他人に勧められない職業


 IT業界が閉塞している。らしい。

 競争が激化した関係で、案件単位での価格が低下。資材の面でも人材の面でも必要最小限のコストですら確保できない状態が続いている。

 企業は初級・中級層のSE/PGを上級層に育てることができない。育て方を忘れてしまった。しかし教育に金をかけるのは嫌だから、OJTのお題目の元、二束三文で客先常駐させて口減らしする。育つ前に挫折され、逃げられている。大手企業等ではそれでも既に社員に仕事が行き渡らず、ペイオフ・リストラもやむを得ない状況下に追い込まれている。

 その一方で上級層のSE/PGに課せられる業務負担は倍々ペースで増える一方。仕事以外にはプライベートも何もない過酷な環境に嫌気がさす。結果能力の高い者から順に次々に会社を去っていく。異業種への「頭脳流出」はもはや現実のものとなっている。

 これをもう何年も繰り返し続けている。場合によっては育てるさえも放棄して、社員を派遣業同然の「捨てゴマ」としてしまうベンダも後を絶たない。大手システムベンダが毎週毎週求人広告を出し続けるのは離職率が高いからである。

 大口ユーザは何年もの期間、何億もの金を使って『ゴミ』を作る位なら何もしないほうがマシだ、と既に真剣に考え始めている。その一方で、システム化に枯渇している中小や零細ユーザにとっては、いまだベンダの提示する提案には高すぎて手が出ない。ユーザの需要とベンダの供給が極めて歪んだ曲線を形成してしまっている。

 これらのプレッシャーは予算・納期の形でベンダ側に降りかかる。仕事があることを優先して安請け合いしてしまうため、利益も出ず、負担も大きい業務にますます現場の人間は忙殺されていく。悪循環は悪循環を呼び、利益効率も労働環境も企業成長も、すべてが「破滅」に向かって突き進んでいる。目隠ししたまま崖に向かって全力疾走を続けているに等しいのが現状だ。

 ・・・・・とまぁこんな感じですか。

 いや、言っておくけど、↑に挙げたこと、どこまで当たってるかなんて知ったこっちゃないよ。それぞれどこぞの新聞やら雑誌やらWebやらの聞きかじりなんだし。いちいち指摘してくんなよわかってっから。ひでぇ>俺。

 まぁ実際IT不況IT不況言われて久しい昨今、周りからはもう寂しい話しか聞くことができない、というのは悲しいかな事実だなぁ、と思っております。そうゆう意味では理論云々は置いといて、皮膚感覚としてはかなり当たってるんじゃないかと。

(私自身は業界全体がこうなっちゃったのは不況のせいなんかじゃなくて、自分で自分の首絞めてるだけだ、と思ってるんですけどね。まぁそれはそれ。今回はちょっと横においておく。)

 それよりも。今のこの状況下によって一番つらいことってのがありまして。

 他人にこの職業勧める気がまったく無くなってしまったんですね。すっげぇ残念なことなんだけど。

 もし知ってる人とかに、

 「ねぇねぇ、私プログラマかシステムエンジニア・・・だったっけ?要はあなたみたいな職業入れないかなぁとか思うんだけど、どう思う?」

 とか言われようもんならおそらく烈火の如く大反対することになると思います。「うちの娘は誰にもやらん!」と気張る寂しがり屋のオヤジが如く。どんなたとえだそれ。

 ただ寂しがり屋のオヤジと違うのは「こんな仕事、やらない方がお前のためだ」と思えてしまってる、という点なんですね。賃金低い、労働環境は悪い、精神壊すのも当たり前。それに対するメンタルケアも無きに等しく、あるのは「遅れるなサボるな休むな」の怒号だけ。派遣なんてもんに回されようもんなら頼るべき人も物も何もなく、役に立たなければ即サヨウナラ。雑用含め四六時中引っ掻き回されて自分の勉強できなかろうが「それはお前の努力が足りないからだ」の一言ですべて切り落とされる、血も涙も無い非情な世界。

 そんなところに誰が行かせるかボケ!こんな環境入って喜んでるのはバカか物好きかキチガイだけだ!所詮こんな仕事デジタルドカタだ!むしろリアルドカタの方は健康管理や危険管理には人一倍気を使うだけ人間が働く環境としてはまっとうだ!したがってこんな仕事ドカタ未満のクソじゃボケ!

 ドカタという表現を使っていることに関しては申し訳ない。それ位抑圧された環境の行き所がない、という感情の表現として敢えて使わせてもらっておりまする。勿論他意は無いので笑って流して頂けると幸い。

 で、ついでに言っておくと、ここ1年位かな。いたるところでこの「デジタルドカタ」という表現は耳にします。何もネットの世界だけではなく、喫煙室で、または飲み会の席上でも、唐突にぽつっとこの単語が出てくる。「どうせ俺達デジタルドカタだからな・・・」少し自嘲的に笑う。そして溜息。

 なんか今の全体的な空気を象徴しているみたいで、やるせなくなってきます。

 私と違ってみんなオトナですから、口にこそ出しませんが、誰もが思ってしまっていることなのかもしれません。必死に残業して休出してスキル磨いて、でもやってもやっても自分が何のためにそれをやってるのかわからない。役に立つのかどうかもわからない。そんな閉塞感を内に閉じ込めて『仕事に現実逃避』してる。

 そんな気がしています。

 だって。みんな目が死んでるもん。

 無論、私の目もね。

 私はまだこの世界でメシ食い続けることを諦めてはいないです。ことあるごとに「退職後のことは50/50、まだ何も決めてない」と言い続けてるのも、おそらくまだ未練があるからなんでしょう。

 でも少なくとも今のやり方(あくまで私の目から見た主観的なモノの見方だけど)を、わかりましたガマンしまーす、で許容黙認することはどうしてもできないんだな。だからこそ退職というアクションを起こしたのかな、と思ってますけど。

 他人にも勧められないような仕事に、自らが居座り続ける理由なんてありませんよ。プライドもやりがいも微塵も感じないこんな職業に。いや、こんな職場に、と言った方が正しいかな。

 少なくとも、まだ数年の間はこうゆう状況は続くと思っています。不況の方も相変わらず向上する気配がないし。ていうよりもこれが当たり前位に考えててちょうどいい位だと思いますし。

 でもだからといってこのままダラダラと我慢してたってなーんにもなんねーじゃん。今のやり方がどこをどう切ったってズタボロなのは目に見えてんだからさ。仕事のやり方も取り方も、作業環境もメンタルケアも。すべて根本から変わらなきゃ。

 このままじゃみーんな過労死か精神破壊か飛び降り自殺よ。

 こないだ、また常駐先のビルで飛び降り自殺がおきましてね。客先常駐しているSEだったそうです。何があったかまでは知る由がないけど。初めて自殺現場目撃したときの記憶がフラッシュバックしましたよ。

 これまでにいろんな人が体力的理由、精神的理由からPG/SEという肩書きを捨てていきました。ある者はあの世にまで行ってしまいました。

 これが現実よ。悪いけど。夢も希望もへったくれもあるもんか。

 ずーっとずーっとガマンして耐えて耐えて。

 最後の最後がこれかよ。

 まっぴらごめんだぞ。ふざけんな。

 もはや今の状況って、「自分はこうならないようにしよう」だけじゃ全然足らねぇんだよ。周りも環境も、全部まとめて変わらなきゃ。永久にそのまんまだぞ。

 いつまで自らをデジタルドカタ呼ばわりして、へらへらと諦め笑いしてるつもりなの?

 本当にそれでいいの?


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