲れたオーラをこれでもかといわんばかりに放出しています。目にはクマ。眉間にはシワ。よく見たら肌も荒れてますなぁ。あの10代特有のツヤや水気、弾力性といったものは彼には見受けられません。制服じゃなくスーツ着てたら、それこそどこぞの使いっ走りリーマンとして通用しそうな疲れっぷり。

 彼もくたびれ切ってるんでしょう。1分でも眠りたいと。でもメールが飛んでくると。返さない訳にはいかないと。眠い目こすってメールを返す。返したら返したでまた次のメールが飛んでくると・・・。

 どこぞの新聞かWebか、すいません記憶おぼろげなんですけど、若年層の平均睡眠時間が減少している主原因として、携帯メールのやりとりが云々なんてことが書いてあったんですが。この目の前で繰り広げられてるこの風景が、まんまこれに当てはまるのかなぁと。私みたいなおっさん(実際おっさんだしな)から見れば「んなもん携帯の電源切りゃええやん」で終わりなんでしょうけど。来たメールには即座に対応しなければならない、そんな彼等なりの事情ってのがあるんでしょうかねぇ?

 これも一種のコミュニケーション強迫なのかなぁ?勿論見た目だけの一方的な推測でしか無いのですが。そこまでして繋がらなくちゃいけないものなのかしらねぇ?なんてことを考えてたら、なんか悲しくなってきてしまいましたな。

 なんだかんだで携帯メールは便利ですからね。今更控えめにとかそうゆうこと言う気は毛頭ございません。ていうか身削ってサビ残続けてるオトナにそんなこと言われる筋合いなんか無いもんな。

 結局は急ぎ過ぎてる、追われてるってことなのかね?オトナもコドモも。そうゆう意味では病理はもっと根っこにあるよーな気がします・・・・・・。

 ・・・・・・・あ、高蔵寺着いた。降りなきゃ。結局座れなかったな。まぁいいか久々にネタになったし。

 終わりがけにもう一度彼の姿を目で追ってみました。

 あ、力尽きてるわ。首を垂れてぐったりきてる。左手にはしっかり携帯電話握り締めたまま。

 テレビならここで「死んでも携帯電話を話しませんでした」ってテロップ入るんだろうな。オトナなら「死んでも仕事を手放しませんでした」か。

 まぁその。なんだ。

 がんばれ。


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