プロジェクトを止めるおしごと


 SE経由でPL、PMと管理職出世街道歩んだところで面白いことなんて何ひとつ無い。かといってPG一本槍だといつまでも経っても算数もロクにできない糞客糞上司に顎で使われるだけ。未来の行く末に今日も鬱々としている皆さんこんばんわ。どんな挨拶だ>俺。

 例の如く唐突なんですが、とある職種について考えてみます。

 基本的に我々(お客さんも含む)はプロジェクトを完遂する=モノを作り上げる、という思想のもとに日々仕事したり残業したり休出したり徹夜したり倒れてみたり発狂したりビルの屋上からパラシュート無しでスカイダイビング試みたりしてる訳ですが。実例あるからといって私情を混ぜるな>俺。

 逆の立場の人間を配置してみたらどーなるんだろ?と。

 プロジェクトを止める、モノを作らせない立場の人。

 そうですね、とりあえずPS(Project Stopper)とでも呼ぶことにしましょうか。PMともかぶってますし。SとM。SM。ビシッバシッ。鞭の音。やめれ。

 ・・・・・へ?そんなのありえない?プロジェクト進めるつもりで実は止めてる人なら数十万人規模で存在してるけど、職種として「プロジェクトを止める立場」なんて聞いたことが無い?

 ちっちっちっちっち。とりあえず舌打ちしながら左手人差し指を左右に振ってみました。伝わりますでしょうか。伝えんでええ、そんな小ネタ>俺。

 実在します。こうゆう職種の人。もちろん実際には違う名前で呼ばれてはいますが。過去に私、こうゆう人とおしごとしたことありますもん。んじゃちょっと説明しましょうか。

 企業がある程度の規模になると「情報システム部」(通称情シス)等といったようにIT部門が独立する形で組織化されることが多いかと思いますが。その際、情シス以外に所属する担当部署側の人。彼らがいわゆる「PS」と呼ばれる職種になります。情シスを除く社内全部門にPSは配置されておりますので、何かシステム化をしようとする際には必ず情シスとPSがやりとりする仕組みになっていると。

 で、こっからがPSならではの特徴なのですが、PSの最も重要なお仕事は「情シスが持ってくる糞な提案を全力で阻止すること」です。いかに巻き込まれないで済むか、水際で食い止められる(=所属部署を守れるか)が、そのままPSの評価へと直結していきます。

 なんか「だっせぇ」の一言で片付けてしまいそうですが、馬鹿にしちゃあいけない。当然といえば当然ですが「情シスだからダメ」とは建前上口が裂けても言えませんので、如何にこの提案によって部署が損害を被るか、効率が落ちるかといったことを論理的に説明して納得してもらわなきゃいけない。アタマ悪いとできません。なのでどこの部署もPSには「将来有望視されている若手エース」が張り付いてたりします。言い方は悪いですが「出世街道のための場踏み」として十分機能していると。人間は本質的に変化を嫌います(byデマルコ師匠)から、当該部署にとってもPSは育てやすい土壌になっている、というのもあるんでしょうね。

 ですので、普段「作ってナンボ」の我々がPSの方とお仕事をするってことはほとんどありません。優秀なPSであればこっちに降りかかってくるような案件は日の目を見ることなくPSによって抹殺されていますから。

 実際に我々がPSにお会いするのは。

 このどちらかの案件になると。大抵は後者ですが。ダメじゃん。

 でも。たとえばPSのおかげで、本当だったら5つ作るはずだった糞システムが2つに減ったとするならば。糞システム3つ分の「損失」はPSによって鎮圧することができたってことになりますよね?それ即ち3つ分のデスマーチを起こさせなかった、と考えることだってできるのでは・・・と。実際にやってる時には「ふーん」としか思ってなかったけど、今考えてみるとこれはけっこうすごいことなのかなぁ・・・と。そんなことを考える訳で。

 こっから個人的感情の話になってしまうかもしれないんですけど。今までに損失が出ようが死人が出ようが絶対に止まらないプロジェクトってのを幾度と目の当たりにしてますと、どうやって止めるのか?誰が止めるのか?てのをどうしても考えてしまうんですよね。バカ役人のバラまき公共事業笑ってる場合じゃねぇぞと。俺等も同じことやってんぞと。

 とはいえ私達って「作らない」という選択肢を、骨の髄まで否定しまくることでしか生き長らえない職種ですから。

 「できない」「いらない」「必要ない」。

 これらは客の前で絶対に言ってはいけないタブー中のタブーとして教育されている訳です極端な話。会社によっては客の前でこれ言うと後で理由の如何を問わず始末書書かされるなんて噂も聞いたことありますしね。もちろん本当かどうかなんて定かではないですよ。でも実在したとしても別に驚くようなことでもない。それだけ感覚麻痺してますから。

 モノさえ作れればお金がもらえる、という状況の前には客の満足度なんぞには構ってられないという現実があり、だからこそどんなに糞な思想のシステムでも喜んで作ろうとする会社がアホみたいに転がってると。本来需要にないものまで勝手に需要だと思い込んで売りつける押し付けると。

 自分達が「いらない」と言えない以上、今必要とされてるのは外から「いらない」と言ってくれる人なのかもしれないなと。王様は裸と指させる人。そんな淡い期待を、PMさんに求めてしまってるのかもしれないなぁ・・・・てのは自己勝手な甘えに過ぎないのでせうか?

 まぁいずれにせよ、これまでの「作るぜ売るぜ儲けるぜ」的サイクルがいい加減磨耗しきってることは今更言うまでもないでしょうし。それと同時に作らない、という価値観が持ち上げられるようになるんじゃないのかなぁ、なんてこともちょっと思ってたりするんですよね。完全に主観ですけど。

 なのでそのうち「俺はこの案件止めることに命かけるぜ!」なんて言える人が、これからのフロントエンドに踊り出ることができる人なのかなぁ、なんてことも思ったりします。まぁデスマーチ撲滅ってのも感覚的にはこれに近いものかもしれません。

 あ、そうだ最後にいっこ蛇足。自分で言うな。

 冒頭でも挙げたように「管理職に進むか技術極めるか」てのは避けて通れない宿命ネタかと思うんですけど。

 冗談抜きで第三の選択肢の如くPSのようなキャリアが創出できないかなぁとは考えたりしますよね。糞な案件を排除し、本当に必要なものだけを作らせる、「目利き」としてのPS。

 逆に今の世界って我々の側にも、もちろんお客の側にも目利きてのが存在からここまで歪んじゃってるよーな気がします。今のコンサルティングとかでは目利きが機能してるとは到底思えませんし。

 無論いわゆる抵抗勢力といっしょくたに扱われるリスクはあるでしょうけど(本当に必要な挑戦がとっとと潰される可能性は確実に上がりますし)それを差し引いてもやってみる価値はあるのかなぁと。現状が需要過多なのは明らかなんだし、とっととPSさんに間引きしてもらって、作るだけ作って後は逃げることしか考えてない人達にはとっととご退場頂きましょう・・・・・・なんてのはもはや妄想にしか過ぎないのかな?

 まぁいいや。あとはカシコな人任せた。よろしくー。

 書き逃げかよ。


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