XPで呼び戻せ?


 まずは書き出しにあたっておことわり。今回のテーマ、こちらでも一通り調べたりはしておりますが、それでも実例とは食い違うことがあるかもしれません。何せ普段縁のない話なもんですから(^^;;;、笑ってスルーして頂けますと幸い。

 さて、前から考えていることのひとつに、この世界って「現役バリバリの主婦SE/PG」ってのが少ないよなぁ、てのがありまして。

 これまでの派遣歴ひっくるめて思い返してみても、

 この条件クリアできる人って2人しか浮かばないですわ。これまでにおしごとさせてもらった人ひっくるめたら総母数は100人を越えるはずなのに。生存率2%っすよ。いいのかそんないい加減な計算で>俺。

 まぁこうなってしまう理由は2つ考えられます。

 ひとつめはこれまでにも散々ネタにしてはいますけど、既婚未婚どころか男性女性すら関係なく「ドロップアウト」する率がものすごく高い職種であるということ。辞める/逃げる/倒れる/死ぬ全部当たり前(実例あり)。半年で半分が辞めるアニメ業界(「銭」1巻より)を笑えない薄ら寒い現実。

 ましてやそこにデスマーチでも重なろうもんなら、どうしても女性の生存率なんて下がってしまいます。男性でさえ厳しいってのに。

 そんな修羅場を越え、結婚もでき子供も授かり、それでもPG/SEが続けられる気力と体力が備わった人でさえ、この職続けるにはキビシーい難関が待ち受けてます。これが第2の理由。

 というのも、今のPG/SEの働き方自体が「子供がいるから」「家事するから」なんて理由で中座したりすることを一切認めてませんからね。会社的にも。現場的にも。

 働くなら週80時間働け。80時間働けないなら去れ。そんな暗黙の了解が支配する世界。よってそんな中でも仕事続けようというのであれば、それこそ家庭崩壊覚悟で仕事に身を投じるしか無いと。

 そりゃあ主婦PG/SEがイリオモテヤマネコ並の生存率になるのも頷けるような気がする訳で。

 もちろん中には、例えば日本IBMのように週休3〜5日制とかを取り入れて働く主婦の保護&活用に努めてるようなところもあるんでしょうけど、そんなの例外中の例外中の例外、と言い切っていい位の超特殊事例でしょ。週4日しか働けない、残業もできないんなら迷惑だから辞めてくれ、てのが大方の現場での反応。

 ちなみに・・・これ書いていいのかな。まぁいいや。派遣時代におしごとさせて頂いた2名の主婦SEの方、てのがこの典型的な「家庭と人生捨ててる」タイプでした。朝8時から深夜12時まで仕事しっぱなしってのもアタリマエ。そんな中でもなんとかやりくりして、それこそ死ぬような思いして仕事しつつ家族も守って・・・という働き方だったんですけど。見てて正直痛々しかったです。容姿も言動も「お前いつか死ぬぞ」みたいな悲壮感に溢れてましたなぁ。今となっては確かめようがありませんが、生きていらっしゃるんでしょうか・・・。

 ごめん。感情入っちゃったね。

 まぁなにはともあれ現状がこんなんですから、「手に職がつく」的な先入観で志す人は多いにも関わらず、実際にはほぼすべての人間が現場の燃えさかる炎に焼き尽くされてると。仕事と家庭両立させて充実した生活を送れる可能性なんてのはほぼ0%と言わざるを得ないと。労働基準法?男女雇用機会均等法?なにそれ?食えるの?こんなの守るヤツの方がバカでしょ?とやさぐれるしか無い訳で。

 なんか書いてても吐き気するんですが。いっそのことこのまま放っておいてそのうち誰からもソッポ向かれて勝手に業界丸ごと死滅して頂く、てのもいい方法のかもしれませんが。

 それじゃあなんですので。ちょっとここで理想論ブチ上げてみてもいい?

「アジャイルを女性(特に家庭を持つ主婦を中心としたパートタイム層)のPG/SEとしての雇用促進策として使えないかな?」

 ってのがそれ。まぁここではわかりやすく「主婦」「パートタイム」って言葉を使わせてもらってますけど、概念的には主婦じゃなくてもいいし、この際女性じゃなくても可です。要はPG/SEとして働きたいけどフルタイムは無理、という人を要員として取り込むことはできないかな?というのを提案してみたいんですね。まぁ敢えて乱暴な言い方させて頂くと、アジャイルの名を借りたワークシェアリングみたいなもんかと。

 とりあえず仕事はある訳ですわ。でなきゃ誰が毎日残業休出徹夜、月月火水木金金なんてことするかっての。となればあとはその割り振り方と、非フルタイムの人たちがプロジェクトに「入りやすく」「出やすい」環境を作ってやればいいだけのことでしょ?

 と安易に考えつつ、実際のXPプラクティスで机上検証してみましたんですが。いや、これイケるんじゃねーのマジで?とか思いつつありますよ。ちょっと羅列してみましょうか?

(以下はパートと表現してはいますが、実際には過去に業務経験がある方(=開発要員として参画可能な方)ってのを前提条件としております。パートとフルタイムの違いは勤務時間の差だけ、という形でお読み下さい。)

 んじゃまずはこれ。

・週40時間労働。

 もうマンマですよね。そもそもパート層にしてみれば週40時間働きたくても働けないからこそパートとかに甘んじるしか無い訳で。「週24時間の中でも働けてお金ももらえて役割も果たせる」とかが確立されれば、無駄な残業とか休出の抑制にもなる、体力もちゃんと温存できる、余った時間を家事育児に費やせると。それこそ志望者殺到なんてことにもなりやしませんかね?てのは考え過ぎか。

 でも実際にやるとなればこのプラクティスは、パートワーカーにとっては最重要プラクティスとなるのは間違い無いでしょう。これが守れなくなった瞬間、またソッポ向かれて逃げられるのは目に見えてますから。

・短期リリース/計画ゲーム/(スタンドアップミーティング)

 で次に「プロジェクトへの入りやすさ」支援として使えそうなプラクティスがこれ。スタンドアップミーティングもプラクティスとして入れさせてもらいましょう。

 短期リリースや計画ゲームの中で、作り込むべきスコープが絞り込めているのであれば、最終的にスタンドアップミーティングによって「本日やる作業」ってのが確立できますよね(できなければそれは短期リリースや計画ゲームがどこかでうまくいってない証拠)。そうなればパートタイムの人でも、スタンドアップの中で「今日はこれに集中すればいいんだな」という働き方が可能になる。

 これって例えば週3日(月、水、金)だけの勤務の人や、子供を幼稚園から迎えにいくために3時までしか勤務できない人にとってはものすごく大きなメリットになると思うんですけどね。ヘタに明日どうしよう、来週どうしよう、と大きな視点で見てしまうから休めなくなるし帰れなくなる(もちろんその視点も必要といえば必要なんですけど)。

 逆に休み明け(子供が熱出したとか)でブランクあった場合でも、今日やるべきことに集中すればとりあえず仕事は進められる、というのもプロジェクトの入りやすさとして見逃すべきでは無いでしょう。

・継続的インテグレーション/共同所有

 逆にこちらは「プロジェクトからの出やすさ」支援という意味でピックアップ。継続的インテグレーションは特に重要かと思います。集中して製作→即結合→グリーンランプ→よっしゃあお疲れ!、と1日の中で作成のローテーションを完結できるってのは手離れの良さ=帰りやすさに直結するもんね。

 共同所有もそう。その人がいないとわからない、という状況が産み出されてしまうようでは、フルタイム働けない人にとってはマイナスでしか無い訳で。

・ペアプログラミング

 こちらは本来の品質維持の観点の他に、職務トレーニング的な効果に着目させてもらいましょうか。

 というのも、これはどのお仕事でも一緒なんでしょうけど。「あなたはパートだからこの仕事だけやっててね」と線引きをしちゃうと、結局はそこから能力は伸びないんですよね。線を越えることは能力向上の証なのにそれが罪となってしまう。それじゃあいつまで経ってもパートはパート、てことになってしまいますわな。

 あとペアプロによって嫌が上にでも「人と仕事する」ことによるモチベーションの維持ってのもおそらく大きいと思いますよ。そこに時間の長さ短さは関係なく、モノを上げたってことから充足感も得られるでしょうし、そこから責任感やプロジェクトに対する親近感なんてのも芽生えるんじゃないのかな?とか思ってしまいます。

 

 とまぁ直接的に結びつけられたプラクティスはこんなもんかな。残されたプラクティスは・・・テストファースト/オンサイト顧客/メタファ/シンプル設計/リファクタリング/コーディング規約。

 まぁこれらの多くは技術的要素も高いしね。

 ただこれらのいずれも「パートタイムだからダメ」なプラクティスではないような。むしろ推奨されてもしかるべき。プロジェクト成功させるためのプラクティスな訳だし。この辺も含めて数こなして実績積んでいくことで、パートであっても「私XPのプロです」と胸張って言えるようになるかもしれません・・・とあくまで楽観的な考え方をしておくことにしておきましょうか。

 という訳で一通り羅列してみましたが。実際のところどうなんでしょうかね?勝手に書くこちらとしては「案外これでいけるんじゃねーの?」的な願望が入ってたりしますけど。読む皆さんはそれぞれまた違った感想があるのかもしれません。

 とはいえ、単なる願望だけじゃすまない側面、てのもあるんですけどね。こっからはちょっとマジ。

 私自身は上に上げたような対策ってのは、もはや「できたらいいな」というよりも「やらなきゃいけない」ものになってると思ってます。

 だってさ。そもそも人材流出がハンパじゃなくなってるもん。これは現場にいる者としての実感として確信してますので。反論は許さん。

 優秀な人から順に潰される逃げられる。若い人も入ってこない、騙して入れたところで同じように逃げられる。結局いつまで経っても現場は体力勝負の火の車が延々と続いてると。

 やれ人件費削減だ中国だインドだ言ってる以前にこっちに目向けないと、自滅するぜこんなんじゃ。

 若い新しい人たちが入ってこれるようにするのと同じウェイトで、かつては優秀だったけど業界逃げていった人たちを呼び戻せる環境を作るってことは、急務中の急務だと思うよ。一分一秒でも早く「デジタルドカタ」なんて不名誉な称号は返上しなきゃいけないし、「システムで食ってくためには人生を捨てろ」的な価値観も徹底的に壊滅させなきゃいけない。そうでなきゃ本当に未来無いよ。それ位の危機感感じるもん。

 そんなことにすら気付かずに「人なんか使い潰してしまえばいい」なんて思ってる位だったら、それこそとっとと中国やインドに食い潰されてしまえ。そんな業界消えてもらった方が世の為人の為。

 システム業界全体が墓場になる前に手を打てっつーの!誰が望んで奴隷になんかなるかってんだボケ!

 という訳で、いつもでしたらここでとっとと手じまいするんですけど。せっかくなので今日はもうちょっとだけ踏み込んでみます。より現実的にってことで。

 これまでのアジャイルってのは、どちらかというと「開発者のためのもの」的な側面が強かったような気がします。無論アジャイルの根底としては「顧客のためになるものを作る」てのがある訳ですが、拡げ方、ちょっと小癪な表現をしてしまうと「布教」という意味ではあくまで開発者の持ち物であって、それを会社なり顧客なりに教え込んでいくというアプローチだったと思うんです。

 でも、そろそろ別方面からのアプローチも試してみていいのではないかい?と思ったりするんですな。

 たとえば「XPというやり方」というものを、開発関係とは無縁の世界、労働団体とか女性団体とか。そうゆう所に持ち出して、これこれこうゆう手法があるんですけど、皆さんから見てどー思いますか?と検証/フィードバックしてもらうと。

 そうしてたたき上げたものを改めて外から持ち込んできてもらうと。言ってしまえば外圧戦法なんですけど。こーゆうやり方できないかなぁとも考えるんですけどいかがでしょうかね?

 理由としては単純にシステム業界の自浄能力に期待できないから、てのが大きいんですけど。でもそれ以上に、アジャイルを基にして個人個人の働き方の指針ができたりとか、もっと大きく言ってしまえば法規設立とか、そうゆう方向に持っていければ面白いかなぁというのを感じるからなんですけどね。システム業界以外でアジャイルが使われるようになったら面白いとか思いません?

 考えてみればそもそもアジャイルゆーても中身はトヨタのカイゼンをパクったりしてる訳ですし。当のトヨタだってどこかしこからパクってるし。どこでどう転がるかわかりませんもんね。

 少なくともアジャイルを何も「ひとりじめ」する必要は無い訳で。いろんな方向に転がせないかなぁ、てのを考えたりしますな。

 という訳で。さしあたっては・・・・・どこに持ち込めばいいんでしょーね?

 言うだけ言ってここで知恵切れ。具体案募集中。ごめん。それがオチか>俺。


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