今更の営業不要論


 タイトルからして飛ばしてますが。こうゆう発言をしてしまうと現在の関係者を全員敵に回すどころか、将来に渡っても自分の首を締めかねないんですけど。

 それでも言っちゃいますか。うん、言った方がいいよね。もう思っちゃったんだもんね。それをひた隠すってことは自分にウソついてるのと同じだもんね。

 何を自問自答しとるか俺。

 という訳でいきなり言い切っちゃいます。本日の主題。

 営業イラネ。

 特に代理店型の営業イラネ。

 あーあ、刀抜いちゃったぁ。もー引き返せないぞー。仕事無くなって朽ち果てるのがオチだぞー、といったネガティブな雑音はこの際無視の方向で。単に現時点で既に仕事が無いからという説もある。それただの社内失業者>俺。

 一口に営業といってもいろんな形があると思います。大きいところだとそれこそ顧客毎に部署作ってピアツーピアやってるでしょうし、小さいところでは数名の営業専門員がいろーんなところの折衷を一手に引き受けたり。それこそ自分達では制作を行わず、媒体とすることを生業とするいわゆる代理店方式なんてところもございますと。それぞれの規模においてそれぞれのやりかたがあるでしょうから。ひとくくりにすんじゃねぇよ、というお声もあるかと思います。

 が。それでも乱暴に言い切らせて頂きますと。

 てめぇらブローカーなんざ邪魔な存在でしか無ぇんだよ。失せろ。

 と。なんか最近、もうこう言わざるを得ないような気がしてしょうがないんですよね、悪いですけど・・・・・・。

 え?さっきから黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって?誰のお陰で貴様等はその仕事にありつけるんだって?俺がいなきゃ貴様等なんぞ会話もできなきゃ社会生活すら危うい、目ぇ離せば2chで涼宮ハルヒにうつつ抜かしてるよーな屑オタクばかりだろーがって?

 そう!そこ!まさにそこ↑なんですよ川崎さん!(古い)

 客と制作を結びつけることでビジネスを産み出す。それこそが営業の本質であり醍醐味であると。ましてやプログラマの連中なんて揃いも揃ってビジネス常識もわきまえなきゃ敬語も使いこなせない連中ばかり。そんなヤツらを「武器」に変え「金」に変える。その為に俺ら営業が客の前に立たずに誰が立つってんだと!

 それはわかる。充分過ぎる程にわかるんですが、ね。客と作り手を結びつける。その過程において、大問題が発生するんですよ。

 まずはこちらの図からご覧くださいまし。

 

 左側の●が顧客側、右側の○が開発側(SE/PGその他諸々)の人員だとしましょう。顧客側開発側にはそれぞれちっちゃいピラミッドが存在すると。

 顧客側にはシステム作って欲しいという欲求がある。でも自分たちでは作れないから誰か作ってくれないかと探してる。一方の開発側では次に作るシステムがやってこないか、産まれたての雛の如く口開けてピーチクパーチク待っている。

 じゃあ営業(赤い)がキューピットさながらに「こっちに作れる人いますよ」「あっちに作るシステムありますよ」と結びつけてあげませう、となる。ここまでは教科書に出てくるような理想的展開です。

 でもね。こっから実際に「じゃあ作りましょうお願いします」となる(=契約)までの間に、自ら致命的な障壁ってやつを作り上げてしまうんです。

 次の図を見てみましょう。いわゆる契約前の「お見合い」段階。

 

 なんか違和感感じません?紫の線はそのまんま「壁」を意味します。

 この段階で、実担当者が客前(もしくは開発陣の前)にのこのこと出てくるってことは通常有り得ません。理由はふたつ。

 実はこの状況こそが「諸悪の根元」なのですが、その悪影響は後でたっぷりと説明しましょう。ともかく営業の苦労もあって無事受注にこぎつけました。お見合いの時には存在していた「壁」も取っ払って、がんがんコミュニケーション取っていきましょうー。

 

 こうなるとでも思ってます?ノンノンノン。

 実際はこうなります。目ン玉ひんむいてよーく眺めやがれ。

 

 図見て背筋につーっと冷たいものが走った方はかなり鋭いです。

 一見客と開発が結びつけられてるようには見えても、実際にはそうなっていない。客も営業を通さないと開発に伝達ができないし、開発者側からも以下同文。客も開発も営業に依存しないとコミュニケーションが成立しない状態になってしまう。これこそが営業(というか立場的にはブローカーと言った方がいいんでしょうな)の目論見でもあり、悲しい宿命でもある訳です。

 で。経験上一旦この状態に入ってしまいますと、残念ながらこれを修復するのは、残念ながら不可能と言い切ってしまっていいです。それくらい強固な結びつきになってしまいます。世間的にはやれPMだのファシリテーターだのアーキテクトだのが花盛りになってますが、そのほとんどが全くと言っていい程機能しないのも、8割方これが原因と言ってしまってもいいでしょう。感覚だけで暴言言ってますけど。一方で外れてるよーな気もしません。

 理由ですか?単純です。客、開発、営業。このそれぞれが無意識の内に、この流れ図に沿った形のコミュニケーションで完結させようとしてしまうからなんです。

 その方が聞きやすいから。話しやすいから。

 営業飛び越えて話進めることよりも、営業を介して話すことに安心感を持ってしまうんですよね。外国未経験のおっさんが通訳の傍1分1秒たりとも離れようとしないのと根は一緒。皆さんだってそーでしょ?どこぞの素性のわからん輩に話しかけるよりもいつもの知ってる人に話しかける方が気楽でしょ?仕事やってるのは人間ですから。理想はどうのこうの言ってもそうは変わるモノじゃありません。人と人が会って仕事する以上、避けきれない宿命と思っていいですから。

 これだけでもコミュニケーションの阻害要因になるには充分なんですけど。営業というポジションが故の行動法則が、より風通しを悪くし関係を悪化させる、なんてことが至る所で起こってます。さぁていよいよ本丸突っ込むぞ歯ァ食いしばれ。

 この状態に陥った営業は、遅かれ早かれ必ずこの行動を取るようになります。

 「目的を伝えず手段のみを伝える」。

 5W1Hで言うところの「Why」をすっとばすようになっちゃうんですね。

 善意的に解釈するなら、コミュニケーションの矛先が1ヶ所に集中する訳ですから、次から次へとやってくる会話をぽんぽん放り投げるようにしないとやってらんねぇ、というのがあるのでしょう。自分は自分でその他に仕事も抱えてる。いちいちそれだけに構ってらんねぇ、というのもあるのでしょう。

 でもね。実はこの状況を逆手にとって、悪用することもできるんです。

 双方からの要望だの質問だのといったものはイヤでも手元に蓄積されていきますから。もしそういったノウハウや意図といったものを、わざと客にも開発にもおっぴろげにせず、自分で抱え込むことにしたら?自ずとプロジェクトにおける「自分の重要度」って上がっていきますよね?

 これを使って自分を「何もしなくてもプロジェクトにとって重要な存在」に成り上がることが可能になるんです。

 一旦こうなってしまうともう手がつけられなくなります。典型例としてはこうゆうのがありますな。開発側でわからないことがありました。ラチがあかないから客に聞こうとしました。すると、営業には「なんで直接聞くんだ!俺を通せ!」と怒られる。客にも「その程度のことなら○○君に話したから。そっちに聞いて」と突っぱねられる。

 

 念のためにお断りしときますが実話です。それも一度や二度じゃありません。少なくとも営業が力持ってるよーな会社、下請け囲って仕事回してる中間業者の間では完全に日常茶飯事。

 傍目から見たら馬鹿としか思えないこんな図式が、完全にバランスを失ってしまったばかりに通用してしまうんですな。ここまで来てしまうともうやりたい放題確定です。納期遅れようが品質ガタガタだろうが、デスマーチになろうが死人がでようが、彼等にとっては「予算上げてもらう口実ができた」と喜ばれるだけですから。もちろん責任は開発に全丸投げした上で、おいしいところだけとことんかっさらって客の前からトンズラ〜。

 ・・・なんか書いたら書いただけバカバカしくなってくるんですが。実例目の当たりにしてるだけに。じゃあ書くなよとかツッコまれそうですが。

 もちろん世の中こんな悪徳営業(ていうか詐欺師)ばかりでないことをこっちだって望んでますよ。こうなる根本の原因が、初手でのクローズコミュニケーションにあることは明白なんだからそれを防げばいい。始めっから壁なんか取っ払っちゃって。

 

 客と開発がこんなんなるように仕込めばいいんです。

 でも現実は絶対にこうはなりませんから。断言してあげます。望む望まないに関わらず、営業は客と開発のディスコミュニケーションを成立させないといけない状況に追い込まれてしまうんですよね。ここでまた話の矛先が変わります。

 というのも。本当に客と開発が問題なくコミュニケーションできてしまうのって、実は営業サイドからすれば大問題なんです。言い換えれば先の図で描いた理想像は、営業にとっては地獄絵図に等しい。

 理由簡単。儲からないから。正確に言うと「成果としての売上」が出ないから。

 要因としてまず挙げられるのが、客/開発間が密接に連帯することによって情報が営業サイドに流れなくなることですか。結果としてお金の話も流れてこなくなる、本来お金取れたはずの修正案件とかがグズグズになってしまう恐れがありますと。

 でもまぁこんなことは些細なことでして。これ以上に見過ごすことができないのが、これはもうこの業界に限った話じゃなく日本の商習慣全体の話になるんでしょうけど、「売上」に対する絶対的な評価軸でしょうな。

 営業職にとっての評価ってのはまんま「売上高」ってのが見事なまでに直結していきます(不思議なことに「利益」じゃない)。1千万売ったヤツより5千万売ったヤツの方が偉い。1億売ったヤツはもっと偉い。そうゆう世界。わかりやすいといえばわかりやすいし、シビアといえばシビア。

 こんな世界に一個人として生きる以上、言い方は悪いですが、一度捕まえた客から如何にして売上ふんだくるか。どうしてもこれが「最優先事項」になってしまう。今期中に1千万上積みできるか。来期更に1千万取れないか。こうゆう視点で物事を評価するようになる。

 となるとワテらが普段口にしてるような「早く作る」「品質いいのを作る」ってことですら「余計なお世話」、下手したら「業務妨害」になってしまうんです。これってものすごく強烈なジレンマだよね。営業に売上出すなというのは、それこそ「死ね」と言ってるのと同意味ですから。だからこそ誰から見てもあからさまなプロジェクト妨害行為さえも、立場上やらざるを得なくなってしまう。そんな悲しい宿命を抱えている訳で・・・。

 さて、随分と長々と書いてしまったんですけど。散々問題点だけ書いておいて、「じゃあどうするか」的な領域には一歩も踏み込んでない訳ですが。

 ぶっちゃけ「踏み込めない」てのが正直なところです。もーどうにもならないんだと思います。悪いけど。他の人がどーなってるのかどーかは知らんが、少なくとも私は諦めました。もう私が生きてる間に改善(または改悪)されることはもう無いんだろうなぁとある種達観してます(笑)。

 唯一何か変化を起こす可能性があるとすれば、それは営業も開発も関係無い、業界自体の純粋な淘汰なのかな・・・と。ただいずれ淘汰されるにせよ、運が良ければ自分が定年になる頃までは持ちこたえるかもしんない(定年後のことはどうでもいい)という打算の元、巻き込まれない範囲内で生きていく手段として業界を利用する、というのはこの際アリなのかもしれません。ごめんね夢も希望も無い話で。実際に夢も希望も無いんだけど。

 という訳で。不完全燃焼の感は否めませんが敢えてこのまま読者さん投げっぱなしにして終了にしてしまいますわ。後は各々で考えて頂ければ幸いです。あくまで打開を目指して灯油ぶっかけるも良し。現実に身を任せて一酸化中毒で逝ってしまうも良し。判断は皆様次第。

 ・・・・・なぁんかパンドラの箱を開けちゃったよーな気がしてきたなぁ。見なかったことにしてそのままフタすりゃ良かったよ。

 もう遅いんだけどね。


<追記>

 という訳で。ここまでの文章は去年の11月に一旦書いたものの、解決策が出てこないもどかしさからお蔵入りにしたものであります。つまりはボツ稿。

 じゃあなんでこれを今更引っ張り出してきたか言いますと。ドイツW杯の報道の中で、これまでに無い位、代理店であるところの電通の影がちらついてるよなぁと(一例、他にもPVやスポンサー絡みでの強烈な締め付け等)。まぁこうゆう情報が出てくること自体がインターネットの恩恵でもある訳ですが。

 でこれら一連の記事追っかけてたら、種根っこは一緒なのかもしれないなぁという気がしてきまして。だったらとりあえずは出してみちゃうか・・・という判断で、若干の手直しをした上でアップさせて頂きました。正しい間違ってるは二の次つーことで(そんなこたぁ他のカシコな方に判断してもらえばいい)。

 あくまでこれは個人感ですが「どーせ真面目にモノ作ったところで儲からないに決まってるんだから、中間マージン搾取に徹してしまおうぜ」的な風潮は(個人でも企業でも)更に加速してる一方のような気がしています。これが果たして正しいのか間違ってるのか・・・私には判断できませんが。

 でもさ。なーんか後味の悪い「気持ち悪さ」だけはいつまで経っても残り続けてるんですよね。

 この「気持ち悪さ」を表現するために長々と書かせて頂いた、というのが正直なところなのかもしれません。


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