無邪気な侵略者(インベーダー)
タイトル元ネタは人間椅子。わかる方だけ「まんまやんけ」とツッコんでください。
「ウェブ進化論〜本当の大変化はこれから始まる」[bk1][amazon]なる本を読了致しまして。
えーとね。誤解を恐れずに単刀直入に言えば。
死にたくなりました。
23%位マジ。無論死ぬ勇気なんかありませんから実行には及びませんが。ちょっとショック大きいですねぇ。ほら、格闘技の試合なんかで鮮明なKO食らうと、受けた当人はそのことまったく覚えてないとか言うじゃないですか。まさにそんな感じ。ひょっとしたら私は1回死んでしまって、三途の川の番人に「お前は来るなボケ」とケリ入れられて現世に突き戻されたのではなかろうかと。何言ってんだ俺。
Web2.0。ネット界隈で散々議論はされているものの、今までどーにも入り込めなかったというか。「なーに言ってんだこいつら」「所詮マーケ野郎の戯言だろ」程度にしか考えてなかったというか、その程度の理解力でしか無かったんですけど。これ読んでよーやく理解したというか。背後に忍び寄る強大な力の存在にようやく気付いたというか。志村ー!うしろうしろー!と昨日までの自分に叫んでやりたい気分。
じゃあそのテメェが「理解した」Web2.0って何よ?今ここで書いて説明してみろよ?と凄まれそうなところですが。まぁこれに関してはおとなしくこの本を読んでくれ、と言う他には無いですな。悪いけど黙って777円出して買ってくれぃ。損はさせないから。
*以降はすべて本書を読了を前提として書き進めさせて頂きます。悪しからず。
この本の最大の功績は、随所に出てくる「こちら側」と「あちら側」という表現を使うことによって、その距離感を嫌ちゅー程まで的確に示したことだ、と個人的には勝手に解釈しております。
重要なのは「こちら側」から見た「あちら側」、「あちら側」から見た「こちら側」。この2者間ではその距離に対する感覚が余りにも違い過ぎてるってことなんですよね。そうゆう意味では2.0ってのはあくまで「あちら側」から見た物の言い方であると。
あーそういえばあっちはあっちでなんかやってるんだよなー。じゃあ一応区別する意味で2.0でもつけておきましょか。
この程度の感覚だと。でもこれを「こちら側」から見た場合、そんな安易なモンじゃないんですよ。数字にしてみたら79523.0とか。距離でいったら水金地火水土天海冥さらに倍率ドンとか。「あちら側」に辿り着くためにはどんだけ血反吐を吐かなきゃならんのだと。それ位の絶望的な距離感がある。
この差を見せつけられて背筋凍りましたね。それだけ自分がいかに「こちら側」にどっぷり漬かってたかということも含めて。とことん思い知らされましたな。
でね。ちょっと想像してみて欲しいんです。こっからが私が恐怖に打ち震える理由でもあるんですが。
わてらはなんだかんだ言いつつ(「あちら側」さん曰く)1.0の世界でちまちまシステムを作って、その対価としてお金を貰って日々口に糊してますと。
そこに「あちらさん」(勝手に人格化、誰か萌え絵書いてくれ(こら))がこんなことを言ってきました。
「ねーねー。面白そうだからこんなの作ってみたのー。どうー?」
どっかーーーん。「こちら側」はあっちゅー間に殲滅ですわ。ペンペン草も残らん。既に実例ありますわな。Google MapにEarth、あとAnalytics。こんなに早くて細かくてしかも無料かよ!!こっちが作る意味ねーじゃん!!やってらんねーよ!!
こんなことが既に起こっている訳で。これも「距離感」の成せるワザですよね。砂場で隣で遊んでる子にスコップ貸してあげる程度の感覚のはずが、実は天から振ってくる巨大隕石になってしまっていると。んーそうですね。とりあえずは「あちら側」の無邪気な侵略者とでも言っておきましょうか。
で。本の中で梅田さんは、「こちら側」から「あちら側」への急激なシフトは起こらない、世代交代を絡めたゆったりとしたシフトになるだろう、と予測しておられるのですが。
ことシステム業界、特にSI関連に限って言えば実は審判の日が近付いてきてるのかなと。そんなことを考えたんですね。ようやっとここから本題。
言うまでもなく「あちら側」の成果物(製品)ってのは誰でも触ることができる訳で。わてら作る側のPG/SEはもちろん、お客さんから、商売関係無しにパソコン触ってる素人さんまで。
そしたらそのうちこんな要求が出てくるようになってもちーっともおかしくないわな。
「Googleみたいにできないの?」
言う側にしてみたら極めて自然な当たり前の要求なんですが。
はっきり言います。「こちら側」の作り手が「こちら側」に留まろうとする限りは絶対に実現できません。夢のまた夢。断言していい。昼メシ賭けてやる。3人限定。せこいぞ俺。結局「だったらGoogleのサービス使ってください」としか言えなくなってしまうんですよね。勝負にならないというか勝負すらさせてもらえない。結果的におまんま食い上げですわ。
で、これを言うとこんな反論が帰ってくるかもしれません。
「でもさ、それが当てはまるのってあくまでGoogleとかがモロに競合サービスを出してきた時だけでしょ?それにソリューションに合わせたカスタマイズとかはそれこそこちら側にしかできないことなんじゃないの?」
そーじゃないんだよなぁ。「肩を落としたコンピュータ業界の長老」(p.126)を読み返してごらんなさいって。それこそ使い勝手やレスポンスといった使い手の主観に依存する評価ってのは、サービスの範囲なんざ平気で飛び越しちゃいますから。
「はてなマップが1週間でできちゃうんでしょ?なのになぜウチのシステム作るのに3ヶ月も必要なのよ」
「こちら側」住民には論理破綻してるようにしか見えないこんなお客さんの不満も、「あちら側」があることで、主観的とはいえ筋が通ってしまうんですよね。「こちら側」の主義主張なんかお構いなしに、お客さんが「あちら側」の品質速度性能予算その他諸々を要求してくるようになると。これもある意味形を変えた無邪気な侵略ですな。
これってとてつも無く恐ろしいことなんじゃないの?確かに私自身思いっきり悲観主義者ですが、それでもGoogleとかが勢いを増せば増すだけ、可能性は高くなる一方にしか思えないんですよね。そもそも「Googleがコケる」可能性ってのを想像できますか?
こう言っちゃあ何ですけど、今までに私が散々書いてきたデスマーチだの人月換算だの見積もり誤差だのといった細々しい代物がすべてコップの中の嵐に見えてきてしまいました。どれだけ解決しようが所詮コップの中じゃん。「あちら側」が無邪気にモノ投げてきたらもう木っ端微塵でThe Endじゃん。なんかすべてアホらしくなっちゃいましたです。それ位の無力感に満ちてます現在。
あと話ズレちゃうんで文字小さくしますけど。もうこれで優秀、いや平均的な力もった人材が「こちら側」に入ってくるってことはもう今後絶対にあり得ないんだろうな、てことを残念ながら確信してしまいましたな。
優秀な人、見込みのある人程「あちら側」を選択するようになるし、「あちら側」に入れない位なら異業界に逃げるようになりますね。必ず。賢い人程「こちら側」がデスマまみれで人使い潰してるだけだってことを見切ってますから。逆を言えば把握してないからこそ「こちら側」に間違って来てしまう。もう今既にこうゆう状況に陥ってると思います。
ごめん。もう勝ち目無いや。ギブアップ。
まぁそんな具合で。これ書きながらも尻子玉抜かれた腑抜け野郎と化してる私なのでございますが。それでもこれからどうすればいいのか考え続けなきゃいけない訳で。メシも喰わなきゃいけないし。霞を養分にできる内臓器官も持ってないし。どーすればいいんでしょうかね?最後の力を振り絞って考えてみる。
まぁ二択だよな。
- 血反吐と血尿垂れ流しながら「あちら側」へ
- 一生「こちら側」でデジタルドカタ
極端過ぎだ俺。これでは行くも地獄戻るも地獄ではないか。
とはいえ私個人に関して言えばあたまもパープーですし、英語はおろか日本語すらロクに使えない、ましてや使命感も正義感も野心もこれっぽっちも持ち合わせてない輩ですから。「あちら側」に行けるとは到底思えん。
ただ救いはあって。本書で言うところの「Someone」ですわね。ゆるやかとゆるやかと血反吐を吐かずに済む範囲内でしかしちょっとずつでも「あちら側」に近付いていくしかないんだろうなと。そこを拠り所にするべきなんでしょうね。
幸いにも蜘蛛の糸はそっこら中にぶらさがってる。blog然りオープンソース然り。「あちら側」が投げてくれるAPIなんか糸どころか鋼鉄ケーブルだよな。ここらを足がかりにしていくことになるんでしょうね。
まぁこれからも考え続けて書き続けますよゆるゆると。ていうかそれしか能が無いんじゃ。ミもフタもねぇよ俺。