デスマーチパンチドランカー
特に目的も無く、ぼんやりとまどろむ日曜夕方。んーーーーー。やっぱ休日はこうでないとねー。ちょこっとだけ暇。この按配がちょうどいい。
プルルルルっ。プルルルルっ。
ん?携帯?
プルルルルっ。プルルルルっ。
知らん番号だなぁ・・・・・放っておくか?
プルルルルっ。プルルルルっ。
・・・・・・しつこいなぁ。諦めろよその辺で。
プルルルルっ。プルルルルっ。
だーーーーーー!うっせーーーーーーーー!わかったよ取ればいいんだろ取れば!もしもし?
「あのぉ、お休み中すいません、△△ですけど・・・・」
会社のひとからでした。そっか会社のひと・・・・え?会社の人?
ひょ、ひょっとして?トラブった?サービス止まった?
「いや、そーゆー訳じゃないんですけど」
違うんかい。ビビらせんでくれぃ。じゃあ一体何・・・・ふん・・・・ふん・・・・・。
(約20分具体的内容が続きますが省略)
「ありがとうございましたー」
んーとさ。ひとつだけ問い正しておきたいんだけど。それってわざわざ休日に答えなきゃいけないよーなもんかね?少なくとも俺にはそーは思えないんだけど。
「すいません、お客さんがどうしても『今』と言ってまして・・・」
・・・・・・・。ま、いいや。お疲れさまです。
「お疲れ様ですーすいませんー」
がちゃ。
あー胸糞悪い。俺の休日まどろみ気分返せ。
仕事のことなんか綺麗さっぱり忘れたい休日に、携帯で横槍入れてくる。これだけでも本来は万死に値するんだが、まぁそこは百歩譲ろう。それよりも約20分話してる間に電話の向こう側の情景が浮かんできて、またそれが腹立たしくて。
要は客先の上役から担当者から、関係者全員が休日返上して出勤してると。呼び出される形で自社の(私以外の)人間も休日出勤してると。従って今客先と自社とでは、日曜夕方という本来ならあり得ない時間帯に平日営業時間内とまったく変わらずに業務を進めてると。
これがシステム障害とかの非常事態なら話は別よ。私も(嫌だけど)会社行って対応するわさ。でもさ、話を聞く限りじゃそれはどー考えても「今日やる必要はまったくないけどせっかく休日出勤したんだからついでに片付けておけ」位の緊急度/優先度だろ?それをお構いなしに他人に振って当然やってもらって当然って。どうゆう了見よそれは?
頭おかしいだろてめーら!目を醒ませ目を!
気持ちはわかるがそろそろ落ち着け。どうどう>俺。
まぁこうゆう風景が当たり前、どこも似たようなもんだからこの位でキレてちゃ身が持たないと己を慰めてハイお終い、てのも気持ち的にはよくわかる。実際いちいち考えてちゃそれこそ精神の破滅一直線でしょうし。
でもね。ちょっと見過ごすことのできないモンが見え隠れしてるんだよなー。今回のケースに限らず。根拠の無い義務感(または大きなお世話)でちょっと書き散らかしてみます。
今回に限らず一般的に成立する「負の連鎖反応」として、
元請けの上司が休日出勤
↓ ↑
元請けの担当者達が休日出勤
↓ ↑
下請けの責任者が休日出勤
↓ ↑
下請けの担当者達が休日出勤というのがある訳ですが。
これってふたつの見方があるんですよ。まずパッと見て思いつくのが「上の圧力」思考。上の言うことには逆らえない、この1つの価値観のみで休日出勤連鎖ドミノが総倒れしていくという考え方ですな。
これをパワハラの類に当てはめて非難するのは簡単です。事実そうゆう側面もあるとは思うのです。が。
実はこれが全てではないのではと私は踏んでます。いやむしろこっちの方が深刻かもしれない。
優先度/緊急度の判断能力の欠如。
これ。つまり。
「部長のバカヤロウが、そんなくっだらだない仕事でいちいち呼び出すんじゃねぇよ」と渋々休出したのでは無く、「ヤバい!部長が急げと言ってる!行かなきゃ!」とパブロフの犬状態で家飛び出してるのではないかと。
緊急ではない/重要ではない仕事のプライオリティを下げるということは、業種職種を問わず必須な能力である訳で。これを判断できるからこそ、緊急な仕事をより早く、重要な仕事をより慎重に確実にこなすことができると。これが失われるとすれば、振ってきた仕事は「ALL A.S.A.P.」つーことになってしまいますわね。そんなこと素の人間に制御可能か?いや絶対に無理でしょ言うまでもなく。逆に優秀な人であればある程「ALL A.S.A.P.」は絶対に回避させるはず。
それが今では上から下から総じて判断能力を失っているということは?・・・「ALL A.S.A.P.」が「最高に仕事が廻る状態」と考えられている?・・・つまり各自の判断能力の無力化の結果として「総休日出勤」を形成してしまっている・・・・・?
もちろん推測の域を出ない訳ですが。なんか間違ってる気がしないんだよな感覚的に。というのも、「ALL A.S.A.P.」上等人間が生成されてしまう過程に関しては容易に説明できるんです。ことシステム業界に関しては。
「デスマーチ」という単語いっこで。
渦中のプロジェクトに放り込まれた人間がまず最初に叩き込まれることってのはまず間違いなく「今やれすぐやれ考えるな」なんです。何度でも口酸っぱくして言い続けますが、人間本来の判断能力がすべて消失するからこそのデスマーチですから。
本来なら一番最後まで捨ててはいけない能力を、一番最初に捨てることを強要される。そうしないとプロジェクトの「文化」にコミットできない。もしくは捨てることができないから尋常でないスピードやプレッシャーに潰されてうつ病なんてことになる。
そんな(無駄に)過酷な環境を乗り込んで生還した人達が、より「今やれすぐやれ考えるな」をより強力に推進するようになってしまっても、不思議でもなんでもないんですよね(実例)。
そうだなぁ。さながらデスマーチパンチドランカー(DPD)とでも称すればいいんでしょうかね。また勝手に単語作ってますが。
ただ、ここまでいくともう後戻りできなくなりますし、当の本人達はそんな状態にあることを自覚していない。結局常識とはかけ離れた狭い世界で、延々と焦土を彷徨い続けることになる・・・。
うーん・・・ヤバいよこれ。背筋凍る位ヤバい。末期ガン並にヤバい。ヤバいヤバい連呼しててウザいですがそれ位ヤバい(をい)。
いやだってさ。例えばXPの計画ゲームにせよ、SCRUMのプロダクトバックログにせよ、結局は一番要になる能力って「重要かそうでないか」「緊急かそうでないか」2*2の積み重ねじゃないですかと。それができるからこそ、初めてタスク単位での比較ができて順位付けができると。
優先順位をつける能力が育ってないところに順位付け強要したところで、確実に全項目の優先順位を「1位」にすることが目に見えてますから。アジャイルが提唱する「より重要な機能をより早く」の根本が破壊されることになる。DPDにとっては後回しにすること自体が絶対悪・・・。
どーすればいーんだこれ。絶望的な差だぞこれ。
で。
ここまで書いておいて悲観的な〆で何ですけど。残念ながら今の私にはDPDな人を治療する術が思いつきません。できるのはせいぜい予防に努めるのと、既になってしまった人からそっと離れる位ですか。エドワード・ヨードンさん言うところの「逃げろ」「近づくな」以上のものは提示できそうにありません。無力でごめんなさい。
ただ。この世の中にはDPD一歩手前なところで意識朦朧としてる人ってのはいっぱいいると思うんでその人達には言っておく。
その残業は必要か?
その休出は必要か?
その徹夜は本当に必要か?
1分でいい。
キーボード叩く手を止めて、よーく考えろ。今与えられる予防薬はこれだけです。すまん。